駄文32 京フェス


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京フェスに行った。

 今年も去年と同じく、本企画はパスし、合宿からの参加である。

 丸太町駅の改札を出た所で、喜多哲士さんと出会う。喜多さんもお仕事で遅くなったそうである。

 土曜日に仕事をするなんて、なんて我々は働き者なのだろう、と思っているうちにさわや旅館に到着する。

 すでにオープニングは終了していたため、毎年恒例の小浜徹也さんのゲスト紹介を聞き逃してしまった。取り敢えず、大広間でだらだらと過ごすことにする。

 野尻抱介さんの王立科学博物館のコレクションに感心しつつ、大森望さんに今年中に読んでおかなければならない SF について尋ねる。なるほど。そういうのもありましたか。

 松浦晋也さんに日本の宇宙開発の問題点についての意見を聞いていただく。

 日本の宇宙開発の最大の問題点は国民の多くが宇宙開発に関心がないことである。これは単に国民性によるものではなく、日本の宇宙開発に携わる機関が積極的な広報活動を行っていなかったことにも問題があるのではないだろうか? 10月に行った林譲治さんとの対談で、会場の人たちに「日本の探査機が火星に向かっていることを知っている人はどれだけいますか?」と尋ねたところ、一人も手を上げなかった。もちろん、恥ずかしくて気後れがした人もいただろうが、それにしても惨憺たる有様である。20数年前、アメリカの探査機が火星や木星や土星に到着した時、日本でも新聞の一面を飾り、テレビでは2時間の特別番組が組まれた。それが今や自国の探査機が火星に到着するかどうかの状態なのに殆どの国民が知らないのは、広報に問題があると考えざるを得ないだろう。また、小惑星「糸川」へ着陸し、サンプルを地球に持ち帰ることを目指し、現在飛行中の探査機の推進装置には、最近テレビで話題になっている「謎の推進装置」リフター (イオンクラフト) と同じ原理が使われているのだから、それだけでも大きな話題になっておかしくない。

 ミッションに失敗したときの批判が大きいのも、広報活動の少なさに原因があるのかもしれない。例えば、オリンピックの前に有望な日本選手はテレビで大きく取り扱われ、国民に親しまれることになる。そして、その選手がメダルをとった時はもちろん讃えられることになるが、万が一成績が振るわずとも、批判されることは少ないだろう。国民は選手たちのオリンピックへ向けての努力を知っているからだ。もし、宇宙開発に携わる人々の情熱と努力を報道していれば、仮にミッションが失敗したとしてもそれを詰る人はいないだろうし、また失敗の中からも多くの事を学べることを理解するだろう。

 どの企画に行くべきかさんざん迷った末、「テッド・チャンを語る部屋」に参加する。

 テッド・チャンは現在まで8作の短編しか発表していない。それだけで、作家を語ろうというのが、そもそも無理だったのかもしれない。彼をハード SF 作家として捉えようとする人が多かった (もちろん、彼はハード SF 作家なので、この捉え方は激しく正しい) のだが、僕にはどうも割り切れないものがある。彼には、単に科学的な理論を展開するだけが目的ではなく、人間を描こうとして描ききれていない側面があるように思うのである。とは言っても、この仮説を検証するだけの作品数がないのである。

 その後は「異世界想像遊戯」に参加する。

 構築されたのは無限に広がる平面の台地を持つ世界で、数光年おきに存在する大地の穴に恒星が嵌まり込んでいるというものである。この世界では、太陽系の各惑星の環境がすべて同じ大地の上に存在している。したがって、系統の違う生物圏 (例えば、メタン系とか、アンモニア系とか、水系とか、硫黄系とか、鉛系とか) が恒星を中心に同心円状に形成される。そして、この世界のように隔絶していないので、それぞれの生物圏は自分たちの領域を広げようと、互いに凄まじい抗争を繰り広げる。例えば、この世界の地面では常に恒星に向かって風が吹き、上空ではその逆になるため、外側にいる生命圏は内側のそれに対し毒ガスを流し、内側の生命圏は外側のそれに対し風船爆弾を使うといった状態である。

 その後、「SF 雑誌ってどうよ?」に参加する。

 東浩紀さんが講談社の文芸誌 <ファウスト> の編集長に電話をして、意見を聞こうとした時、「えっ? 今、人間彼女と一緒なの? ごめん。ごめん」と言っておられた。<ファウスト> 編集長にはどうやら人間の彼女がいるらしいことが判明する。

 大広間に戻り、冬樹蛉さんや、三村美衣さんや、さいとうよしこさんたちと冷麺談義 (詳細については別途報告) などをするが、ついに力尽きて、気が付くと朝になっていた。

 その後は例年通り、喫茶店で朝食をとった後、冬樹さんたちと昼頃までだらだらと爽やかな話をし、そして電車を乗り継いで家路へと向かったのである。


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