駄文30 さっちゃん


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「世にも奇妙な物語 春の特別編・影の国」の撮影見学に行った。

 ファックスで送られて来たスタジオの地図を手に都内某所を探し回るが、それらしき建物が見付からない。

 と、若い女性が民家の前で、こちらを見ている。

 これはひょっとすると、逆ナン? と思って近づくと、当然のことながら逆ナンなどではなく、僕を迎えに出てくれたプロデューサ補の永井麗子さんであった。

 そして、驚くなかれ、そこにあった極普通の民家の正体はドラマスタジオだったのだ。

 確かにいただいたシナリオでは主人公の自宅のシーンとなっていた。しかし、場所は撮影スタジオとなっており、僕のイメージでは、倉庫のような広いスタジオの中に天井と壁の一部がない部屋のセットを作ってそこで撮影するはずだった。

 だが、そこにあるスタジオは、本当に民家にしか見えなかった。一階は駐車場になっていてワゴン車が止まっている。ドアもまさしく民家のドアである。このドアを開けると、殺風景で天井にも床にも最新機材が取り付けられているスタジオになっているのだろうか?

 中に入ると玄関があり、夥しい数の靴が並んでいた。

 普通の民家である。

 なにやらリビングの方で人の動きが激しい。すでに撮影が始まっている。パソコンに文章を打ち込むシーンだ。ラストシーンである。(放映されたドラマでは桜井幸子さん演ずる萌が打ち込む姿と画面がスムーズに繋がっていたが、実際にはばらばらに撮っている。おそらく、こんなことは常識ではあるのだろうが、実際に目の当たりにすると感動してしまう)

 台所が機材置き場になっていて、激しくスタッフの方々の出入りがある。僕はその只中でぼうっとしていたわけだ。邪魔をしにきたようで、誠に申し訳なく思う。

 撮影の合間に、脚本・演出を担当されている落合正幸さんと少し話をする。短い時間ではあったが、同じようなものを読んで、同じような面白さを感じていたことがわかり、安心する。(予想通り、放映されたドラマは20分という枠の中で、最高水準の傑作に仕上がっていた)

 さらに、主演の桜井幸子さんにご挨拶するために、2階の控え室に向かう。

 桜井さんは一目見ただけで腰が抜ける程の美しさだった。もちろん、「やっと会えたね」などという気の利いた台詞が言えるわけではなく、おどおどと自己紹介するのが精一杯だった。

 ああ。前にもこんなことがあったような気がする。

 その後、桜井さんの出番があり、自宅に逃げ込むシーンの撮影を見学する。迫真の演技に圧倒される。

 そして、影のダンスのシーンの撮影が始まった。放映時には大杉漣さんの顔が合成されたのだが、影の動きそのものは、有名なダンサーである長谷川達也さんが演じられていた。被り物 + CG 処理というのは、僕の作品の映像化には必須事項らしい。

 その後も撮影は続いたが、別の打ち合わせがあったため、残念ながら僕は途中で失礼させていただいた。

 後日、テレビ放送を見て、感激を新たにしたことは言うまでもない。

 なお、表題の「さっちゃん」というのは、駄文22「なっちゃん」と語呂を合わせただけであって、他意はないのである。


Copyright © KOBAYASI Yasumi 2003


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