柱時計

いつどこで生まれたかは、定かではない。

顔の色つやには陰りがあるが、まだまだ現役である。

とはいえ、腕の力はやや衰え、時として支え切れなくなるが

それはそれ、30分や1時間のこと、笑い飛ばす心広きお客様に

励まされ元気を取り戻している。

自動巻き、電池、クオーツやソーラーとエネルギーは変わったが

時代物の私は、相変わらず人間の手を煩わす。

人間が、1回2回…と数えながらぜんまいを巻くのである。

ぜんまいが伸びきってしまうと、私は動けなくなる。

しかし、人間はそのときを知っていて、私が怠惰になる前にぜんまいを巻くのである。

伸びては巻く、伸びたら巻く。

このくりかえしである。

だから、手を煩わしているのではなく、手をかけられているのだ

とわたしは、思うことにした。

うんちくライター 佐伯さん(常連)