円通寺の庭



 円通寺                           借景式枯山水
 
江戸時代初期


 この円通寺は、もともとは修学院離宮・柴衣事件で有名な後水尾天皇の離宮跡だそうです。この地は、水の流れを取り入れられないため、大池泉庭を造ることができず、比叡山の麓に修学院離宮を造ったということです。現在残っているのは、離宮のごく一部です。
 この庭は、なんと言っても比叡山の借景が見事です。この比叡山の景色を得るために後水尾天皇は、各所を回って、ようやくこの地を探し当てたということです。京都の市街地から見る比叡山は、どこかひ弱なイメージがありますが、この庭から眺める比叡山は、正面からということがあるせいか、左右に連なる山々と共に、男性的な、力強い、雄大な姿を見せています。箱根の成川美術館から見る箱根連山、富士山の様です(少々大げさ?)。
 この見事な借景は、前面の枯山水、その奥に杉木立を通して望むことができます。この枯山水、杉木立、比叡山により、深遠なる奥行きを我々に与えてくれています。
 杉木立の左右からは、楓の優美なる樹影が流れ落ち、これらが相まって、この庭をみやびた、品のあるものとしているように思います。
 修学院離宮といい、ここといい、後水尾天皇のセンスの良さに脱帽です。
 建物の奥に座し、開け放たれた縁側よりこの景観を望むと、ここと比叡山の間には、大峡谷が横たわっているのではないかという錯覚にとらわれます。
 縁側ぎりぎりに座って眺めるのではなく、座敷の奥まったところに座って眺めるのをお勧めします。

 願わくは、高層ビルなどが建ってこの景観が損なわれることのないよう。なにしろここは、一業者によりモヒカン山という通称がつくほど無惨な姿となっている一乗山からは、目と鼻の先なのですから・・・。この素晴らしい景観がいつまで見られるのか?京都の行政を見ていると悲観的にならざるを得ません。

 ここでも、お薄がいただけますが、残念ながら、庭の見えない小間でということになります。しかしお寺でいただくお薄が、一部を除きおいしくないものばかりなのに対し(お菓子もおいしくないものが多いように思います)、こちらはお薄も御池煎餅みたいなお菓子も美味です。

追記:
東京のY・Iさんからメールを頂戴し、久方ぶりに円通寺を訪れました。円通寺前の開発が決定し既に竹林の伐採が行われ、あの見事な借景を見ることができるのもあと僅かとのこと。この為、少しでも多くの人々にこの景を残してもらう為、ご住職が写真撮影を許可したとのことです。写真ではぼけてしまっていますが、見事な比叡山の借景が眺めます。皆さんも一日も早く訪れてご覧になってください。
このような開発の許可に憤りを禁じ得ません。京都市は何をやっているのか、祇園花見小路を石畳とし、電線を地中化したのは評価していたものの、しょせん客寄せパンダに過ぎなかったことが分かりました。部分的にテーマパークを作ってどうすると言うのか、重要なのはその心では無いか。後水尾帝が愛したこの景観を破壊して、何が文化都市か。何が観光都市か。これらの景観を守る為の条例一つ作れないのか!

since 8.25,1996

アクセス

住所 京都市左京区岩倉幡枝町
交通 市バス 特5番 「妙満寺」 4番 66番 「深泥ヶ池(みどろがいけ)」
   京都バス  45番 48番 「円通寺前」こちらの方が近いです
                       (いずれも1996年9月現在)

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