駄文25 ゆ〜こん


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 ゆ〜こんに行った。

 まずは京都駅から新幹線で岡山行き、そこからスーパーやくもに乗り換えて玉造温泉へと向かう。

 玉造温泉駅のホームで弁当を物色していると、背後から怪しい人影が近づいてきた。殺気を感じて振りかえると、果たして喜多哲士さんであった。軽く挨拶をして、弁当代を払っていると、またしても殺気を感じる。今度は菊池誠さんであった。なんと、僕と菊池さん一家と喜多さん夫妻は同じ車両に乗るとのことである。怪しい乗客はとにかく同じ車両に集めておこうという JR の配慮であろうか?

 席に座って見ると、さらに驚いたことに3組みの座席はすべて車両の右側であり、一つ置きに前後に並んでいるのである。間に別の乗客を挟んでいるのは、近付き過ぎて臨界条件を満たさないようにという JR の配慮であろうか?

 しばらくすると、煙草を吸いに隣の喫煙者へに移動していた喜多さんから、「喫煙者に、早川書房のA部さんとS澤さんがいた」と報告があった。

 こうなってくると、なんだか周りの乗客がみんな怪しく思えてくる。まさか全員同じところを目指しているのではないだろうな、と考えながら弁当を食べる。

 2時間半程で、玉造温泉に到着する。周りの殆どの乗客はここで降りた。そのまま流れに身を任せ、駅から出て送迎バスに乗り込む。

 会場の「玉泉」 (今大会は「玉泉」と「松の湯」という2会場に分かれている) に着くと予想通り、ロビーは SF ファンでごった返している。一先ず、自分に割り当てられた部屋へと向かう。

 部屋の中では、すでに昨日から泊まっている田中啓文さんがぼうっとしていた。しばらく、ぐちゃっとした話をした後、開会式会場へ。

 オープニングアニメはウルトラQのタイトルのパロディー。10秒ぐらいで終わったので、爆笑の渦に。

 開会式の最後に、それぞれの旅館の代表者の挨拶があったが、「松の湯」の女将さんのスピーチは SF ファンの心を捉えたようだった。この女、只者ではない。(と、思っていたら、暗黒星雲賞を受賞したそうである)

開会式の後は星雲賞の発表。日本長編賞は野尻抱介さんの『ふわふわの泉』、短編賞は田中啓文さんの「銀河帝国の弘法も筆の誤り」。おめでとうございます。関西 SF に活気があることはとても嬉しい。

 星雲賞には今年から自由部門賞が設けられ、受賞したのは「HII-A ロケット」。開発者の代表として、野田篤司さんがスピーチをされた。今回の受賞について、NASDA 内部からいろいろと疑問があがったらしいが、野田さんはちゃんとすべての誤解を解いたとのことだった。

疑問「SF 大会というのはいったい何なのか? 怪しい団体なのではないか?」

回答「もちろん、怪しい団体です」

疑問「星雲賞とは何か? 温泉旅館で授賞式が行われるようだが、宴会の余興ではないのか?」

回答「もちろん、宴会の余興です」

 この男只者ではない。(と、思っていたら、暗黒星雲賞を受賞したそうである)

 会場前面にはスクリーンが設置してあり、そこに授賞式の様子や関連映像が投影されていた。プロジェクターの位置が低いため、壇上に登った受賞者の腹に当の受賞者の顔が映ったりして、なかなか SF ぽくって格好がよかった。だが、スクリーンに投影された映像を写真撮影するのに、フラッシュを焚いている人たちがいたのは、いかがなものか。マナーとかいう意味ではなく、SF 者なら科学的に考えて欲しいのだ。

 喜多さん夫妻と共に、ロビーに戻ると、北野勇作さんを発見。その後、田中さん、菅さんらと合流し、ぐちゃっとした話をする。食事まで少し時間があるとのことなので、菅さんのお部屋を訪問し、しばらく、ぐちゃっとした話をする。

 夕食は大広間で。結構きっちりとした温泉旅館風のものだった。

 食後ぶらぶらしていると、菊池さんたちがテルミンを演奏しているのを発見。ちょっとだけ触らせてもらう。というか、触ってない。触らずに演奏する楽器なのだ。田中啓文さんはリコーダーを取り出し、テルミンとセッションを始めた。楽器ができるっていいなあと思う。

 ロビーでぐちゃっとした話をしていると、小谷真理さんたちがちらしを配っている。なんでも、センス・オヴ・ジェンダー大賞の発表が間もなく始まるとのことで、なんと候補作には『ΑΩ』も上がっているらしい。

「センス・オヴ・ジェンダー」って何? と問うと、来ればわかるという返事。という訳で、参加することに決定。

 話を聞いて見ると、センス・オヴ・ジェンダー大賞はジェンダーの揺らぎを感じさせてくれた作品に与えられるらしい。もちろん『ΑΩ』はジェンダーの揺らぎをテーマとして書いたものではない。でも、読んだ人が揺らいでくれて、凄いと思っていただけるなら、それはそれで嬉しいことである。しかし、選評を聞いても、『ΑΩ』のどこが揺らぎを感じさせたのか、よくわからなかった。結局、『ΑΩ』は受賞を逃し、大賞作は『スカーレットウィザード』であった。

 何がよくて、何がまずかったのか、来年の受賞を目指して対策を立てなければ、と選考報告会に出席していた野田令子さんや北野さんたちを捕まえて、センス・オヴ・ジェンダーのなんたるかについて、話し合う。やはりよくわからない。しかも理解していないのは僕だけらしい。でも、きっと他の人もわかった振りをしているだけだと思う。

 その後、SF の復興について、いろいろと意見を交わす。

「やっぱり、今は漫画でしょう。『ヒカルの碁』で碁がえらい人気になってるように、SF も漫画で人気回復を図るのは、どないでしょう?」

「というと、主人公は少年で、物置で古い SF を見つけて、SF 作家の霊にとりつかれるとか……」

「SF 作家と違て、SF ファンの霊にとりつかれるんです。物置にあったのは、古い同人誌です。今は供給よりも需要を掘り起こすべきです。需要があれば、自然と供給の方は追いついてきます。というより、現状あきらかに供給過多ですが」

「そっから、話はどう進みますのん?」

「霊に導かれるまま、生まれて初めて SF 大会に出るわけです。まあ、会場に子供はあんまりいてへんのですが、もう一人小学生がいて、そいつは大物 SF ファンの息子で、すでに SF ファンとしての頭角を現してきている。SF ファンダムでは結構有名な訳です。見掛けは「千と千尋の神隠し」のハクそっくりです。それで、明らかに初心者である主人公にいろいろと会場の説明をしてやる。そんな時、主人公はたまたまぶつかった初老の紳士にサインをしてもらうことになる。ところが、その紳士はなんと大 SF 作家やったんです。大物 SF ファンの息子はその様子を見ていて、ショックを受けて『わぁー!』言うて、会場から飛び出してしまう。この後、二人はライバルになります。こうして、SF の面白さを知った主人公は次々と強敵を倒しながら、ローカルコンやSF大会で企画をしたり、同人誌を発行して、少しずつ SF ファンとして認められ、やがてはファンジン大賞を受賞して、SF 大会を主催し、最終的にはワールドコンの招致に……」

 そうこうしているうちに田中さんや喜多さん夫妻も合流し、全員でゆ〜こん亭へと向かう。会場では「電気猫」というビデオが上映されていた。初めて見るものだったが、なかなかこっていて面白い。

 ここで、しばらく、ぐちゃっとした話をした後、またロビーに戻る。

 ロビーでは、S澤さんや、巽孝之さん・小谷さん夫妻も加わり、朝型までぐちゃっとした話を繰り広げる。

 部屋で仮眠をとった後、やっと温泉に浸かる。朝飯は逃してしまった。勿体無いことである。

 閉会式の終了予定時刻は12時で、最後まで出ていると、帰りの電車に間に合わない。そこで、閉会式には出ずに、ロビーで田中さんや北野さんや武田さん・菅さん夫妻とともに、ぐちゃっとした話をする。

 と、11時過ぎにどっと会場から人が溢れ出てきた。予定より1時間も早く閉会式が終わったらしい。こんなことなら、参加しておけばよかったと悔やむ。

 とにかく、その場の人々に挨拶をすまし、バスへと急ぐ。

 バスから降りると、野尻さんを発見。間もなく、旅館から歩いてきたという野田篤司さんが合流。ここで、最新軌道力学について、ハード SF のネタになりそうな凄い話を聞く。なるほどそういうことがあるのか。地球の周りも探してみれば案外、2つ3つは見付かるのではないだろうか?

 また、「キャッシュ」の話になり、野田さんがホームズやアリスの熱心なファンだということがわかった。今、思い出したが、僕の例の作品は是非読んでいただかねば。

 かくして、家路へとついた。


Copyright © KOBAYASI Yasumi 2002


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