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駄文37 春はいつから?

 すっかり春めいて、桜もそろそろ見時になってきた昨今だが、「そもそも『春』っていつからいつまでなのだろう?」という疑問を殆どの人は抱いたことがあるだろう。いや。100人の人がいれば、100人とも疑問に思ったことがあるはずだ。ということで、春の定義について、考察してみたい。

(1) 立春から立夏まで

 天気予報などで、「暦の上では、もう……」とよく紹介されるのが、この定義だ。「立春」とか「立夏」というのは、「大安」とか「友引」みたいな占いに使う迷信だと思っている人は多いかもしれない。確かに占いには使われるが、「立春」「立夏」などの二十四節気は天文学的にもちゃんと定義されている用語なのだ。厳密に言うと、太陽視黄経により定義されている。平たく言うと太陽を巡る地球の公転軌道に15°毎に名前がついているのである。

 太陽視黄経が0°、地球の赤道面に太陽が入った瞬間が春分点になり、この日昼と夜の長さがほぼ等しくなる。夏至点では、昼の長さが一番長くなり、秋分点ではまた昼夜が等しく、冬至点では夜が一番長くなる。立春点は太陽視黄経が345°になる点であり、冬至と春分の中間にある。地球が立春点を通過する時点は、何年何月何日何時何分何秒まで正確に計算することができるので、定義はばっちりである。

 この二十四節気というものがなぜ使われるようになったのかと言うと、暦の歴史が関係している。いわゆる「旧暦」である「太陽太陰暦」は一日がかならず新月になるようになっている。(そして、15日の夜は必ず満月になる。十五夜という訳だ) つまり、月の満ち欠けに合わせて、ひと月の日数が29日になったり、30日になったりする。これは現在の暦のように単純な規則に沿うものではなく、かなり複雑な変化をする。それどころか、一年が13か月になったりすることもしょっちゅうあった。これでは、季節の移り変わりに従って、農作業等を行うのに不便なので、月ではなく、太陽の動きのみに合った二十四節気が使われるようになったのだ。因みに、現在の暦は太陽暦になっているので、二十四節気の日付は毎年ほぼ同じだが、旧暦ではひと月程度の範囲で前後していた。旧暦1月1日は「立春に一番近い新月の日」と考えて差し支えないだろう。

 また、二十四節気は西洋占星術の十二星座と同じ定義でもある。二十四節気は

立春 雨水 啓蟄 春分 清明 穀雨 立夏 小満 芒種 夏至 小暑 大暑 立秋 処暑 白露 秋分 寒露 霜降 立冬 小雪 大雪 冬至 小寒 大寒

 

春分から穀雨までが牡羊座、

穀雨から小満までが牡牛座、

小満から夏至までが双子座

夏至から大暑までが蟹座

大暑から処暑までが獅子座

処暑から秋分までが乙女座

秋分から霜降までが天秤座

霜降から小雪までが蠍座

小雪から冬至までが射手座

冬至から大寒までが山羊座

大寒から雨水までが水瓶座

雨水から春分までが魚座

 

という関係になっている。

 立春の時期は一年で最も寒い時期である。だから、これ以上寒くなることはなく、暖かくなる一方であるということで、春の始まりと考えられていたらしい。この定義は現代人の感覚とは少し違うような気がする。

(1) 旧暦1月から3月まで

 俳句などの季語はこの定義を使うようである。上にも書いたように、1月1日は立春に最も近い新月の日であることがこの定義の根拠である。この定義もまた現代人の感覚とはずれてしまっている。

(3) 新暦3月から5月まで

 (1)、(2) の定義とは約ひと月ずれることになり、現代人の感覚に近付いている。しかし、3月の頭などはまだかなり寒いことが多い。

(4) 牡羊座から双子座まで (つまり、春分から夏至まで)

 牡羊座、牡牛座、双子座は春の星座とされているらしい。(春に見える星座という意味ではないので、お間違えなく。この時期、太陽がこれらの星座の近くにあるので、見ることはできない)

 この辺りの定義が現代人の感覚に近いのではないだろうか?

(5) 冬日でも夏日でもない期間

(1) 〜 (4) の定義だと、実際の気候に関係なく、天文的に強制的に季節が決まってしまうことになる。また、地理上の違いも反映されない。北海道でも、沖縄でも、同じ日に春が来ることになってしまう。

 気象用語の「冬日」とは「最低気温が0℃以下の日」のことで、「夏日」とは「最高気温が25℃以上の日」のことである。これらが続く期間がそれぞれ「冬」「夏」であるとするならば、それらり間の期間として「春」「秋」が定義できる。緯度や年毎の変動も含められる。

 ただし、ある日以降、突然、冬日ばかりが続くこともないし、ある日を境にしてそれまで続いていた冬日が突然なくなってしまうこともない。通常は、冬日だったり、冬日でなかったりする期間が続くことになるので、「ここからが春の始まり」と明確に断言できないという問題がある。さらに、砂漠など1日の寒暖の差が激しい地域では、「冬日にして夏日」という日もあるだろう。

 誰もが聞いて納得する何かうまい定義はないだろうか? 

 いや。別に無理矢理定義する必要もないのだろうけど。


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