旬の京都

200254日作成


春霞



暦の上では間もなく立夏
しかし昨晩から町を包んでいたのは
我が心には春雨でした
鳥の声と香しい匂い
清々しい風の彼方に見えるのは
霞み漂う若葉の山
緑と言うのはあまりにも華やかな
北山の輝きです


今日は生涯の友と国立京都近代美術館へ
久方ぶりに会う彼女と近況を尋ね合いました

平安神宮を抱く岡崎は
神苑
の燕子花を匂い立たせるかのような春雨に
再び抱かれていました

常設展室を背にした東山の山並み
この大窓よりの景色が私は好きです

正面には
力強くも優しき女性の横臥
南禅寺の堂宇を抱いています

左に目をやると
生気漲る緑のさざ
そのさざ波は黒谷の丘陵をも覆いつくし
金戒光明寺、真如堂の大伽藍や三重塔を水霧に包みます
その瑞々しさは
南より伸びる東山の連なりに至り
煙る比叡山に迎えられ空へと至る

さながら京を抱く翠巒が
我が足下にまで及んでいるかのような錯覚にとらわれます

雨が、緑が、大気が
かくも美しい姿を示している
先ほど心を捉えた小野竹喬や徳岡神泉、竹内栖鳳
それらの記憶も眼前の美に文字通り霞んでゆくように感じました

再び空の下に戻った私は
露に抱かれる歓びの中にいました


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