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降霊機

 最近はやや復活の兆しがみられるが、九〇年代はSFが全く振るわない時代だった。ノストラダムスの予言の影響で明るい未来に希望が持てなくなったためか、あるいは単に飽きただけか、原因はよくわからないが、SFは売れないというジンクスが出版業界に根を降ろしていたらしい。新人SF作家を発掘するための新人賞もジュニア向けを除いて、なくなってしまっていた。

 で、その間、何が流行っていたかというと、ホラーなのである。つまり、大まかに言うと、SF作家を志し、デビューを目指すものは、ジュニア小説かホラーかどちらかを選ばなくてはならない状況だったのである。かく言う筆者もホラー系新人賞からデビューしたくちである。だから、ホラー作家と呼ばれることが多いし、依頼も殆どがホラー小説である。

 と、書くとSFとミステリならともかくSFとホラーでは正反対ではないかと思われる方も多いだろう。なにしろ、SFはサイエンス・フィクションの略であるところからもわかるように理論を重んじる分野である。片やホラーはあえて理屈を唱えないという特徴を持っている。全く水と油ではないか。

 ところが、SFとホラーは案外親和性が高いのだ。もちろん、それぞれの分野の中核をなす部分にはあまり共通点がない。しかし、周辺領域では両者の要素を併せ持つ作品は少なくない。映画で言うと、『エイリアン』などがそれに当て嵌まる。小説で言うと、大ヒットしたホラー『リング』シリーズは第二作『らせん』以降、急激にSF色を強めている。同じくベストセラーホラー小説『パラサイト・イヴ』に至っては、二十年前なら文句なく、SFと呼ばれたに違いない内容だ。

 では、なぜSFとホラーは近いのだろうか、とその理由を考えてみた。以下はあくまで仮説である。ホラーが文字通り恐怖(ホラー)をテーマとしているのに対し、SFは驚異(ワンダー)をテーマとしている。この二つの感情は実は似ているため、SFとホラーという二つの分野は心情的にはかなり通じているのではないだろうか。筆者はホラー小説を書くときもSFを書くときと同じ執筆スタイルなのだが、それでも受け入れられているのは、案外こういうところに原因があるのかもしれない。

 今回紹介する「降霊機」(著作権者名: ポポくん)はそんなSFとホラーの親和性にも通ずる風変わりなソフトだ。なにしろ、科学の粋を集めて造られたコンピュータを使って霊を呼び出そうと言うのだ。もっとも、何十年も前から小学生たちが行っているインスタント版の降霊儀式であるところのこっくりさんにしても、使用する硬貨や紙や筆記用具などの設計・製造は科学的に行われているのだから、さほど不思議なことではないのかもしれない。

 使い方は霊の名前、死亡年月日、享年、死因を入力し、OKボタンを押すだけである。後はソフトが自動的に霊界と交信を始め、霊を見つけてくれる。霊が見つからないこともあるが、その時はできるだけよく似た霊を探してくれる。この辺り深く考えてはいけないのだろう。「はい」を選ぶと降霊を開始する。

 使用上の注意点としては、一人で行うのではなく、なるべく大勢で行った方がいいということがあげられる。それから、以下のような方には使用を勧められない。

・心臓が弱い方。

・霊感が強い方。

・こっくりさんに憑かれたことのある方。

・冗談が嫌いな方。

 

「降霊機」は以下のサイトからダウンロードできる。

http://www.alpha-net.ne.jp/users2/ki4po/newpage2.htm

(<産経新聞>大阪版 平成12年7月10日夕)


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