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翼素理論を用いた人力はばたき機の必要馬力推算と飛行シミュレーション

原田正志,河合一穂
Masashi HARADA,Kazuho KAWAI

機体緒元と計算条件

以下翼素理論を用いて人力はばたき機の飛行をシミュレーションした結果を示す.機体諸元は基礎推算式からほぼ決定した.少し推算式と違う点があるが実際的な問題を考えて変更した.以下に計算で用いる詳細な機体諸元を示す.

スパン         29.2 m
はばたき翼長さ     5.0 m
中央翼翼弦長      1.8 m
はばたき翼テーパ比   0.5
翼面積         48.06 m2>
機体重量        95 kg
飛行速度        6.0 m/s
はばたき角       40 deg
打ち上げ/打ち下ろし  0.8
1サイクル       1 sec
翼の慣性(ヒンジ)   20.83 kg-m2
翼の慣性(重心)    6.02 kg-m2
はばたき翼重さ     3 kg(片翼)
ヒンジ弾性係数     1000 N-m/rad
打ち降ろしモーメント  250 N-m

条件

■地面効果は考えない
■翼の揚力係数は迎え角に比例する
■飛行機は一定速度で飛んでいるものとする.
■飛行中に揚力を一定に保つよう固定翼は取り付け角を変える.
■はばたき翼は打ち降ろしのときのみ人力を用いる.
■はばたき翼はばねの力により復元力が働いている
■はばたき翼はサインカーブを描いて運動する
■上記の運動を達成するために翼は適切な線形のねじれ角を持つ
■翼に働く付加質量は無視する.(付加質量は片翼につき約 3 kg である)
■局所揚力に比例して吹下ろしが存在する

打ち降ろしモーメントを 250 N-m としたのは 40 度を 1.2 秒で動く際のパワが 290 W であり基本推算式で導かれた値に近いためである.また 50 kg の体重の人が 1.2 秒で 0.7 m 立ち上がるのに相当し,屈伸運動で十分実現可能な値である.

計算方法

 トリム計算の概様を下左図に示す.またはばたき翼を剛体として扱った際の運動方程式における記号を下右図に示す.

計算方法 記号

全揚力は次式で与えられる.

計算結果

付け根取り付け角の変化 右図に付け根取り付け角の変化を示す

 時刻 0 において迎え角は 13 度になっている.今対称翼で考えているのでこのとき揚力係数は 1.3 となる.この値を実現することは普通の翼型では困難であるが,高揚力専用に設計された DAE11 や Liebeck 翼型ならば達成可能である.またここでは計算の都合上固定翼の取り付け角を可変としてあるが,実際には可変とはしない予定である.したがって姿勢角を一定にして飛行させた場合,翼打ち上げの前半では揚力が不足して沈下し,それに伴い迎え角が増大する.翼打ち上げの後半では揚力が余って上昇し,それに伴い迎え角が減少する.つまり,姿勢角一定とすれば固定翼の取り付け角を可変としなくとも自動的に迎え角は適切なものとなると考えられる.

吹き降ろしを考えた場合と考えない場合の推力 右図に吹き降ろしを考えた場合と考えない場合の推力の変化を示す.揚力発生に伴う吹き降ろしを考えた場合と考えなかった場合では考えたほうが吹き降ろしの影響で推力に最大約 20 (N) の減少がみられる.この機体の滑空比が 30 程度であるとすると重量/滑空比より抵抗は 3 kg = 30 (N) となる.最良滑空比では有害抵抗と誘導抵抗の比は 1:1 であるから誘導抵抗の値は 15 (N) となり計算結果の 20 (N) とほぼ一致する.  下左図にねじれの時間変化を示す.最大で 60 度ものねじりが加えられている.下右図に各翼素ごとの迎え角変化を示す

ねじれの時間変化 各翼素ごとの迎え角変化

はばたき翼をコサイン分割し付け根側から r=1, 2, 3, 4, 5 と番号をつけた.打ち上げ時に迎え角が部分的に負になるのは止むを得ないが打ち降ろし後半で先端の迎え角が負になっており望ましくない.

 下左図にスパン方向の推力変化を示す.打ち降ろし時には中央翼は 15 N/m の揚力負荷しか受けないのに対し,打ち上げ時には 50 N/m もの揚力負荷を受ける.また打ち降ろし時は外翼がより揚力を負担している様子が分かる.
 下右図にスパン方向の推力分布を示す.打ち上げの段階で先端が著しく負の推力を出している.

推力変化 推力分布

周期を変化させたときの推力変化  右図に周期を変化させたときの推力変化の様子を示す.打ち上げ時に推力の変化が見られる.この際,全体のエネルギー損失は無いが,エネルギーの出し入れには必ず損失があるからなるべく推力変化の少ない周期が望ましい.また機体が過剰に加減速する.その点から言っても周期は 1.2 秒が好ましい.この推力の変化ははばたき角を拘束するバネの固さに依存している.周期が早い場合にはバネを固く,周期が遅い場合にはバネを柔らかくすると打ち上げ時の推力の変化が少なくなる.

理想ねじり下と線形ねじり下げの時の推力の差  右図にプロペラで言うところの理想ねじり下げをはばたき翼に与えた場合と現状の線形ねじり下げを与えた場合での推力の差を示す.約1割の推力増加が見られる.推力だけからみると利点は目立たない.

 しかし下左図の理想ねじり下げの時の各翼素の迎え角を見ると,はばたき翼のねじりを理想ねじりとした場合,このように打ち降ろし後半で翼端が負の変え角をあまり取らなくなり,失速が無くなることがわかる.
 下右図に理想ねじり下げ翼を与えたときのスパン方向の推力分布を見てみる.線形ねじり下げの時と比較して大幅に改善されている.翼端が負の推力を出すことがほとんど無くなっている.

理想ねじり下げの時の各翼素の迎え角 理想ねじり下げ翼の推力分布

おわりに

 STEP2Aにおける運動量理論から得られた基本推算式による計算結果では 29.2 m のスパンを持ち,重量 95 kg の機体を飛ばすためには,飛行速度 5m/s,はばたき翼の長さは 4.38 m,はばたき周期は 1.2 秒が適当であり,その際の必要パワは 315 Wであった.このセクションSTEP2.5の翼素理論と運動方程式からはばたき機の飛行をシミュレートしたところ,必要パワーは 290 W となり,二つの計算方法は良い一致を見た.

よって次の結論を得る

 また翼素理論と運動方程式からはばたき機の飛行をシミュレートした結果からは様々な知見が得られた.

 ここでは空力的な考察を行ったが,次のような構造の問題を残している.


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