もどる

トップへ


俺とエロチック SF

 編集部から「俺とエロチック SF」という題で文章を書いてくれと言われた。

「なぜ一人称が『俺』と決まっているのか」とか、「『エロチック SF』などというジャンルがあるのか」とか、疑問点は山ほどあるが、とにかく引き受けたからには、書かねばなるまい。

 さて、エロチック SF と言えば、たいていの人はアシモフの『神々自身』を思い浮かべるに違いない。なにしろ、この作品は「アシモフにはセックスが書けない」と言われたことに憤慨したアシモフがセックス描写をするためだけに書いたような小説であるから、これこそ真のエロチック SF であると言っても過言ではない。

 この長編の中で、アシモフはこれでもかと、セックス描写を繰り広げる。それも三つ巴のセックスである。初めて読んだ時は随分と興奮した。いや。今でも読み返せば、きっと興奮するに違いない。

 そういう訳で、アシモフをお手本に、僕も『ΑΩ』や「母と子と渦を巡る冒険」(『海を見る人』収録) では、せっせとセックスを描写したのだった。これで、誰も「小林泰三にはセックスが書けない」などとは言わないだろう。

 でも、アシモフに向かって、「セックスが書けない」なんて言った人はいったい何を考えていたのだろう? 本気で、アシモフが書いたエロ小説が読みたかった訳でもなかろうに。

(<SF Japan> 平成15年秋季号)


Copyright © KOBAYASI Yasumi 2003, 2005


もどる

トップへ