■ 定義
確率変数の意味をきちんと理解するのは、難しい。「変数」という言葉が使用されているが、本当は変数ではない。
一言でいうと、「確率変数は試行結果において定義される関数」である。
■ 「でたらめ」な変数
「硬貨投げ」について考えてみよう。「硬貨を投げる」という実験・試行の結果、以下のどちらかが起こる。
硬貨には何ら細工は施されておらず、表と裏が出ることは、「同様に確からしい」ものとする。
ここで確率変数を
とする。
と、硬貨投げの試行結果(事象)はXによって表現できる。
ここで、
と書くことにする。
ならば、Xが取りえる値は0か1ということになる。このように、Xの値が「とびとび」のとき、Xは離散型確率変数という。Xが連続的な値を取る場合は、連続型確率変数となる。
ここで、注目すべきことは、「表が出る」を1とし、「裏が出る」を0と、任意に書いたことである。0と1は他の数値にしても、かまわない。
もうひとつ、注目すべきことは、「Xの値は硬貨を投げなければわからない」ことである。Xはどのような「規則」によって決まるのか。
そして、その「規則」こそ、確率なのである。
ここで、表と裏が出ることが「同様に確からしい」と便宜的に仮定すれば、日常の経験則との矛盾は起こらない。確率=50%である。
硬貨を投げるなどの試行において、結果である確率変数Xは確率という「規則」によって決まるのである。しかし、事前にXの値を予測することはできない。Xは「でたらめ」によって支配されているのである。英語で「でたらめ」は「ランダム(random)」というので、硬貨投げの実験結果は「ランダム現象」なのである。なお、硬貨投げの場合、Xの取りえる値は有限で、0か1のどちらかしか取りえない。
■ なぜ確率変数は関数なのか
ここまでの話をまとめると
となる。
これを、もっと数学的な言葉で表現すると、確率変数Xは
によって定義される関数とみなすことができる。そして、このような確率変数(random variable)という関数では、「確率」という「規則」によって、試行結果であるXの値が決まるのである。「規則」には前提があり、例えば「硬貨投げ」のような実験では、0と1の出る確率を等しいと仮定した。
■ 現代投資理論における確率変数の役割
株価など経済指標は一般に確定した値はもたない。が、その変動の大きさや平均値などを知ることは過去のデータからできる。株価などを確率変数とみなすと、確率論と統計学を分析手法として用いることができる。
例えば、オプション取引では相場変動の大きさ(ボラティリティー)などから、将来の相場を予測してプレミアムの適性価格が計算される。このような手法の出発点が、「ブラック・ショールズ式」なのである。
現代ポートフォリオ理論では、株価を確率変数とみなし、リターンの期待値と分散(期待値からの「ばらつき」)という「リスクとリターンの関係」から最適なポートフォリオが得られるとされている。
このように、確率変数は投資理論の世界では、重要な役割を果たしているのである。