駄文36 京フェス

 京フェスに行った。

 今回は本会の午後の部から参加する。会場は京都大学の中、法経本館の3階である。今年は京大の学園祭の一企画として、開催したとのことである。確かに京大の SF 研主体のイベントなので、それもありかと思う。ただ、ぶらぶらと学内を見て回っていた見学者が会場に入ろうとして、参加費を請求されて、慌てて逃げ出す様子を見たが、アウンスの面で配慮があった方がよかったかもしれない。

 午後最初の企画は「ウェアラブルコンピュータが変える世界」。出演は池井寧さん、林譲治さん、菊池誠さんの3名であった。僕は以前より、ウェアラブルコンピュータとしては、必ずしもヘッドマウントディスプレイに拘る必要はないのではないかと思っていたが、3名の方々の意見もそちらに近いもののようだった。おそらくウェアラブルコンピュータの第一歩は「ケータイ」から始まるのだろう。

 午後2番目の企画は「失われたSFを求めて―「未来の文学」の目指すもの―」。国書刊行会の編集者・樽本周馬さんと大森望さんの対談である。樽本さんの営業時代の話が面白かった。樽本さんが沖縄の図書館巡りをしたおかけで、多くの沖縄の図書館では国書刊行会のラインナップが充実しているらしい。沖縄まで営業の足を延ばす出版社は殆どなかったことが幸いしたとのことである。

 喜多哲士さん、北野勇作さん、林譲治さんたちと夕食をとる。話題は SF 新人賞候補作について。いろいろな意味で衝撃的だった。

 オープニングの後は、<S-F マガジン> のS澤編集長と、とある企画について打ち合わせを行う。実現できればいいのだが、まだ微妙な感じか。

 少し遅れて、のださんによる「ハード SF 企画」に乗り込む。部屋に入ってから気付いたのだが、この企画での「ハード」というのは、通常「ハード SF」と呼ばれる場合の「ハード」とは少し意味が違っていた。いや。むしろこっちの「ハード」の方が本来の意味なのか? とにかく目から鱗がぼろぼろと溢れ落ちた。企画の基本は様々なハード SF ――J.P.ホーガン「星を継ぐもの」、石原藤夫「ヒノシオ号の冒険」、谷甲州「星は、昴」、R.J.ソウヤー「アフサンの遠見鏡」、A.K.ル・グウィン「闇の左手」、グレッグ・イーガン「万物理論」、堀晃「遺跡の声」、小林泰三「ΑΩ」、A.C.クラーク「楽園の泉」、ダン・シモンズ「エンディミオン」、野尻抱介「太陽の簒奪者」 ――などを取り上げ、N田さんがそれらがいかにハードであり、それらをどうやって、妄想し、楽しむか――のださん曰く「うまく妄想すれば何杯でも御飯が食べられる」――というものである。なるほど、そう言われて見れば、「いくら仲がよくても、『ヒノシオ号』って男同士の名前をくっ付けて船の名前にするのはおかしいよね」とか、「男ばっかりが乗ってる木星(土星)行きの宇宙船に積んでるコンピュータがおっさん声で、しかも乗組員をファーストネームで呼ぶのは、どういうことか? て、言うか、そうプログラミングしてある訳だよね。ひょっとすると、チャンドラ博士の趣味? 『おっさん声でファーストネームを呼ばれるのが嫌やったら、クルーからはずす』とか脅迫されたりして」などと言ってることの意味はよくわからないが、なかなか興味深く、ちょっと怖い話が続く。いや。作者たちは、そんなこと考えてなかったと思いますよ。

 その後は、古沢嘉通さん主催のワイン部屋に行き、取り敢えず目の前にあるワインを飲もうとすると、「それはまだ飲んでは駄目です」と厳しく怒られる。どうやら指定された順番通りに飲むという趣向だったらしい。その部屋で、何人かの人々に北野さんと共にゴジラ映画の系譜と時間軸について、啓蒙を行う。

 その後、家庭の事情があったため、後ろ髪を引かれる思いで会場を後にするのであった。


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