駄文20 SF 2001


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 SF 2001 に行った。

 海浜幕張駅から出ると、ダフ屋がいた。SF 大会にダフ屋! と一瞬パニックを起こしそうになったが、明らかに SF 大会参加者でない年齢風体の人たちがいっぱい歩いていたので、近くで別の催しが行われるらしいことがわかり一安心。ところがしばらく歩いていると、「SF の券ないか?! SF の券ないか?!」と叫んでいるダフ屋がいた。SF ファンならダフ屋に何かを売りつけていたとしても不思議ではないが、買うやつは絶対にいそうにない。

 十分程で会場に到着し、手続きを済ます。

 今回の大会で新たに導入されたものとして特筆すべきものは、メーリングリストと名刺だろう。

 大会期間限定のメーリングリスト (事務局からの一方通行なので、メールマガジンといった方がいいかもしれない) で、大会に関する各種情報が配信される。突然中止になった企画や逆に突然開催されることになった企画がすぐわかり非常に便利である。

 名刺も大会期間専用のものであり、名前の他に各人自分で決めた肩書き (僕の場合は「超・ハード・SF・ホラー・革命・家」とした) と情報 (ホームページアドレスなど) が書かれている。知らぬ同士が単に声をかけ合うのは難しくても、名刺交換を理由にすれば楽に話ができる。実に名案である。来年以降も是非やって欲しい。

 受け付けの近くで、水玉蛍之丞さんと警備員服を着た堺三保さんに出会った。とりあえず名刺交換をして、オープニングが行われるコンベンションホールに向かう。

 ホール前で林譲治さんに出会い、またもやとりあえず名刺交換をして、ホール内へ。

 今年はオープニングアニメがあるということで期待していたのだが、なんと実行委員長の武田康廣さんによると、「すみません。間に合いませんでした。アニメは必ず後日インターネットで公開します」とのこと。我が家はまだブロードバンド化していないのだが、どうしたものか。

 オープニングの後はライブ版「教養」。小松さん、高千穂遥さん、鹿野司さんによる座談会。自然科学から社会科学まで、話題は目まぐるしく過去・現在・未来を飛びまわる。SF ファンにとっては非常に贅沢な企画だろう。

 食事の後、「宇宙作家パネル」の部屋へ。出演者は笹本祐一さん、野尻抱介さん、庄司卓さん、小川一水さん、林譲治さん、大野万紀さんと小林。宇宙 SF 作家たちはみんなそれぞれ強い情熱を持って書いていることを再確認。それに較べて自分は単に「宇宙が好きっ!」というだけで書いているのだが、これでいいのか? まあ、書いている本人が面白ければたぶん読者も面白がってくれそうだからまあいいか、などと考える。でも、みんな「計算していない」と言いながら結構計算していることがわかって、ちょっと嬉しかった。

 続けて、「ファースト・コンタクト・シミュレーション」の部屋へ。時間が限られている今回は当然ながらフルメニューではなく、とある恒星から送られてきたメッセージの解読のみ。林さんと僕はオブザーバーとして、思い付いた適当なことを言うだけでいいらしい。未知の宇宙人を分析しているつもりで、実は設定を考えた主催者を分析してしまっているようなところがあって、かなり興味深かった。去年京フェスでやった設定では、僕自身も分析されていたのかもしれない。

 この後、「田中啓文の SF 的音楽会」の練習を見に行く。田中啓文さんが所属するバンドに田中哲弥さん、津原泰水さんが加わったメンバー。600人収容可能の大ホールでの晴れ舞台である。練習だから、まだ観客は10人ぐらいしかいないけれど、本番が始まったら立ち見になるのは確実なので、今のうちに席を確保して置こうとしていると、K川書店のI田さんが僕を探しているというのでロビーへ。

 I田さんはSF 大会初体験だそうで、かなり珍しそうに周囲をきょろきょろと見まわしていた。

 この後、かなり時間をかけてある悪巧みの計画を立てていたため、600人の聴衆の前での田中バンドの演奏を聞き逃してしまったのは返す返すも残念である。

「トンデモ本大賞」には凄く興味を引かれたが、自分が出演しなくてはならない「トランスジャンル作家パネル」の部屋へと向かう。出演者は大森望さん、瀬名秀明さん、高野史緒さん、津原泰水さんと小林。時間が来ても津原さんがいっこうに現れない。「まだ会場に来てないのでは?」 「さっき、田中さんと演奏してたから、絶対どこか近くにいてるはずです」 仕方がないので津原さん抜きで、企画開始。数十分後、颯爽と津原さん登場。一応、SF 作家と呼ばないでと言っている作家、SF 作家と呼んでくれと言っている作家、どっちでも好きにしてと言っている作家の対談と言う主旨だったが、それぞれが考えている戦略にはあまり差がなかったため、論争らしきものにはならなかった。僕の理解に間違いがあるといけないので、他の出演者の意見については割愛して、自分の意見のみを纏めておく。

(1) 未来の宇宙を舞台にしたような小説は原則的に SF である。

(2) ハード SF ファンは特殊な SF ファンである。

(3) SF 大会に来るような人は特殊な SF ファンである。

(4) SF ブームになれば、作家にも読者にもメリットがある。現にホラーブームはホラーの書き手にも読み手にもメリットがあった。

(5) 『パラサイト・イヴ』が出していたモダンホラー信号がハード SF ファンにとってハード SF 信号に紛らわしかったため、バッシングが始まったのではないか?

 瀬名さんの「『これは SF でない』と言わないようにしよう」という主張には激しく賛同する。しかし、「SF 決別宣言」はいかがなものか。企画の後、瀬名さんにはSFセミナー2001講演資料もいただく。好きではないもののためにこれほど心血を注げるとは思えないのだが。因みに、瀬名さんの次回作は宇宙を舞台にしたロボットものだそうだ。

 この後、大森望さん、さいとうよしこさん、大森Jr.君、我孫子武丸さん、牧野修さん、田中啓文さん、田中哲弥さん、北野勇作さんご夫妻、その他大勢の方々と合流し、我孫子さんの先導でレストランへ。ただし、極秘会合へのお誘いのメールが届いたため、北野さんご夫妻と僕は宴席を中座させていただき、ホテルのとある部屋へと向かう。

 その部屋には小松左京さんを中心にして、雲霞のごとき SF 関係者が集っていた。小松さんは朝の企画の時よりさらに饒舌になり、若手 (と言っても30〜40代中心) が次々とぶつけてくる質問に一人で対応されていた。まさに八面六臂の活躍である。小松さんの部屋では佐藤亜紀さんや藤崎慎吾さんなど今までお会いする機会がなかった方々と知り合いになれたという収穫もあった。

 さて、元のメンバーと再合流するために、H゛を使って連絡をとったのだが、北野さんがしきりに感心して、「えらいもんですな。携帯がなかったら、小松さんの部屋の場所もわからんかったし、他のみんなとはぐれたらもう絶対にあわれへんかったはずやのに、こうして簡単に巡り合えるわけですからね」と言う。なるほど。確かに、「携帯」はたった数年で日本人のライフスタイルを根本的に変化させてしまった道具なのだろう。と、21世紀最初の SF 大会らしい感慨を覚えた。

 会場内でしばらく話をした後、所謂「まんがクインテッド」のメンバー (我孫子さん、田中さん、田中さん、牧野さん、小林) および津原さんで、田中啓文さんのホテルの部屋に行って重要な会議を開くことになった。しかし、部屋に入って数分後、自分たちの笑い声のでかさに気付く。夜中にこのあほ声はいくらなんでも迷惑だろう。

「あっ。隣とその隣は僕の知り合いです。そやから、隣に移ったら、両隣は知り合いということになって、迷惑かからへんのと違いまっしゃろか?」という田中啓文さんの主張を受け入れ、となりの部屋に移動しようということで意見が纏まる。隣の部屋のチャイムを押すと、ドアが開き、全裸の男が現れた。田中さんの友人のUさんである。聞いてみると、チャイムがなった時、シャワーを浴びていたそうである。体を拭いたり、浴衣を着たりするのに時間をかけて、ひょっとして初対面かも知れない訪問客をドアの外で待たせるのは、とても失礼で恥ずかしいことだと思ったので、とにかく浴室を飛び出して、ドアを開けたとのこと。なかなかシャイな人である。Uさんは誰かに指摘されるまで、全裸のまま皆の会話に加わっていた。

 午前5時頃まで、ゲラゲラと重要な会議をした後、各々自分の部屋に帰る。

 ホテルで仮眠をとった後、「宇宙開発の部屋」を見学。出演は野田篤司さん、野尻抱介さん、松浦普也さん、江藤巌さん。冒頭でロケットガールのパイロットフィルムが上映される。とても凄いできだったので、一刻も早くシリーズを通して見てみたくなった。その後、さらに素晴らしい講演があったのたが、訳あって公開できない。

 北野夫妻と昼食をとった後、「にせ『ハード SF のネタ教えます」へ。少し遅れてしまったため、最初のネタを聞き漏らしてしまった。プランクマシーンという単語が聞こえた。なんでも『ΑΩ』に関係のある話だったらしい。その後、異色多世界ネタと、熱死ネタと、エントロピーネタと、2次元時間ネタが続き、最後に塵理論ネタになる。あと3か月早く聞いていたら、「予決定されている明日」に使えたのに、残念なことである。

 それから、サイン会に向かう。僕と同じ時間にサインするメンバーは所謂「まんがクインテッド」と倉阪鬼一郎さんと高野史緒さんと森奈津子さんである。田中啓文さんが来ていなかったので、電話で呼んでみると、「えっ? 僕もサイン会の会場に来ているのですが、他の人の姿は見えませんよ」とパラレルワールドに迷い込んだ人みたいなことを言っていたが、単に場所を間違っているだけなのはこちとらお見通しである。案の定、あさっての方角から登場する。持ち時間は30分だったのだが、20分ぐらいで誰も僕にサインを貰いに来なくなってしまう。はて、他の人はどんなあんばいか? と、横を見ると、田中哲弥さんの前にも誰もいない。ははあ。こんなもんなんやな、とさらに隣を見ると、なんと田中啓文さんの前に延々と行列が! ひょっとすると、ブレーク間近なのか?! ええなぁ。

 サインの後は我孫子さんの先導で、綾辻行人さんや、南智子さんや、藤原ヨウコウさんや、森奈津子さんや、皆川ゆかさんや、北野夫妻や、その他大勢の方々と喫茶店へ。そこで今後の SF 会の進むべき方向について様々な討論があり、ゲラゲラと笑う。

 やがて、関西勢はそろそろ帰ろうかということになり、我孫子さんの先導で所謂「まんがクインテッド」は海浜幕張駅へ。帰りの新幹線を予約しているもの、買っていないものなどばらばらだったが、我孫子さんが一括して、みどりの窓口で交渉した結果、同じ新幹線の隣り合った席にして貰えた。その後、ホームに入ってきた最初の電車に飛び込んだが、これがまずかった。ゲラゲラとアホな話をしているうちに、誰かが路線の様子がおかしいことに気が付いた。「今どこですか?」 「次は新松戸やてアナウンスしてましたよ」 京葉線にそんな駅はない。いつの間にか、東京から遠ざかっているのである。一同慌てて、新松戸で飛び降りる。ええ年下おっさんが何人もいてなぜ気が付かない? とにかく、このままでは新幹線に間に合わないので、我孫子さんが一括してみどりの窓口で交渉して時間変更する。こんどはちゃんと東京に行きそうな電車に乗り、またもや車内で冗談を言い合ってゲラゲラ笑う。そんなことをしとるから、電車間違うんや。学習しなあかん。

 東京駅に到着し、我孫子さんの先導で漸く新幹線に間に合う。安孫子さん、田中さん、田中さんは途中で寝てしまったので、京都までずっと牧野さんと真面目な議論をする。話題は鶴亀算の話とか、映画版『玩具修理者』のストーリー案とか。「絶対に R 指定にして貰わなあきませんよ」 「なんでですか?」 「R 指定にしたら、ヒットするんです。それから、今はやりのフル CG にするんです」 「『ファイナルファンタジー』みたいな?」 「『隣の山田君』みたいな」 「なんか、ほんわかムードになりませんか?」 「キャラクターもそれに合わせて変えたらええんです。題名の頭にも『ほーほけきょ』と付けておかなあきません。主人公は男の子で、親に黙って玩具修理者のガンちゃんを家に入れるわけです」 「そのことがお母さんに知られてしもうて、怒られるんですな」 「そうそう。それでガンちゃんは責任を感じて自分から家出してしまうんです」 「雨降ってるのに、傘もささんとね」 「ところが、泣いている小さい子のおもちゃを一生懸命に空き地で直しているガンちゃんの姿をお母さんが見てしまうわけです」 「『ガンちゃんて、なかなかいいところがあるじゃない。うちにいてもいいわよ』ってなるわけですね」 「そうそう」 京都についたので、我孫子さんの先導で、新幹線から降りた。

 ほんわかやのに、なんで R 指定なんやろ? 


Copyright © KOBAYASI Yasumi 2001


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