権利行使は有利か?
オプションは条件付きの権利で、オプション市場では原資産を売るまたは買うという権利が取引される。
権利には価値があるが、オプションの最終取引日である満期日(SQ日、納会日など)までの間しかその価値はない。
オプションは「生きていてこそ価値がある」のである。
オプションとは、「いのち短し、恋せよおとめ・・・」なのである。
権利の価値=プレミアム
現在の日本国内で個人投資家として取引可能なオプションは
などである。
日経平均と株券のオプションがヨーロピアン形式で、他の2つはアメリカン形式である。
それぞれ取引に関するルールは異なるが、プレミアムのみを売買することはできる。オプションとは「消耗資産」ではあるが、権利のみを売買して利益を得ることができる。
また、権利行使であるが、「ユニットオプション」では、一般に権利行使は行わない。権利行使には大きな資金が必要になるからである。
また、商品先物取引でのオプションだが、権利行使すると先物が原資産であるため、先物でポジションを持つことになり、証拠金が必要になる。
オプションという権利は「生きていてこそ価値がある」ので、満期日までなら権利は消滅しない。したがって、権利行使するよりも、オプションのプレミアムを売買する方が便利で有利でもある。
例えば、通貨オプションでコールを行使するよりも、コールを売って手仕舞った方がよい。仮に権利行使し外貨を保有する必要性があるとしても、いったんコールという権利を売ってオプション取引を終了してから、外貨を購入した方が利益になる。これは商品先物のオプションでも同じことで、権利行使するよりも値上がりしたプレミアムを売ってプレミアム益を確保してから、新たに先物市場でポジションを持てばよい。もちろん、オプション取引を終了してから原資産の市場で取引する必要性がなければ、オプションのプレミアムのみを売買すればよい。
なぜ権利行使は必ずしも有利ではないのか?
オプションには原資産の価格と行使価格との差額以上の価値があるからである。この差額は本質的価値(intrinsic value)と呼ばれ、コールとプットではそれぞれ
と定義される。
ただし、この定義はヨーロピアン形式のオプションでは満期日のみにおいてあてはまる。アメリカン形式のオプションでは、権利行使がいつでも可能なので、この定義は満期日以前でもあてはまる。
また、オプションには本質的価値の他に、時間的価値(time value)があり、オプションの価格であるプレミアムは
となる。
アメリカン・オプションでコールを権利行使しても得られる利益は本質的価値のみである。コールを売って時間的価値+本質的価値を得た方がよい。したがって、アメリカン・オプションのコールは権利行使されない。(少なくとも理論的には)
ところが、アメリカン・オプションのプットは違う。そもそもプットを買う目的はコールのように値上がりを期待するのではなく、値下がりに対するヘッジである。例えば投資家がドルを保有しておりドルの価値が下がるのをヘッジするためにプットを買えば、ドル安になったとき投資家はプットを行使する。また、ドルを保有せずにプットを買っても権利行使には意味がない。このような場合はプットを転売すれば利益になる。
アメリカン・オプションでは、コールの値付けよりもプットの方が理論的には難しい。
したがって、個人投資家としてのオプション取引では、たとえアメリカン形式であっても権利行使するよりもプレミアムのみの売買の方が便利で有利と思われる。