血液は心臓のポンプ作用によって心臓から全身の血管に押し出されてきます。この血液が血管の壁に与える圧力のことを血圧といいます。心臓から送り出される血液の量が多かったり、血管壁が硬かったりしますと高血圧になります。
- 最大血圧と最小血圧
- 心臓は1分間に60回から80回の収縮・弛緩を繰り返し、血液を全身におくりだしています。血圧は心臓が収縮するとき最も高くなり、このときの血圧が最大血圧とよばれています。また心臓が弛緩するとき血圧は最小となり、この時の血圧が最小血圧とよばれています。
3回以上の血圧の平均値が最大血圧で160以上、最小血圧で95以上の場合が高血圧症ですが、そのなかで腎臓やホルモンに異常があったり、腎血管が細くなっていたりして原因がはっきりしているものを二次性高血圧と呼び、原因がはっきりしないものを本態性高血圧症と呼んでいます。
高血圧症は初めにはほとんど症状がみられません。長く続くと脳や心臓あるいは腎臓の血管が侵され、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、腎不全などの重大な結果を招くことになります。
高血圧症の予防・治療に関連して、どんなことに気をつけたらいいの? |
- 食事
- 食塩に含まれるナトリウムには、血圧を上昇させる作用があります。できれば1日に摂取する量は10gまでにおさえたいもの。食パン1枚で約1g、うどんやラーメンなどは、1杯に約6gもの塩分が含まれています。ラーメンを食べるなら、スープは半分残しましょう。塩分の代わりにコショウなどの香辛料や酢、柑橘類などを用いると、食事も味気ないということは無くなるでしょう。味噌や醤油を減塩タイプのものにかえるのも良いでしょう。また、緑黄色野菜にはナトリウムの作用をおさえる働きがあるので、積極的にとりましょう。
- ストレス
- 血圧は、精神的緊張やストレスによって、著しく上昇させられることが知られています。ところが、現代のように非常に複雑な社会に住む私たちにとって、ストレスを完全に避けるということは、まず不可能といってよいでしょう。そこでストレスの影響を長く残さないようにすることが、特に重要です。そのために、週末には、できるだけリラックスした生活を送るようにしたいものです。散歩やゴルフ、テニスなどで適度な運動を楽しんだり、いろいろな趣味に打ち込むことなども良いでしょう。また毎日の生活ではその日あったストレスをできるだけ早く解消することが大切です。好きな本を読んだり、音楽を聴いたりするのも良いでしょう。
- 寒さに気をつけましょう
- 寒さは、血管を収縮させ、心臓は血液を強くおしだすので血圧が上がってきます.とくに冬は、外出する時にはできるだけ暖かくし、オーバーコート、マフラー、帽子、手袋などの防寒具を身につけるようにしましょう。また皮膚を鍛えて、寒さに対する抵抗力をつけましょう。乾布摩擦は、皮膚を刺激して、皮膚表面の近くにある末梢血管を強くします。このため、皮膚が寒さにさらされても血管の収縮がちいさくなり、血圧への影響も少なくなります。こうした抵抗力は、すぐにつくものではありませんので、まだ暑い夏の頃から根気よく続けて、寒い冬に備えるようにしましょう。
- 暑い時にも注意
- 暑い時には、一般に血圧は下がり気味で、危険も少ないのですが、夏の炎天下でゴルフをしていて脳卒中や心筋梗塞で倒れる人がしばしばみられます。これは、水分を補給しないで、長い間汗をかき続けたため、血液中の水分が不足し、血液が濃縮されてかたまりやすくなり、血管が詰まってしまうためです。暑い所で、長時間作業したり、運動したりする時は、十分に水分をとり、時々涼しい場所で休憩しましょう。また夏の炎天下を歩いてきて、急に冷房のきいた所に入ったりすると、血圧が大きく変動するので、上着を着るなどして調節するようにしましょう。
- 大事な睡眠
- 眠っている時には、10−30%ほど血圧は下がることが知られています。しかし、これは熟睡しているときで、夢をみたり、眠りが浅かったりすると、血圧は下がりませんので、ぐっすり眠るようにしましょう。眠る前にお茶やコーヒーヲ飲みすぎないようにするなどの一般的注意のほか,心配事やイライラがあると眠れませんから、できるだけ気分転換をするようにしなければなりません。どうしても熟睡できない人は、医師に相談して睡眠薬を使用する事も考えられます。
- トイレット
- 排便の時のりきみは、血圧を大きくあげ、正常の人でも、一時的に200mmHgに上がることもあります。便秘になると、排便の時、ふだんよりも、強くりきむことになりますし、トイレにいる時間も長くなりがちです。したがって、便秘にならないよう、食物繊維の多い食事をとるように十分配慮して下さい。和式トイレの方が洋式トイレより血圧が上がるという実験例もあり、血圧への影響という点からは、洋式トイレの方が望ましいでしょう。
- 入浴
- 熱いお湯は、熱さがストレスとなって血圧を上げますし、長湯をすると汗をかいて脱水症状をおこしやすくします。40度C以下の少しぬるめのお湯に、ゆったりとした気分ではいるようにしましょう。はいる時は、足先から除じょに、ゆっくりとはいりましょう。サウナでは、長い間入っていると、汗をたくさんかいて、脱水症状をおこしてしまいますので、水分の補給に、とくに注意しましょう。また、特に冬は、入浴後の保温に気をつけ、入浴後は早めに床にはいるか、暖かい部屋にいて、湯冷めしないようにしましょう。
- 適度な運動
- 運動をすると一時的に血圧は上がりますが、適度であれば、むしろ血管の緊張をやわらげて血圧を下げますし、コレステロールが、運動によって筋肉で消費され、血中コレステロール値が低下するという効用ももたらします。動脈硬化を予防するHDL(善玉コレステロール)が運動によって増えることも認められています。また運動をすることによって、日常の仕事から離れることにもなり、気分転換ができて、ストレスの解消にも役立ちます。運動は、毎日少しずつ、体力に見合った方法ですることが大切です。ふと思いついて急に激しい運動をすることは、かえって危険です。散歩やラジオたいそうをするとか、通勤に徒歩を利用するとか、休日にはピクニックやテニスなどを楽しむと良いでしょう。
- アルコール
- ”酒は百薬の長”とも言われるように、適量を楽しく飲む分には、一日のストレスを解消し、睡眠薬のかわりにもなる効用があり、一概に悪いとはいえません。しかし、多くのアルコールを飲むと、血液中の中性脂肪やコレステロールを増やし、肥満の原因となると同時に、動脈硬化をも促進させてしまい、ストレスの解消どころか、かえって血圧をあげてしまいます。大量飲酒の習慣のある人では、深酒の後で、脳卒中を起こす危険が大きいので、ぜひ節酒に心がけて下さい。
- コーヒー、紅茶
- コーヒーや紅茶に含まれているカフェインは、中枢神経を興奮させたり、脳の血管を収縮させる作用があります。また、皮下脂肪に作用して、血液中に遊離脂肪酸を放出させますが、この遊離脂肪酸は肝臓で中性脂肪酸に合成されるため、血中に中性脂肪が増えて、長い間には動脈硬化を促進させます。また、コーヒーや紅茶では砂糖をいれて飲むことも多く、1杯に10gの砂糖を使うとすれば、1日5ー6杯飲む人は、1日に50−60gもの砂糖をとる事になり、血液中の中性脂肪を増やす原因となります。日本茶でも、玉露や上等な抹茶には、かなりのカフェインがふくまれていますが、番茶には、ごく少量しか含まれていませんし、砂糖を入れて飲むこともないので、問題は少ないと言えます。
- コーラ、ジュース類
- 血液中の中性脂肪を正常に保つには、1日にとる砂糖の量は50g以下に抑えるのが良いとされていますが、清涼飲料水は、1瓶あたり、約20gの砂糖がふくまれていますので、3本も飲むと、この量を越えてしまいます。