WDW(ウォルト・ディズニー・ワールド)は、アメリカ、フロリダ半島にあり、その敷地の広さは、東京の山手線内と、ほぼ同じです。その中に、マジックキングダム、エプコットセンター、MGMスタジオ、マーケットプレイスや、その他にも、幾つものテーマパークがあり、ホテルだけでも20数軒あります。WDWは、本当に大きな町で、その中は治安もよく、1つ1つのアトラクションも、スケールが違います。マジックキングダムは、TDLのようなもので、エプコットセンターは、フューチャーワールドと、いながらにして世界11カ国旅行体験するワールド・ショーケースの、2つの世界からなっています。MGMスタジオは、ディズニーが愛した映画の世界が再現され、ディズニー映画の名場面を、再現するアトラクションもあります。
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ユウの母親のミチです。春休みに従兄弟たちと、夢のWDW行きの話がもちあがりました。飛行場へ遊びに行っても、飛行機に乗せられるのを恐れていたユウに、飛行機にのれるか確認しました。こういう質問を確認するのは、難しいんですが、TDLのような所へ行くと理解したようで、「飛行機、乗る」と答えました。それでも、不安でした。乗る直前に恐くならないか、また、ユウを迷子にしたらとか、心配は後から後から、出てきます。しかし、この機会を逃すと、もう行くチャンスは無くなるかもしれないと、ギリギリの決心をしました。
その後、WDWのビデオや、本を、ユウがこちらの知らないうちに、引っ張りだしてきて、見ていることがありました。ユウの中でも、徐々にWDWへの気持ちが、盛り上がっていったようです。
旅行の前日は、ユウの小学校の卒業式でした。卒業生全員が壇上にあがって、順番に1言づつ、決められた言葉ですが、お礼の言葉を述べるなど、ユウの苦手な場面があり、またお別れの会や行事で、大変忙しい毎日でした。本来なら、もっと飛行機に乗っている時間など、ユウに理解させるべきだったかもしれませんが、ぶっつけ本番という感じになりました。
当日は、3家族、大人3人、こども5人での出発になりました。しかも、大人の1人は、直前の肉離れでギブスをはめ、松葉杖状態。離陸も予定の時間を大幅に遅れたりと、期待半分、不安半分で、関西国際空港から、飛び立ちました。旅行で心配したのは、飛行機の中でのユウの状態でした。座席に座っていられるか、機内で、眠ることができるかと。なにしろ、飛行機の乗り換えを考えると、20時間弱かかります。長時間であるうえ、説明不能な時差もあります。普段、ユウは、曜日、時刻、日付を頼りに生活を組立ていますが、それが狂います。そこで、字や絵を書いたりや、音楽を聞くことは、かなり好きですので、いつも持っていく落書き帳と、今回初めて、ウォークマンを用意しました。
やはり、飛び立って、3時間ほどたつ頃から、不安がつのってきました。日が暮れたのに、着陸しない。機内で寝るなど、思いもよらなかったみたいで、「ホテルで寝る」、「飛行場で寝る」を、繰り返しはじめました。座席の都合で、離れて座っていたのを、隣にしてもらい、落ちつかせるよう努めました。そして、ウォークマンで、用意したテープを聞かせました。テープを1本聞いたところで、コテンと寝てくれました。ホットすると同時に、眠り続けてくれることを、祈りました。
何とか、ロサンゼルスの空港に着きました。到着がかなり遅れたため、乗り継ぎの便に乗るのに、広い広い空港内を、走り回りました。「日本人は、文句をチャント言わないから、こんなことになるのよ」と現地の係りの人が、言うくらい、よくあることみたいです。ここでは、国内線に送ってもらう時も、こども5人と私の組と、車椅子の大人2人の組とに、車が分かれたり、私が最後で車のドアーを締めに戻った間に、他の人達についていった、こども達を見失ったり、時間のないところで、ハラハラドキドキでした。
ロスから、オーランドの機内で、ユウは2回目の夜がきたのに、まだ着かないと、トイレで少し泣きました。家を出てから丸一日かかり、やっと、オーランドのWDW(ウォルト・ディズニー・ワールド)のホテルに、着きました。
WDW(ウォルト・ディズニー・ワールド)では、まずは8人で団体行動をしました。ユウも、全員での行動をと思っていたようで、スムーズに行動できました。かえって、日本の様子と回りが違うので、我をだしていられない、状態だったかもしれません。しかし、不安感からか、日本の季節のままでいるのか、ひとり長袖に手袋でいたがりました。
後半は、ユウと私のペアーと、残りの者に分かれて行動することが、多くなりました。他の者はTDL(東京ディズニーランド)に、ないところへ行きたいと思うわけですが、ユウはTDLにあるもの(チキルーム、カントリーベアージャンボリー、カリブの海賊、スプラッシュマウンテン、もちろん英語版ですが)に、乗りたがるからです。
WDWは、聞いていたよりズット混んでいました。マジックキングダムのアトラクションも、TDLの待ち時間より、少し短いかなというぐらいでした。車椅子を押していると、いろんな方が気軽に助力しようかと、声をかけてくださり、お国柄を感じました。また、アトラクションも、TDLと同じように、早くはいれるものもありました。
テーマパーク間の移動に利用する、モノレール、バス、船に乗るだけでも楽しく、他のテーマパークも、魅力いっぱいでした。MGMスタジオ内には、スターツアーズ、インディージョーンズ(レイダース、失われたアークの制作現場を再現したもの)、バックステージ・スタジオツァー(車に乗って、大地震、大爆発、大洪水を体験します)、美女と野獣のショーも見ました。エプコットセンターでの、夜の花火とレーザーショウは、最高でした。
WDWより、少し離れたユニバーサルスタジオ・フロリダでは、ETのストーリーに基づいた、ETアドベンチャーを、ユウは大変気に入りました。ETを自転車のかごに乗せた、記念撮影をするとき、要領が悪いので、まわりの人の爆笑を誘っていました。また、地下鉄に乗って、大地震を経験するアトラクションに、ユウはビックリしました.本当の大地震の後なので、特に生々しいようでした。キングコングやジョーズも、目を白黒させていました。ユウと2人で回ったとき、出口が分からなくなり、ユウに「出口、どこやろ」と聞いて、後に追いていくこともありました。日頃、視覚を頼りに生きていますので、こういう感は、本当によく働きます。
他のこどもと比較すると、他のこどもは、はじめてのアトラクションでも、その知識を、それなりに得ています。ユウは、突然に色々なことが起こるので、よく目が点になりました。ビデオや、本で、事前に見ていなかった、ユニバーサルスタジオでは、特に驚くことが多かったようです。それでも、パニックを起こすことは、ありませんでした。
食事のことも、あまり心配しませんでした。以前は、ユウの嫌いな音(コップなどの壊れたり、ナイフやフォークの落ちたり、椅子の倒れる音)で、よくパニックを起こしました。親も何時もパニックを恐れて、身構えていましたが、いつの間にかレストランなどでも、問題を起こさなくなりました。さすがに、男性は上着とネクタイを必要とするレストランは、時間がなくて急がせ、状態が良くなかったので、ミールクーポンを無駄にして、ハンバーガーにしたこともありました。
十分な日程(10日間)と思っていたのに、全然足りませんでした。プールを主体にした、タイフーンラグーンというテーマパークは、あきらめました。
日本では、なかなか味わえないスケールのWDWですが、さすがに疲れました。言葉も通ない外国で、一人でユウをみなければ状態は、息がぬけませんでした。ユウ自体は、「待っていて」とか、「ここにいて」という指示に、よく従ってくれましたが。
まだまだ、廻り足りない気持ちと、早く帰りたい気持ちが半々の、帰国の日になりました。 ユウは10日間、現地の日にちより、1日進んだ日にち、曜日で過ごしました。出発して、機内で2回夜を迎えたので、日にちを1日進め、現地の日にちよりずれたままでした。途中、飛行機を乗り継いだ、サンフランシスコでも、時差があり、実感とは違うので、少し混乱したようです。日本に、帰るときは逆で、日にちのずれは、なくなりました。
飛行機が飛び立って、1時間ぐらいで「着陸、着陸」と、ユウは繰り返しだしました。行きと同じ経路で帰りたい、道順のこだわりがありますので、行きしのロスに降りたかったようですが、サンフランシスコでの、乗り継ぎでした。そこでも、時差が気になったようです。サンフランシスコから、関西国際空港までの飛行機の中では、乗って1時間程で、一旦寝ましたが、起きてから気分が悪いようで、トイレでもどしました。他の者も、疲れやしつこい食べ物が多かったので、体調を崩したりしていました。他のこどもも、機内は「しんどかった」と、いっていましたが、ユウも長時間の機内は、辛かったようです。
時間がたって、疲れたことはほとんど忘れ、楽しかったことが蘇ってきます。あんな経験は、日本では出来ません。ユウは、楽しかった所へは、二度は行かないと納まらない独得の性格ですので、行けるまで、何年も思い続けます。もう一度行きたいとの気持ちが強くなってきています。
おわり
関連情報として、ホームページでリンクしている、「自閉症児を連れてアメリカへ」の「ディズニーワールド紀行」があり、障害児・者及び同行の家族が列に並ばなくて済む特別カード、ホワイト・カードについての情報もあります。