市民が談合企業に勝った

                      市原野ごみ裁判をすすめる会
                      事務局長 野村政勝

*談合認定、画期的な判決
原告774名が提訴していた市原野ごみ焼却場建設談合裁判で、8月31日、京都地方裁判所が、「川崎重工は京都市に11億4450万円を、年5分の遅延損害金を加えて返還せよ」と、大手5社の談合を正面から認定し、談合裁判では過去最高額の賠償を命じる画期的な判決が下されました。

*談合審判記録入手が力に
  以前は、公正取引委員会で係争中の記録は住民には開示されませんでした。これまで同様のケースの談合裁判では、新聞記事や予定価格に対する落札率などしか提出できないことが多く、有用な証拠を示すことが難しかったのです。裁判が始まった当初は市原野の場合も同様でしたが、今回の裁判で原告側に力を与えたのは公正取引委員会の談合審判記録が入手できたことです。2003年9月に最高裁判所が、住民を談合事件の「利害関係人」と認め、「住民訴訟の原告は、審判記録を閲覧・コピーできる」と、画期的な判断を下したのです。これによって密室の談合に切り込む道がつき、住民訴訟が談合を防止し得る効果的なシステムとして機能する可能性が生まれました。

*談合に参加した関係者の供述・リストが証拠に
京都地方裁判所の判決で、公正取引委員会が住民に開示した審判記録が談合認定の決め手となりました。判決が「談合の証拠」としたほとんどすべてが、99年から係争中の審判記録の内容でした。
5社の話し合いの場に参加した関係者の証言や、事前に受注業者を書き込んだリストなどから、談合が常態化していたことが明らかになりました。
5社の会合で出席者は、「発注予定物件について受注希望を出し『チャンピオン』と呼ばれる受注予定者を決定する」「各社の受注物件の(ごみの)処理能力の合計が平等になるようにしている」と述べていました。5社以外の会社が指名された時の対応も決められていました。「受注予定者が個別に当該会社に協力を求め、受注できるようにしている」「入札の際に書き入れる相手方の金額を、5社を含む指名業者に電話で連絡して協力を求める」などです。
決定的だったのは、川崎重工業本社の機械・環境・エネルギー事業部担当者のM氏が持っていたメモでした。メモは95年9月28日ころに作成されたものでした。K(川崎重工)、M(三菱重工)、H(日立造船)、N(NKK)、T(タクマ)という5社の頭文字が書かれ、1996年〜2000年の5年間に発注が見込まれるストーカ炉建設工事の各年度の受注予定社が一覧表になっていたのです。判決は、メモの記載内容と実際の入札結果などがよく一致していたことから「同業他社による受注予想をこれほど高い精度で的中させることは、通常では想定しがたい」と指摘し、談合の動かぬ証拠としました。

*市長が損害賠償を請求しない怠慢も厳しく指摘
この裁判は、京都市が談合による不正な利益の賠償を求める義務を怠っていたので、やむなく住民が立ち上がった裁判でした。
判決は、「川崎重工を含む5社が談合の事実を全面的に否認して争っている状況では、審決が確定するまでにはなお長期間を要することが想定される。しかるに、その間京都市長が損害賠償請求を行使しないでいれば、損害の回復が図られない状態が長期間継続し、将来損害賠償請求の消滅時効が生じる危険性も生じかねず、損害賠償請求を行使しないことを正当とする特段の事情にあたるとはいえない」と、審決確定するまで損害賠償請求を行なわない京都市長を厳しく指摘しました。この問題を9月の京都市議会代表質問で日本共産党加藤広太郎議員が取り上げました。(他の党は取り上げませんでした)「市民の税金であり、市は当然損害賠償の請求をすべきではないか」とただしたのに対して、高橋環境局長は、「談合についてはこれまで毅然と対応してきた。裁判所の判断も分かれており、公正取引委員会の審決がだされ談合の事実が明らかにになった時点で毅然と対応する」と答えています。

*今後の方向
川崎重工は高等裁判所に控訴しました。
地裁判決の不充分点は、「損害額の算定が困難ななかで賠償責任を負わせる以上控えめな認定が相当」として「川崎重工の落札率が97.82%と著しく高いことなどを考慮して受注額の5%を返還金額」としたことです。しかし「談合が行なわれた」と断定された物件60件の落札率を見ると、なんとその5割以上が落札率99%以上、7割以上が98%以上です。一方、談合と認定されていない物件27件を見ると、最も低いもので日立造船が落札した48.78%です。談合によっていかに多くの税金が無駄使いされているかがうかがわれます。私たちは落札額の30%を損害と認定すべきだと主張してきました。高等裁判所では、地裁判決を維持するだけでなく、損害賠償額を増額させることによって談合の根絶を図りたいと考えています。

(2005年9月20日)