気に入った本やたまたま手に入った本に気ままな評をつけてます。
お奨めからそうでないものまでABCで評(Xはその評価法に当てはまらないもの)。
通説:著者の思う通説のこと(例)書名に入門とあるからといって初学者向けとは限らない。(通説)(落書きより)
- 法律の入門や法律の基礎
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- 団藤重光『法学の基礎』改訂版 有斐閣
- (評価X)出門だという評もありますが、これから始めるのでなくて勉強の合間に気軽に読めばいいと思います。
- 憲法
- 樋口陽一『憲法』改訂版 創文社
- (評価A)
コンパクトな中に、樋口氏の憲法学がぎゅっと詰まった一冊です。
同著者の『憲法1』『比較憲法』『国法学ー人権原論』を読んでも結局この本で述べ尽くされていると言う気もします。まあ、『比較憲法』は紙数の関係で少し豊富ですが。
- 行政法
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- 今村成和『行政法入門』6版補訂版 有斐閣双書
- (評価A)コンパクトな中に内容のぎっしり詰まった名著、著者が始めたらしい行政過程論を読み解くのにとても良い本です。ただ読み始めはつかみどころが無く感じることもあると思います、それでも1ヶ月あれば最後まで読めるので、色分けしながら読むとよいでしょう。私が読んだのは畠山教授が補訂された6版補訂版ですが7版は少し薄くなり8版はもとの厚さに戻ったようです。
- 藤田宙靖『行政法1総論』3版補訂版青林書院
- (評価A)法による行政モデルからの乖離をさぐるという著述スタイルが、この書を多少古くさく、そして読みずらそうに感じさせるかもしれません、しかし塩野宏『行政法』(評価A)よりはるかに読みやすい本です。しかし、問題として、私人の間の行政法という視点は3段階モデルからは浮かびにくい。それより問題は、著者のあるべき行政についての考えが悪い意味での法実証主義的というか浮かび上がってこないことです。私自身も法実証主義をよしとするものですが。
- 藤田宙靖『行政組織法』改訂版 良書普及会
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- (評価A)橋本行革に携わった経験がどのように生かされているのかは読み取りにくいですが、明快な理論構成の本です。行政組織とはなにかという学問的良心と授業や出版の都合が公務員法を付章という項目にしています。なお、これの改訂版は有斐閣から出版されています。
- 民法
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- 我妻栄・有泉亨『民法 1』『民法 2』『民法 3』新版 一粒社
- (評価A-)言わずと知れたダットサン民法。初学のときから役立ちますがほんとに気に入るようになったときは初学を脱したときになるでしょう。現在は勁草書房から補訂されたものが入手できます。
- 平野裕之『債権総論 2版補訂版』信山社
- (評価B+)判例・学説を整理するという性格が強い本です。
使いこなすには腕力が必要ですが、便利な本です。
債務不履行・不法行為の一元的構成を採用する著者の不法行為法について読みたくとも、
原案となる講義案がカリキュラム改定のあおりで頓挫したことはいかにも惜しい気がします。
代表的な基本書を読みマーカーで学説分類をするという、この著者の受験勉強法を読んだことがあるのですが、これが本書の構成にも影響を与えていると考えるのは考えすぎでしょうか。現在は平野裕之『プラクティス債権総論』信山社に改訂。
- 平野裕之『契約法 2版』信山社
- (評価B+)これも判例・学説を整理するという性格が強い本です。
有償無償契約の峻別など大陸法特にフランス法の影響を強く受けた解釈をとっていますが、
最近のEU契約法原則などにも目配りしている。腕力が必要だけれど良い本。
- 潮見良男『債権総論』信山社(法律学の森)
- (評価BX)著者の債権総論という対象への学問的悩みがかいま見える教科書。なお、2版以後は体系も少し変わり2倍の量になって体系書に純化してます。(法律学の樹海だという声も)潮見良男『債権総論1』『債権総論2』信山社(評価AX)
- 潮見良男『不法行為法』信山社(法律学の森)
- (評価A-)故意過失を違法性にくるむ体系はあまり賛成しないが、そのほかの解釈の点で有益。
- 四宮和夫『不法行為』青林書院
- (評価A)これぞ体系書という見本のような本。少数説と言われる民法上の不法行為のとらえ方ですが小野・団藤の刑法を思い浮かべながら読むと読みやすく、細かな分析が役立ちます。
- 四宮和夫『事務管理・不当利得』青林書院
- (評価B)不当利得は類型を細かく分けすぎたきらいがあり、ちょっとついて行くのに苦労します。
- 加藤雅信『事務管理・不当利得』三省堂
- (評価A)不当利得の箱庭理論が語られる美しい結晶のような本(残念ながらこのクリスタライズド民法は本巻で打ち止め)
- 商法
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- 木内宣彦『手形法小切手法』新版 勁草書房
- (評価A)感性的で論理的な手形小切手の本です。形式的資格など坂井氏の手形の本のわかりにくいところがこの本で誤解ではないかと論じられ、さらに、ドイツの手形小切手の本の翻訳をながめると木内博士の見解が通説であるのをみるとニヤリとしていまいます。新青出版から再版された物が入手可能。
- 前田庸『手形法小切手法入門』 有斐閣
- (評価A)ロングセラーです。通説(交付契約説+権利外観論)とは異なる創造説(二段階創造権利移転有因説)を採用しています。
- 民事訴訟法・倒産処理法
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- 兼子一・竹下守夫『民事訴訟法』 弘文堂
- (評価A)兼子理論をベースに、民事訴訟法を簡明compactに説く名著だと思います。
兼子理論は実体法の解釈が訴訟法の解釈に反影するというテーゼがあり、
見かけほど訴訟法一辺倒ではありません。
ただ、兼子理論の解明には、兼子一『新修民事訴訟法』酒井書店などを読むべきでしょう。
- 三ヶ月章『民事訴訟法』3版弘文堂
- (評価B-)読むとそこそこ面白いですが、民事訴訟法学の実体法からの独立という強烈な意識が空回りした理論になっているので、法条競合論と何所が違うの?などと泥沼にはまる虞が多分にあるのではないでしょうか。なお、三ヶ月章『民事訴訟法』有斐閣法律学全集(評価B+)のほうが熱烈な文章で刺激も得られます。
- 新堂幸司『新民事訴訟法』弘文堂
- (評価A)紛争解決のための民事訴訟として、根本から考え直した本。現在は3版補訂版が出版されています。
- 谷口安平『口述民事訴訟法』成文堂
- (評価A)かゆいところに手が届く本といたらこれでしょうか、冒頭に難しいところから喋っていきますとあるとおり、他の本にないことがさらり述べられています。実際に講義で語られたことであるため読んでも面白いですが。なお新民事訴訟法には対応していませんが、特に問題はありません。
- 太田勝造『裁判における証明論の基礎』改訂版 有斐閣
- (評価X)ベイズ統計の応用により証明規範などを解き明かそうという野心的な論文。
- 刑法
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- 団籐重光『刑法綱要』創文社
- (評価AX)いまさら評をつけたすこともないような、一種の古典。
- 平野龍一『刑法総論1』『刑法総論2』有斐閣
- (評価BX)機能的考察など、いまなお問題意識は有効ですが、この本では相手を黒く描いて黒いと非難するレトリックを見破る力も必要です。
- 鈴木茂嗣『刑法総論・犯罪論』成文堂
- (評価AX)かなり変わった体系を採用していますが、刑事訴訟法学者の見た刑法を超えた問題意識を汲み取るべきではないでしょうか。故意論過失論なども参考になります。
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- 刑事訴訟法
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- 田宮裕『刑事訴訟法』
- 未読
- 工業所有権など
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- 半田正夫『著作権法概説』一粒社
- まだ積ん読
- 国際法
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- 田畑茂二郎『国際法新講 上・下』東信堂
- (評価A)標準的な教科書というには、すこし古いかなと思いますが拾い読みしてもわかりやすい体系書です。
- 松井芳郎『国際法から世界をみる』 東信堂
- (評価A)続編の『テロ・戦争・自衛』(評価A)も併せて読んでほしい。
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