タイムディケイ
である。
残存日数が少なくなると、時間的価値は目減りする。これをタイムディケイ(time decay)という。
粗糖オプションのコールを例にタイムディケイをグラフで見てみよう。
粗糖オプションはアメリカン・スタイルなので、権利行使はいつでも可能。このため、コールの本質的価値は
である。
ここでは、原市場価格が17030円、行使価格が17000円のコールのタイムディケイをグラフで見る。このコールの本質的価値は
である。
したがって、コールの理論価格から30円を引いた値が時間的価値である。アメリカン・スタイルのオプション価格が計算できるシカゴプロを使ってコールの理論価格を計算し、以下のようなグラフを得た。市場短期金利は0.2%、ボラティリティーは31.94%とした。残存日数=90,80,70,60,50,40,30,20,10,5,4,3,2,1についてコールの理論価格を計算し、本質的価値を引いて、時間的価値を求めた。一年の日数は365日とした。
このグラフを見ると、納会日の10日ほど前から、コールの時間的価値は急激に減少する。オプションの売り手にとっては有利であるが、買い手にとっては転売するとき不利になる。
時間的価値はボラティリティーと密接な関係があり、ボラティリティーが上昇すると時間的価値も上がる。以下のグラフはボラティリティーが40%のときのタイムディケイ曲線を加えたものである。
オプションを買っても、タイムディケイによって負けるとは限らない。納会日までにボラティリティーが上昇すれば、時間的価値も上昇するからである。また、原市場が上がれば、本質的価値が上昇するためコールのプレミアムは高くなる。
このように、残存日数が少ないときにオプションを買っても、ボラティリティーの上昇や原市場の動き次第では、納会日直前に転売してプレミアム益を得ることはじゅうぶん可能なのである。
逆に、売り手にとってタイムディケイは有利に働くが、ボラティリティーの上昇や原市場の動き次第では、プレミアムが高くなり買い戻しは不利になる。このような場合、原市場の動きをよく見て、オプションを高値で買い戻して損切るか、権利行使されるリスクを取りインザマネーを狙うか、どうすれば利益を最大にできるかの判断が必要となる。
オプションは
を変数とする、多次元の投資戦略なのである。