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ホラー作家の告白

 

 僕はホラー作家と紹介されることが多い。もちろん、デビュー作がホラー大賞短編賞を受賞したのだから、そう呼ばれるのは当然なのであろうが、ホラー作家と呼ばれるたびになんとなく、恥ずかしいような申し訳ないような思いにとらわれる。

 そもそもホラー作家とは何であるかと言えば、ホラー小説を書く作家と答えざるを得ない。至極単純なことだ。問題は僕の書く小説が果たしてホラー小説と呼ばれるのに値するかどうかということだ。

 世間のホラー小説ファンたちは何を求めているのか? 確証があるわけではないが、概ねオカルト派とサイコ派にわかれるのではなかろうか。(サイコものはホラーではないという意見もあるが、ここでは広義のホラーということにしておく。僕自信はサイコものをホラーに入れることには些か抵抗があるが、サイコものを除外すると、今のホラーの現状はいっきに寂しくなってしまうので)

 で、僕の作品はどちらかというと、オカルトもの二割、サイコもの二割、その他六割ぐらいになってしまう。その他六割は何を書いているのかというと、SF とミステリが半分ずつぐらいになる。つまり、辛うじてホラーが一番多い程度なのである。ホラー作家と呼ばれていいのかと自問する所以である。

 ホラー作家と呼ばれる人物が『玩具修理者』だの『人獣細工』だの『肉食屋敷』だのという書名の本を出したら、読者がどういう内容を期待するかは自明であろう。しかし、僕の小説には美少女を玩具にしたり、動物として飼育したり、ましてやその肉を食べる話は出てこないのである。出てくるのは街の片隅で子供たちの玩具を修理する話だったり、人と獣の細工の話しだったり、肉食の屋敷の話だったりするわけである。

 喩えるなら、「おおいたち現る!」という看板を掲げた見世物小屋に入ってみたら、ただの大きな板に血がついていただけだった――読者をそんふうな嫌な気分にさせているのではないか、と書店で自分の本をみかけるたび、非常に申し訳のない心持ちになるのである。

(<週刊小説> 平成12年5月12日号)


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