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ビオランテには棘がある?

 

 ゴジラ映画の中から一本選ぶアンケートが行われると、たいてい第一作が一位になってしまうのだが、僕は敢えて十四年ぶりにゴジラが他の怪獣と対決した『ゴジラVSビオランテ』を取り上げたい。

 実はこの作品、九○年代にブレイクするバイオホラーの先駆的作品なのだ。

 最愛の娘を失ったマッドサイエンティストは沢口靖子演ずる娘の細胞を薔薇の細胞と融合させ、その生命を存続させようとする。なぜか遺伝子とともに娘の魂まで薔薇に宿ってしまうというお約束に至るまで、バイオホラーの王道を突き進んでいる。このまま、人薔薇が次々と怪現象を引き起こせば、本当にホラーになったのかもしれないが、そうは問屋が卸さない。あろうことか、このマッドサイエンティストは娘に永遠の不死の生命を与えるため、さらにゴジラの細胞と融合させてしまうのである。つまり、ゴジラと薔薇と沢口靖子の合体怪獣である。その第一形態は地面から突き出した繊維質の肉柱の頂上部に歯の生えた薔薇の花が咲いており、無数に伸びる根は触手のようにのたくり一つ一つの先端に小振りのゴジラの口を備えている。とてもホラーっぽい風貌ではあるが、スケールがゴジラサイズなので、ホラーにはならないのである。さらに、第二形態では薔薇の花がなくなり、その代わりに歪に膨れ上がった巨大なゴジラの顔が現れ、体長もゴジラを遥かに凌いでしまう。

 ところで、怪獣の強さというものは設定しだいでどうにでもなる。例えば、モスラはゴジラより強いことになっている。現に一度の例外を除いてコジラがモスラに勝った事はない。しかし、画面から受ける印象として、あの鱗翅目の姿をしたものがゴジラより強いと思えるであろうか。モスラだけではない。ガイガンやキングゴングやメカゴジラでさえ、ゴジラの前ではひ弱に見えてしまう。ただ、キングギドラとビオランテだけは、こいつはひょっとすると、ゴジラより強いんではないかと直感させるものをその姿に持っていた。スクリーンの左右から対峙するゴジラとビオランテを見るだけで、当時すでに成人していた僕でさえ、不覚にも胸を高鳴らせてしまったほどだ。人知を超える巨大な強さと強さのぶつかり合い――怪獣映画の本来の醍醐味を満喫させてくれる傑作だろう。

 ところで、ビオランテの概観にはゴジラと薔薇の特徴はあるけど、沢口靖子は? と、思っていたら、第三形態 (?) は沢口靖子そのまんまだったので納得したのは僕だけ?

(<小説すばる> 平成11年9月号)


Copyright © KOBAYASI Yasumi 1999, 2004


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