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運動量理論を用いた人力はばたき機の必要馬力推算

原田正志,河合一穂
Masashi HARADA,Kazuho KAWAI

Abstract

 固定翼部とはばたき翼部を持ちバネ反力を利用してはばたく人力飛行について扱った。運動量理論を用いて与えられた機体のはばたき周期および必要パワを求める基本推算式を導いた。この基本推算式を用いて例としてスパン 29.2 m,機体重量 95 kg,はばたき角 40 度の機体を飛ばす場合を計算した.その結果,はばたき翼の長さは 5 m、周期 1.2 秒ではばたく必要がありそのときの必要馬力が 315 W であることがわかった.

はじめに

 一般にはばたき飛行とは翼の付け根からはばたく飛行でありこれらに関してはこれまでに数多くの研究がなされてきた1-5).かなり大型のはばたき機もつくられるようになり6),人力で飛ばそうという動きも見え始めている.著者らは人力機固有の問題として人力の往復運動がある周期でしか効率が大きくならないことに着目した7).付け根からはばたく方式のはばたき機でははばたきの周期が十数秒にもなり,この周期に見合った人間の運動方法がない.しかしはばたき翼の長さを短くすればはばたきの周期は数秒のオーダーになり,屈伸運動,ボート漕ぎ運動などをはばたき運動に用いることができる.そこで著者らは固定翼部とはばたき翼部を持つ人力はばたき飛行を考えている。図1にその概念を示す.また図2にはばたき翼の機構を示す.はばたき翼はホーンを介してワイヤでスプリングに繋がっている.はばたき翼のはばたきの慣性力はこのスプリングで受け持つ.うち降ろすときのみ人力を用い,推進力を得るようにする.打ち上げはスプリングの力に頼る.中央の翼は揚力を発生する働きをし,飛行中機体を一定高度に保つために時事刻々取り付け迎え角を変化させる.

はばたき機の概念 図2はばたき翼の機構

基本推算式の導出

 外翼を打ち降ろす際には外翼は揚力と推力を同時に発生するものとする.この際,外翼にだけ一定の流入加速成分 v(m/s) が一様に加わっているものとする.打ち降ろす外翼をプロペラとみなしたとき,プロペラ面内において一定の速度増分がある時に効率が最高になることからの仮定である.図3参照.また打ち上げの際には外翼は形状抵抗のみを持つ実態の無い存在として扱う.このとき内翼は外翼を失った揚力を補うためにより大きな揚力係数で使用される.

打ち降ろしの状態 打ち上げの状態

 以下必要馬力推算の基本推算式を導出する.

まず抵抗について考える.
翼が作用を及ぼす領域Sは次式で与えられる.

ここでb;翼幅
単位時間当たり翼が作用を及ぼす空気の質量は次式で与えられる.

発生する揚力Lは次式で与えられる.

ここでw;翼面上の吹き降ろし速度
従って機体重量 mg (N) の揚力を発生するときの吹降ろし w (m/s) は次式で与えられる.

一方誘導抵抗Diは次式で与えられる.

従ってDiは次のようになる.

ここでqは動圧である.
以下のごとく記号を定義する.

bはスパン (m), b1は内翼のスパン,b2は外翼のスパンである.

 打ち降ろしのときの誘導抵抗をD'iとするとD'iは次式で与えられる.

打ち上げのときの誘導抵抗をDiとするとDiは次式で与えられる.

ただしここで翼効率を1であるとした.

 また有害抵抗は打ち上げ時と打ち降ろし時で同じ値をとり次のようになる.

次に推力について考える.
打ち降ろし時の前方からの流入速度は U+v (m/s) と一様であるとした.またはばたき角をφ (rad) とする.片翼の作動面積は 1/2φb22 であるから推力 T は運動量理論より次のようになる.

半径 r,幅 dr の部分の局所推力 dT は

つぎに (r,r+dr) の翼素に注目し,揚力 dL の値を求める.

(8),(9) より

(7),(10) より

式(11)より dL は r に依存しない事が分かる.

ここで次のように考える.

翼根から翼端までコード長が連続であり,ねじりが連続であり,打ち降ろし速度が連続であるから dL もまたヒンジで連続である.よって打ち降ろし時に dL は翼根から翼端まで一定である.
またその一定値は

である.(11),(12) より

とおくと

式(16)は後でΩを求める際に用いる

次に推力と抵抗の関係より v を求める

前方への力 X の時間平均は,打ち降ろしの時間を1,打ち上げの時間を t とすれば次のようになる.

釣合飛行ではX=0となるから T は次のようになる.

(6),(18)より

ここで次のように A を定義する. これで v が求められた. 式(21) と (16) を等値するとΩが求められる.

周期 f (s) は次式で与えられる. ここで A は式 (20),v は 式(22),χは式 (15) から求められる. 平均パワ (W) は打ち降ろし時のパワ P (W) から

ここで P は次式で与えられる.

Ωは式 (24) より求められる.

基礎推算式の計算例

 ここで実際に諸元を与えて,はばたき周期と必要パワが U や k によってどのように変わるかをみる.

スパン        29.2 m,
翼面積        48.06 m2
Cd0          0.024,
機体重量       95 kg,
はばたき角      40 deg,
打ち上げ/打ち下ろし 0.8

 図5に固定翼割合を変化させたときの必要パワの変化の様子を示し,図6に固定翼割合を変化させたときの最適なはばたきの周期の変化の様子を示す.図5は固定翼割合には最適値があることを示している.図5からは飛行速度 5 m/s において固定翼比が 0.75 の時に最小必要パワとして 306 W を採ることが分かる.この値は訓練されたアスリートならば数十分持ちこたえられる値である.しかも今の条件では地面効果を考慮にいれていない.しかし図6からはそのような小さな固定翼割合でははばたきの周期が 0.75 秒程度となり適当な往復運動がない.そこでやや効率が落ちるが固定翼割合を 0.7 まで下げて周期を 1.2 秒程度に持ってくるべきであろう.そのときの必要馬力は 315 W である.

必要馬力 はばたき周期


参考文献

1) A.Azuma 'The Biokinetics of Flying and Swimming',Springer-Verlag Tokyo (1992)

2) Bennet, A.G., Jr., 'A Preliminary Study of Ornithopter', Aerodynamics University Microfilms, Ann Arbor, Michigan, USA Order No. 70-20922, (1970)

3) DeLaurier, J.D. and Harris, J. M., 'Experimental Study of Oscillating-Wing Propulsion'., AIAA Paper 82-4107, May (1982)

4) Jones, R.T., 'Wing Flapping with Minimum Energy', NASA TM 81174, (1980)

5) Lippisch,A.M.,'Man Powered Flight in 1929,' Journal of the Royal Aeronautical Society, Vol.64, July (1960), pp.396

6) DeLaurier, J.D., 'The Development of an Efficient Ornithopter Wing'., Aeronaut J., (1993), vol.97pp,153-162

7) K. Kawai, 'Man as a Locomotive Engine', Proc. 1994 International Human-Powered Flight Symposium, pp.6-1 - 6-4, (1994)


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