旬の京都

1998113

「十五夜」


喧噪に包まれた夕暮れの四条大橋。
ざわめくイルミネーション。
無軌道な人の群れ。

目を東山に向ける。
八坂の楼門を抱く東山は、その柔らかき身体を穏やかに横たえています。
そのくびれた腰の辺りが白くぼんやりとしている様にしばし見つめていると、
ゆっくりと、確実に巨大なる円が姿を現わしました。
「後の月」たる十三夜の後の望月、「中秋の名月」の次の望月でした。

東山が小柄に見ゆるほどに周囲を圧する気高き円は、まだ秋晴れの余韻を
残す青みがかった天空に、力強い光を放っていました。
存在感のあるそれは、熱を帯びる如くすこし黄味がかっていました。

自らの美しさと力を、有無を言わせず押し出したその姿は、
東山の柔らかさと調和を崩すようで、しかし引き立て合っていました。

静寂の時。
見事でした。

目を下に戻せば、変わらぬ雑踏。
変わらぬ音の波涛。
私はまぎれもなく現代に生き、息をしていました。

 


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