山本正志の課題研究その3
電気自動車の未来と私の心配事
―激化する電気自動車の開発と日本の産業構造の転換――
山本正志 (「日本の科学者」2011/4「談話室」掲載論文です)
インド製EV REVA 国内で走行している

山本正志の課題研究その1 『これからも大きく変わる京都の学校』 〜奇跡と呼ばれた学校(堀川高校)の実践を踏まえて〜 山本正志の課題研究その2 『構造改革の終わりの始まり』も下にあります。
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中国に見る電気自動車の開発・生産
京都大学東アジア経済研究センター(旧上海センター)主催の「中国自動車シンポ
ジウムが,毎年11月に京都大学で開催される.私が注目したのは「菊地捷氏(株式会
社エイムス技術本部ディレクター)の報告「低速電気自動車の社会的役割と市場の可
能性」であった.菊地氏は,2010年3月に山東省済南市で開催した「第4回山東国際
電気汽車・特殊電動車及び清潔能源博覧会」の見学体験に基づき,中国の低速電気自
動車の社会的役割と市場拡大の可能性を報告した.私はこのレポートを聞いて日本国
内では思いもよらないような事態が中国現地で進行していることを思い知らされた.
それは「車体と蓄電池とモーターさえあれば,電気自動車は誰にでも造ることができ
る」というであった.
自動車産業の取り組み・各国政府の支援
現在,日本の主要自動車メーカーも電気自動車の製造にしのぎを削っているが,や
はり主力はガソリン・エンジン車であり,それに付随しての電動モーターによる支援・
補助である.精密機械の集積ともいえるハイブリッド車も販売されているが,果たし
て未来の主流となれるのであろうか.
まだ,自動車用蓄電池の材料(レア・アース他)が高価であること,1回の充電で
の走行距離が十分でないこと,充電スタンドが普及していないこと,など電気自動車
にとってユーザーの期待に応えられないマイナス面も多い.しかし,優位な面もある.
それはガソリンに比べて運行単価の安さである.夜間(午後11時から)の電力で充電
するとガソリンに比べて1/5〜1/10程度の単価となるといわれている.また車体
の構造が簡単であり,構成部品も1/3から1/5となるといわれている.そして決
め手は,排気ガスを一切出さない「温暖化対策の決定打」といわれる点である(もち
ろん火力発電所での発生はあるが).清水浩慶應義塾大学教授のエネルギー効率計算で
は,石油を焚いて発電して,送電をして,充電をして,モーターを回して,電気自動
車を走らせると,元の石油から見ての効率は約35%.普通のクルマでガソリン使って
走ると,まあ良いところ8%台.つまり4倍もの損をしているという.
こうした事情を反映して,途上国の参入も激しく,先進国でさえ「国際市場をさら
われるな」と政府の支援策が取られている(オバマの「グリーン・ニューディール政
策など」).
対応迫られる自動車産業
現在電気自動車の高価格の最大の要因は蓄電池の性能と生産単価の問題であるとい
われている.この蓄電池製造に必要とされるレア・アースの輸出を中国が制限する動
きも報道されているが,一日の長は中国電池産業にある.電動バイク市場を見ても中
国がはるかに先行していることは,中国各地を旅行しただけでわかる.しかも日本の
エンジンバイクに比較しても安価である.
最近の報道によれば「電動自動車キット」が生産・販売されていて,整備の専門家
によれば「5時間で組み立て完了」という.またインターネット上では「軽自動車を
電動に改造するキット」が販売されており,誰でも車検を取って走行できるというこ
とで人気が高いという.*@
最近の記事で,ダイハツ「コペン」の改造EVが完成.完成車には加戸守行愛媛県
知事が試乗,バッテリーはリチウムポリマー型で容量は8.8kWh(「i-MiEV」の55%).
最高時速190km,航続距離は10・15モードで120km(60km定速走行では170km)
という高性能EVである.(愛媛県EV普及協会*A)
写真にあるように「インドから輸入した4人乗り超小型車の鉛蓄電池をリチウム電
池に積み替えて高速道路も快適走行」といった事例に出会う.
電気自動車普及の社会的影響
さて,これからの近未来,電気自動車の普及は進むのであろうか.多くの技術的問
題を乗り越えなければならないが,歓迎する声と不安を抱える声もあることをふまえ
た上で,産業構造・生活基盤の大変革は止められないように私には思える.電気自動
車社会への転換は,製造・運行単価の低廉化が進むことや温暖化対策面での影響など
歓迎されることはいうまでもない.最近では「(夜間の安い電気を蓄えた)電気自動
車の電力を,逆に(料金の高い)昼間と夕方の家庭用電力として使用する」ことも構
想されている(ほぼ2日分の電力が蓄えられるという).また急速充電の問題も最近,
東芝の新型二次電池「SCiB」は電池容量の90%以上の充電が約5分間で完了すると
いう.*B
一方,最近の「地方はどうなる」といった報道記事では「ガソリンスタンドの閉
鎖が相次ぎ,ガソリンの補給に10km先まで行かなければならない.日常は1〜2km
の通院と買い物に利用するだけなのに」といった笑えない事態もある.自宅で充電で
きる電気自動車で十分間に合う話だ.
ところで,雇用600万人といわれる自動車製造と関連産業はというと,構成部品の
大幅な減少による関連下請け企業などの受ける影響は計り知れない.エンジンもギア
ボックスも,ラジエタ−も,キャブレター,マフラー・排気ガス浄化装置も要らなく
なる.その上やがてはガソリンスタンドも消える.整備も電気自動車になれば点検部
品も大幅に減って,街中のかなりの自動車整備工場は仕事が減る.その上「排気ガス
測定装置」製造のハイテク企業の製品も売れなくなるだろう.
日本は戦後,石炭,繊維,自動車,電機,ハイテクなどの産業が政府の大きな支援
策もあって現在までのGDPを支えてきた.しかし,GDPの2倍近くの公的借金を
抱え,新興国の産業技術の成長と労働コスト面での圧迫を受けて,悪戦苦闘している.
今後,農業や石炭,繊維に続き,裾野の広い自動車産業が優位を失った時,GDP,
国民生活,とりわけ雇用を支える目玉産業は何があるのだろうか.「2%程度の内需主
導の安定した経済経済成長があれば,消費税など考えなくても財政も社会保障も現行
水準を維持していける」といった議論もあるが,医療・福祉分野での雇用創出(北欧
のような)には公的支出と国民負担増は避けられない.経済学者だけでなく,産業界
も政治もこうした近未来の社会構造・産業基盤の大転換時代への展望について答える
責任があると思われるのだが‥‥.
1)本格化する改造EVビジネス http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20101129/105385/?P=1
2)愛媛県EV普及協会 http://www.iri.pref.ehime.jp/iit/ev/
3)東芝 http://www.scib.jp/magazine/pdf/200810diamond.pdf
(やまもと・まさし:京都支部,地方自治)
山本正志の課題研究その2
小泉構造改革の終わりの始まり
山本正志の課題研究その1 『これからも大きく変わる京都の学校』 〜奇跡と呼ばれた学校(堀川高校)の実践を踏まえて〜 は「その1」の後にあります
<これは日本科学者会議京都支部ニュース09年8月号に寄稿した文章に紙面の都合で割愛した部分を加筆
したものです>
京都新聞6月25日付で五十嵐仁氏(法政大学大原社研所長)の「『小泉の影』で転換不徹底」と題する「『骨太
の方針2009』についてのコメント」が掲載された(共同通信配信)。
今は8月30日の衆議院選挙投票日に向けて各政党がしのぎを削っている最中だが、この選挙で「政権のあり
方」が問われていることはこれまでの国政選挙にもまして注目されている。
ここで取り上げる五十嵐仁氏の見解は「新自由主義と労働政策―労働再規制に向けての動きを中心に」(『経済
科学通信』2009/4)、さらには『労働再規制―反転の構図を読み解く』(ちくま新書 2008)に詳しいが、私は常々
「選挙を前にして前回『郵政選挙』で圧勝した小泉チルドレンをはじめとする自民党は、新自由主義『小泉構造
改革』路線にしがみついて今回の選挙を乗り切れると思っているんだろうか?」と疑問を抱いていた。「自民党
がどこか何となく手直しをしているように思えてならない」との感を新聞報道やニュース記事などに接するに
つれ強くしていたが、五十嵐論文を読んで「やはりそうであったか」との確信に至った。
五十嵐仁氏の主な論点は <京都新聞コメント記事>
「骨太の方針2009」をめぐる議論をみても、自民党内には小泉構造改革をめぐって明確な亀裂が存在してい
る。今回もまた、そこからの反転をめぐる攻防が展開され、中途半端な形で決着した。
第一に、「骨太の方針2006」で示された毎年「社会保障費2200億円削減」は、与謝野馨財務・金融・経済
財政担当相が、社会保障費を「来年度は削減はしない」と明言することで決着した。とはいえ、文言そのものは
残った。尾辻秀久参院議員会長は以前、規制改革会議と経済財政諮問会議の「両会議は廃止すべきだ」と要求し
たことがある。
第二に、「骨太の方針」を作成した経済財政諮問会議が4月に発足した安心社会実現会議の「下請け機関」に
なってしまった。今回の「骨太の方針」には、「雇用を軸とした安心社会」や「新たな『公』の創造」など、5月
15日の安心社会実現会議に提出された文書の用語そのままであった。
第三に、「規制・制度改革」という用語が登場した。すでに昨年の「骨太の方針2008」でも、「構造改革」「民
間開放」「労働市場改革」は本文の記述から消えていた。今年はさらに実質的には規制緩和を意味していた「規制
改革」という言葉が消え、「規制・制度改革」に置き換わっている。
このように、小泉構造改革路線からの反転は明らかだが、明確に転換したわけではない。「『骨太の方針2006』
等を踏まえ」という「小骨」が残った。
<新自由主義と労働政策−経済科学通信2009/4>
新自由主義的な労働の規制媛和は中曽根・橋本政権の頃からスタートしているが、消費税増税などによって97
年参院選で自民党が敗北した。その後の経済不況の下で景気対策が最優先され、新自由主義政策からの揺れ戻し
が生ずる。これを不満とし、「郵政民営化」と「構造改革」を掲げて登場したのが小泉純一郎であった。この間、
労働分野における規制綬和は比較的一貫して進められてきた。(派遣労働の規制緩和は、1985年における労働者
派遣法の制定、99年におけるポジティブリスト方式からネガティブリスト方式への逆転、04年の製造業への派
遣労働の拡大など)。
このような政策転換を行うために、小泉首相は経済財政諮問会議と総合親制改革会議(04年には規制改革・
民間開放推進会議、07年には規制改革会議に改組)という二つの戦略的な政策形成機関を利用した。
しかし、新自由主義政策は、その後、徐々に見直されていく。これが、構造改革路線からの反転であるが、
それは密かに2006年から開始されていたように思われる。その背景として重要だと思われるのは、以下の4点
である。
第1は、06年9月に小泉首相は退陣し、安倍内閣が成立した。安倍首相は基本的には構造改革路線を受け継い
だものの、同時に「再チャレンジ」を掲げ、構造改革によって生じた社会の歪みに対しても対応せざるを得なか
った。また、12月には「郵政造反議員」の自民党への復党を認めるなど、徐々に小泉首相との距離を置き始める。
第2は、経済的背景であり、格差の拡大と貧困の増大が明確になってきた。労働分配率は01年度の74.2%か
ら05年度は70.6%に、労働者の賃金も97年度には467万4000円だったサラリーマンの平均年間給与総額は05
年度には436万8000円に8年連続でダウンした。非正規雇用者は3割を超え、日本の労働者(雇用者)の4人に
1人は年収150万円未満、半分は300万円未満となった。
第3は、社会的背景である。構造改革の「負の側面」を示す事象は、社会の様々な面でも明らかになってきた。
06年1月23日には、ライブドアグループの堀江貴文容疑者ら4人が逮捕され、6月5日には、村上ファンドの村
上世彰代表らも逮捕された。規制緩和の下で企業経営者の倫理は低下し、企業犯罪や不祥事が激増した。
そして第4に、国際的背景として、「アメリカ・モデル」に対する疑義と懸念が増大し、「ワシントン・コンセ
ンサス」は中南米やアジアなどで失敗し、イラク政策は破綻した。06年11月の中間選挙で民主党は上下両院で
圧勝し、サブプライムローンの焦げ付きなどでアメリカ経済は失速した。
06年から徐々に進みはじめる小泉構造改革からの反転を生み出した要因としては、マスコミの役割と労働運
動の力である。
第1に、マスコミの役割である。06年.には、貧困化や格差の拡大、ワーキングプアについての報通が相次
ぎ、社会の底辺で生じている大きな変化に光を当てる役割を果たした。7月23日にはテレビがNHKスペシャル
「ワーキングプア」の第一弾を放映し、『朝日新聞』7月31日付は「偽装請負製造業で横行」「実質は派遣、簡
単にクビ」という記事を一面で報じた。9月11日には、『週刊東洋経済』が「日本版ワーキングプア 働いても
貧しい人たち」という特集を組み、橘木俊詔『格差社会一何が問題なのか』が9月に、中野麻美『労働ダンピ
ング』が10月に刊行されている。
第2に、労働運動の力である。労働運動における変化は、非正規労働者によるユニオンの結成、パート労働
者の組織化、ナショナルセンターのレベルでの新たな取り組み、共同の進展などの面で生じた。特にこのなか
でも、非正規労働者のユニオンの結成は06年から目立ち、日本マクドナルドユニオン、日本ケンタッキーフ
ライドチキンユニオン、フルキャストユニオン、「ガテン系連帯」、すき家ユニオン、KDDIエボルバユニオン
などが誕生した。ナショナルセンター・レベルでは、連合は07年に「非正規労働センター」を設立し、全労連
も08年に「非正規雇用労働者全国センター(準備会)」を設立し、非正親労働者に対する取組を本格化させた。
このようにして、06年を転機に、新自由主義政策からの密かな反転が生じた。それは、07年から08年にか
けて様々な分野に波及していく。
第1に、経済財政諮問会議の変容である。05年10月に小泉首相は内閣改造を行い、竹中平蔵経済財政担当
相は総務相へと異動した。これによって司会役だった竹中は一参加者にすぎなくなる。06年秋、安倍晋三内閣
のもとでの経済財政諮問会議では、官および与党内からの猛烈な巻き返しが展開された。
06年の秋、ホワイトカラー・エグゼンプション問題で激しい対立が生じて制度導入に失敗、翌07年1月の
「労働国会」が不発に終わったことの背景には、経済財政諮問会議が変容し、規制破和に向けての指導力が低
下していたという事情があった。
規制改革会議と厚労省との攻防では、規制改革会議の「一部に残存する神話のように、労働者の権利を強め
れば、その労働者の保護が図られるという考え方は間違っている」との主張を盛り込んだ第2次答申が12月
25日に公表されると、わずか3日後に厚労省は「当省の基本的考え方と見解を異にする部分が少なくない」
との反論を明らかにした。その結果、規制改革会議は08年2月に「労働者の保護に必要な法的な手当を行う
べきことは当然である」と釈明せざるを得なくなるのである。
新自由主義的構造改革からの反転は福田内閣の下でさらに強まり、自民党内部の路線上の亀裂も深まって
いく。その後のリーマン・ショックによる国際的な新自由主義の破綻を待つまでもなく、国内政治における
新自由主義路線の行き詰まりと修正はますます明瞭になっていった。
第1に、「骨太の方針2008」では、「構造改革」「民間開放」「労働市場改革」という用語が本文の記述から
消えたが、これまでの「骨太の方針」とは異なるものであり、構造改革路線からの離反を示すものと言える。
第2に、規制改革会議が08年12月22日に第3次答申を出し「真の労働者保護は規制の強化により達成さ
れるものではない」と主張したが、厚労省は12月26日に「規制改革会議『第3次答申』に対する厚生労働
省の考え方」を示して直ちに厳しい批判と反論を行った。
09年1月、第171通常国会代表質問で、自民党の尾辻参院議員会長は「政府の規制改革会議は、派遣労働
の対象業務原則自由化などの答申で、労働者派遣法を変えてきた。経済財政諮問会議は市場原理主義を唱え
てきたが、間違いだったことは世界の不況が証明している。その責任は重い。両会議は廃止すべきだ。」と
迫った。「このごろ、しみじみ思うんだよ。市場原理の経済は良かったのかと。アメリカ式じゃなく、まろや
か、おだやかな世界をつくらないと、東洋的な世界をね。負け組にも入れない国民を生み出す政治はどうに
か直さなきゃいかんと考えているんだよ」これは森喜朗元首相の述懐である。
<『労働再規制―反転の構図を読み解く』(ちくま新書 2008)>
上記の規制改革会議08年12月22日第3次答申をめぐる厚生労働省の対応などは五十嵐氏のちくま新書に
詳細な解説があるがこれ以上は引用のスペースがない。ぜひ一読をお奨めしたい。
2006年12月13日に発足した自民党の雇用・生活調査会の後藤田正純事務局長は「大手企業は『いざなぎ
景気超え』を謳歌しているが、その一方で、生活保護を受けている世帯は一〇〇万世帯を超え、‥‥ワーキ
ングプアの問題は深刻だ。財界は労働市場の一段の流動性が大事で、規制緩和を継続しろと言っているが、
まだ、金儲けが必要なのか。市場万能主義を主張する時期は終わりを告げている」。「これからは党が責任を
持って、規律ある労働市場の創設を働きかけていく」との発言しているがこれは明らかに経済財政諮問会議
に対する反撃の開始宣言といえる。
また 2007年8月の安倍内閣の改造で官房長官に就任した与謝野馨氏は「永田町を含め巷にはびこる『市
場原理主義』的な考えと戦うということを密かに心に決めていた。アメリカ製とされているこうした思想、
それも実はアメリカでも認められていないような思想を、大げさに日本に持ち込む。こういう流れがこの
数年続いていたし、今もそれは残念ながらある。そんな風潮を断固排除してやろう、という決意があった」
(与謝野馨『堂々たる政治』)
この新書には歴史的経過がよくわかる様々な年表も五十嵐氏によって整理されており、より理解を深め
る上でとても参考になることも付記しておきたい。
ところで、最近辛口の主張を8月9日付産経新聞で見た。京都大学教授佐伯啓思氏の「自民・民主の政権
公約で隠されたもの」と題する「正論」である。氏は「これは本来、今回の選挙の大きな争点たるべきもの
だろう。しかも、構造改革のゆがみが、雇用問題や地方の衰退として顕著に現出している、といわれていた
ことを考えれば両党ともが、構造改革の評価についてまったく触れないのは、むしろ異常なことなのでは
なかろうか」。「どうしてそのことが争点にならないのか、私には不思議でならない。構造改革の評価なしに
は、次のステージには移れないのである。この間題を避けて通るのでは、いくらマニフェストなどといって
も体の良い官僚の作文とさして変わるまい」。と指摘するが、やはり日本の政治の方向性を決めるのは投票
する国民の意思であるということを改めて確認したい。
山本正志の課題研究その1
これはある研究会で2007年7月にお話した記録です。
『これからも大きく変わる京都の学校』
〜奇跡と呼ばれた学校(堀川高校)の実践を踏まえて〜
はじめに
今日は「これからも大きく変わる京都の学校」というテーマをいただきましたが、
京都の高校教育について、最初に話題を呼んでいる堀川高校の校長である荒瀬克己
さんの著書『奇跡と呼ばれた学校』の内容を紹介しながらお話をしたいと思っ
ています。
京都市の公立高校である堀川高校が、京大・東大をはじめ関関同立など有名大
学に数多くの進学者を送り出すような変貌を遂げた「堀川の奇跡」ともいえる
状況がここ数年話題になっています。当初、私は堀川高校の奇跡といわれる進
学実績について、市内の良い先生を集め、優秀な子どもたちを集めてスパルタ
的な教育をやれば、それだけの成果が出ても当たり前だと思っていました。
ところがこの本を読む中で、京都市教育委員会の基本姿勢に対する評価も少
し変わるほどの認識を新たにしました。外からは京教組や市教組、市立高教組
と京都市教育委員会が全面対決をしているように見えますが、門川教育長も堀
川高校の荒瀬克己校長は市立高教組の副書記長の経歴を持つ元「組合の闘士」
だったことを認めています。このことを見ても京都市教育委員会と市教組・市
立高教組の関係は表面だけでは理解しきれない部分もあるということを知りま
した。
京都では、「公立はアカン」「公立高校は4年制、公立高校卒業して1年浪
人しないと大学に入学できない」といったことが囁かれていて、「難関大学を
目指すなら私立」という話を私も耳にしていました。しかし堀川高校の改革後、
今春のある新聞に「今春に公立高校を卒業した生徒の大学合格状況では、市立
高校卒業生の国公立大学への現役合格率はは17.8%、府立高校卒業生10.4%で
共に過去最高となった。市立高校全9校の国公立大学の合格者345人の内、京都
大学現役合格者数は堀川高校が35人で最多。嵯峨野17人、西京7人、洛北と桃山
がそれぞれ3人と続いた。卒業生に占める京大合格者の割合は、堀川高校が14.1
%で全国の公立高校で4年連続トップ」という記事が出ていました。
また、京都大学の前期〜高校別合格者数をサンデー毎日が4月下旬号で紹介し
ているのですが、洛南がトップで、東大寺学園や洛星という有名私立学校のラン
ク入りに続いて堀川高校が第10位に入っています。2003年にも「京都市立高校の
普通科でも03年度の大学現役合格実績が過去最高となった。現役合格率は、国公
立大学、私立大学ともに上昇した」と書かれてありました。一方で、京都府立高
校の衰退には歯止めがかからず、こうした事態の中で府立洛北高校での中高一貫
校の再編構想などが急浮上しました。(末尾資料@)
資料 2007年度 京都大学・前期〜高校別合格者数 ベスト15 (●= 私立、 ◎= 国立、 ○= 公立)
-----------------------------------------------------------
順位(昨年) 合格数 現役 現役率 現役合格率 学校名
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1( 2) 98 68 69% 13% ● 洛南
2( 4) 79 60 76% 28% ●東大寺学園→現役合格率NO.1
3( 1) 75 53 71% 17% ● 西大和学園
4( 6) 66 45 68% 20% ● 洛星
5( 5) 62 41 66% 18% ● 大阪星光学院
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6( 3) 57 35 61% 17% ● 甲陽学院
7(11) 46 24 52% 6% ○ 膳所
8( 9) 45 26 57% 7% ○ 奈良
9(14) 43 20 49% 6% ○ 天王寺
10(12) 42 35 83% 14% ○ 堀川
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11(10) 40 21 55% 7% ○ 北野
12( 8) 35 19 54% 6% ● 清風南海
13(19) 34 23 68% 9% ● 高槻
14( 7) 32 18 56% 8% ● 灘
15(16) 31 26 84% 5% ● 四天王寺 → 現役率NO.1
15(16) 31 24 77% 8% ● 智辯和歌山
1.堀川高校の教育
堀川高校の実践をこの本の内容から紹介すると、「いい生徒を集めて、スパ
ルタ教育でやれば進学率があがるということではない」ということが書かれて
います。京都市立高校21世紀構想委員会の答申(1997.12)に基づいて、
堀川高校で校舎全面建替が実施されるとともに、人間探究科(文系)と自然探
究科(理系)という新たな科目が開設されました。(1999.4)
外からの評価としては、「京都市立高校教員は全体で700人いるが、目立って
優秀な人材が堀川高校に集められたわけではなく、何故ここまで変われたのか」
あるいは「堀川高校でやっているシステムをそのまま導入したい」、さらには
「堀川高校は公立だから異動もあるので、今の教員がいなくなれば元に戻って
しまうのではないか」という疑問も出されていましたが、実際にはそうなって
いません。
荒瀬校長は「堀川高校の教育の神髄は二兎を追うことだ」と述べています。
さらに「二兎どころか三兎も四兎も追いなさい」といっていますが、大学受験に
必要な学力を身につけることと、大学入学後の研究に向けた能力や姿勢を養うこ
と、自在に英語を話せること、大学入試の英語を解けること、知識習得型の学習
と課題探究型の学習など、基本的には「よく学び・よく遊ぶ」という高校卒業時
に自立できる青年を育成することを目標にして、「見える力と見えない力」をつ
けるという表現をされています。
そして、「見える、あるいは見えやすい力とは、数値化できる力のこと。つま
り試験で測定できる知識の量的なものであり、見えないあるいは見えにくい力と
は、数値化できない力のこと。例えば、判断力や企画力、実行力や行動力、持続
力、想像力や愛情といった試験では測定しにくいもののこと。見えるものを軽ん
じてはなりませんが、見えないものを大事にする」のが堀川の教育理念であると
言っています。
探究科の授業の進行・管理は、生徒の探究委員会が行うことになっていますが、
正直いって授業の進行と管理をかなりの部分生徒がやっていることに驚きました。
もちろん先生から十分なアドバイスはあるのですが、1年生のクラスを5人ずつの
グループに分けて論文に取り組むのです。その論文の発表は英語でおこない、グ
ループ対抗のディベートもやります。また1年後期にはゼミ選択をして、個人研究
のテーマを決めて2年生で個人研究をまとめるようにしていますが、その際には大
学院生のティーチィング・アシスタント(TA)制度も活用しています。
本の中では「赤土を用いた砒素の除去」というテーマについて、ある女生徒が
研究した事例が紹介されています。バングラデシュの土壌には砒素が溶け出して
いるために地下水が飲めないので、これをどう除去するか問題になっていました
が、砒素と同じリンを赤土が吸収することが分かり、しかも赤土は焼いても砒素
を除去することが可能であることが分かったので赤土を焼くことを考えたのです。
赤土を2時間かけて300度の熱で焼き、その焼いた入れ物で水を透過させると砒素
が除去できるようです。この生徒は、このバングラデシュの土壌汚染の問題に関
心を持っていました。そして、2年生の夏休みの時間を全て使って、1日5時間、
赤土を焼いては壊しての繰り返しで実験を進め、ついにその目的を達成するに至
ったそうです。その後、その研究発表をするとともに、探究基礎委員長として研
究発表するためにアメリカにも渡っています。堀川高校ではこの生徒だけでなく、
色々な研究テーマを自分で決めて打ち込むという取り組みを高校生レベルで行っ
ているのです。生徒たちの研究室として「本能館」(元本能小学校)という拠点
施設がありますが、これも他の公立高校にはない堀川高校独自のものです。
荒瀬校長は「生徒たちが大学を決めるときのポイントは、そこで何が勉強でき
るのかということです。堀川高校には合格することだけを考えている生徒は余り
いません」と強調していますが、東大に進学した生徒が帰ってきて「先生、東大
って堀川と同じことをやってるで」と言ったそうです。人間探究科の中学生に向
けた説明会パンフレットに掲載された生徒からのメッセージをみると、「正直い
って授業がものすごく厳しい。予習・復習をしなかったら授業にはついていけな
いけど楽しい」と書いてあります。その他には「格段にレベルが上がります。特
に探究科は並々ならぬ勉強量ですが、決して損はしないし、そういう気分にもな
りません。むしろ楽しんでやっています」「毎日の予習・復習、宿題が大変です
が、授業は自由に質問ができたり、知らないことが分かったりして面白いです」
といったメッセージが寄せられています。このような声は、探求科の生徒だけが
特別に優秀で頑張っているということではなく、T類・U類の生徒たちもこうい
う感想を寄せています。(末尾資料A)
また、堀川高校は、文部科学省のスーパーサイエンス・ハイスクール指定校に
認定されていて、年間1,500万円(5年間)の予算が支出されています。年間1,500
万円の予算と大学院生のTAが配置されている、研究拠点を独自に持っているとい
うのはかなり恵まれた環境であって、有名私立学校以上の水準を確保していると
いえます。全ての公立高校でこういう教育環境や教育実践が実現できれば誰も文
句は言わないのでしょうが、市立高校全体で見ると堀川はあきらかに恵まれてい
ます。しかし堀川高校のような授業内容についていける生徒が多数であれば良い
のですが、これだけの取り組みをしようとしてもできない状況にある公立立高校
があるのも事実です。
また、多くの中学校の生徒、親、あるいは教師の視点から堀川高校を見た場合
は堀川を希望しても入れない生徒も多く、進路を考える上でどういう評価なので
しょうか。もう1つの問題は、堀川高校の卒業生を受け入れた大学側はどうなの
か、つまり学生がどのように伸びるのか、学業や研究への意欲や進路などに関す
る大学側の追跡の研究があってしかるべきではないかと思います。
さらに京都の私立学校は進学重視の学校も多く、堀川高校に対抗してどう考えて
いるのかという問題も興味があります。こうした問題は私の力量をこえることな
ので皆さんでお考えいただきたいと思っています。
京都市教育委員会は堀川の定時制の廃止を2001年3月に強行しましたが、この
定時制の廃止に関して、私は個人的な因縁もあります。私学に通っていた子ども
が高校3年生の夏になって突然「定時制に行きたい」と言い始めたのです。その
理由を問いただすと「勉強がしたい。あの学校は勉強する学校ではない」と言う
のです。私は退学届けを出して、編入試験を受けさせ、朱雀高校3年に入学する
ことになりました。私は山城高校定時制のPTA役員もやりましたが、当時、府立
と市立の定時制のPTAの連絡協議会の場で、定時制廃止が話題になっていました。
その時、堀川高校定時制の教頭が「定時制があると、夕方5時までの制限がある
ので全日制は思うような教育ができない」といった発言をしました。その話を聞
いた時、私は「この人は教育委員会の手先か」と本当に怒りを感じました。定時
制の教頭が定時制廃止の意見を言うのですから。その後、公立高校定時制が次々
と廃止されていくことになったのです。
2.各都府県の高校教育「改革」について
続いて、各都道府県の高校「改革」の動向について若干お話したいと思います。
大阪では、府立天王寺高校が「進学公立トップ宣言」をしています。新聞紙上で
は「大阪府の天王寺高校が、東大と京大への進学者数を公立高校で全国トップク
ラスに引き上げる目標を掲げて、受験説明会などでPRを始めた。大阪府では4月
から34年ぶりに公立高校の学区が9から4に再編され、より広い地域から生徒を集
められるようになった。同校によると、5学区だった1973年以前には100人以上が
東大と京大に進学していた。しかし、学区増で通学区域が狭くなったことなども
あり、2006年3月の合格者数は39人。岡校長は、「進学実績を強調することに校
内でも議論があったが、経済的に苦しい生徒でも最高学府に進学できる道を保証
することが本校の伝統的な使命である」といいます。(末尾資料B)
この「経済的に苦しい生徒でも」という部分が気にかかりますが、有名大学へ
の進学希望をもつお金がない家庭の子どもたちはどうするのか、公立が優秀な生
徒を集めて有名大学への進学実績を確保する必要があるという主張には一理あっ
て、保護者の立場からすると「うちの子でも医者になれるのか」と思うわけです。
その意味で、教育とは一筋縄ではいかないものだと思いました。
東京でも「都立復権」を掲げて、日比谷や八王子東、国立といった進学重点校
では、難関大学合格者の向上を目的として、土曜授業の展開、補習講習の実施、
難関大学突破を意識した授業などが行われています。指定された学校は軒並み進
学実績を上げており、それまで私立に流れていた層が都立に戻ってくる現象、都
立回帰が起きているほどです。今春、1974年以来33年ぶりに東大合格者数が20人
を超えた名門日比谷高校では、「今年は学区撤廃後の2年目で、全都から受験生
が集まり出した学年です。進学重点校としての改革が実を結びました」(週刊朝
日)」と紹介されています。
学区を広げて優秀な生徒をできるだけ集めて教育すれば、有名大学に多く合格
するということになるわけです。だから今、学区を広げることが共通の「高校教
育改革」の目玉になっています。この点では京都もそういう流れにあって、その
ことは保護者の期待する側面もあり、単純に「高校間格差を広げるから反対」と
いう主張をしても簡単に市民には受け入れられないし、現にそうした大きな運動
がおきているわけでもありません。現場の教職員の悩みもよく分かるし、生徒や
親の気持ちも分かるのですが、教育環境の抜本的改善や学閥社会の是正、卒業後
の職業・生活保障などの社会的問題解決抜きに今の矛盾が解決するわけではあり
ません。
3.階層化日本と教育危機
東大の苅谷剛彦氏が「階層化日本と教育危機」というユニークな本を2001年に
出しています。日教組に対する批判や同和教育に対する批判も書かれてあります
が、階層化が進む日本の現状について「どのような家庭的背景の子どもが学ぶ意
味を見つけにくくしているのか、どのような社会的カテゴリーに属する子どもの
(勉強への)動機づけが弱くなったのかという問題である。ここには教育という
スクリーンに投影された階層化する日本社会の変貌が映し出されている。誰もが
同じように学習の意欲を失っているのではなく、それが特定のカテゴリーの子ど
もに顕著な現象だとすれば、学習意欲の低下は格差の拡大を伴って進んでいるこ
とになる。そうだとすれば、教育の場に現れるこうした『見過ごされた』階層格
差の拡大は、日本社会にいかなる影響を及ぼすのだろうか」と書いています。
さらに「新しい学力観の提唱は、試験で測られる成績のように学業達成のゴー
ルが単純であったものから子どもの意欲・興味・関心、さらには問題発見・問題
解決というふうに、学業達成の意味や評価が評価の基準を以前にも増して複雑か
つ主観的なものへとシフトさせる。このような変化の中で、家庭での文化的な資
源の差が以前よりもものをいうようになる」と予想されるており、「戦後教育の
中で、高度成長の30年間は世代が若くなるほど中学時代の成績は親の職業や学歴
とは別の要因、つまり本人の能力や努力などによって左右される度合いが高まっ
ていく、いわば平等社会というのが生まれた」と戦後教育をふりかえっています。
また苅谷氏は、高知県の例を紹介していますが、これは京都にも当てはまると
ころがあります。「高知県では高校全入をいち早く実現した。中学校はもちろん
高等学校も入学試験はありませんが、ただし私立高校があるために、私立が試験
をやっていい生徒を集めます。だから私立学校はますますいい生徒が集まるが、
地方の学校ではいい生徒が集まらなくて困っている」(『日本の教育』日教組の
教研集会のレポート集より)と1952年頃の高知の問題点を指摘しています。そし
て仮説として、「小学区制が理想視される陰で、高校レベルでの学校選択を許さ
ないこの制度は、いい生徒たちを私立学校へと誘う。さらに、小学区制ほどでは
ないにしても、公立高校の選択の幅を狭める学校群などの総合選抜制度もまた、
その意図とは別に同じような影響力を持っていたと考えることができる。そうだ
とすれば、公立高校間の格差是正策は『思わざる結果』を生み出したのではない
か」というとともに、「公立高校間の格差是正は、結果的にそれぞれの高校内で
の学力格差を拡大した。いい生徒が私立学校に逃げるというブライト・フライト
が生じ、私立学校からの高偏差値大学への進学がより有利になった。その結果、
私立学校への入学機会が社会階層との関係を強めていった」と指摘、ゆとりの問
題に関わっては、「学校が教える勉強量が減った時、どのような階層の子どもが
有利になり、誰が不利になるのか。教科や進路の選択を個人任せにした時、誰が
得をして、誰が損をするのか。家庭での学習時間の階層差が拡大している事実に
照らしても、自由と引き換えに、階層間の教育格差が広がる可能性は否定できな
い」といいます。
この本にはクロス集計なども含めて、きちんとしたデータが出ていますので、
非常に参考になります。たとえば、社会階層グループ別の学校外での学習時間に
ついては(自宅や塾)、下位、中位、上位で1979年と1997年の状況を比較してい
ます。その比較では、上位もかなり減っていますが、下位の階層グループの学校
外での学習時間の減り方のほうがかなり激しくなっています。(末尾資料C)
もう1つは、「落第しない程度の成績を取っていればいいと思う」子どもたちの
割合について、これも1979年と1997年の母親の学歴で見てみると、母親の最終学
歴が中卒である子どもたちは、1997年では「適当に」という子どもたちが全般的
に増えています。しかし、母親が四大卒の家庭は比率が低くほとんど変化があり
ません。こういう階層のグラフが紹介されているのですが、その解決策を苅谷氏
は自らの考えとして示しています。解決策については色々な意見があると思いま
すが、教育に対する分析の見方は有意義なものではないかということです。
特にこれからは、フリーターやパート、派遣の若者が30代40代になって親にな
っていきますが、そういう階層格差の中でこれから10年先、20年先にそうした家
庭の子どもたちの教育がどうなるかという問題は、考慮に値する研究ではないか
と思います。
京都でもある大学が附属小学校を創ったときの個人面談において、「この学校
は所得が1,500万円以下では無理ですよ」という話があったそうです。確かに大学
の附属小学校はいくつもありますが、私立大学の設置した附属小学校のそういう
状況については問題があると思いますが、現にそういう学校を求めている層が今
の社会には存在するのも事実なので、そこのところは教育を問題にするとき、複
雑な要素が絡み合っているのだと思います。
4.京都の高校教育の現場〜階層化する公立高校と現場の苦悩と健闘〜
京都の高校教育の現場でも、大阪や東京と同様の現象が起こっています。山城
地域の高校入試制度は2004年に山城北通学圏と山城南通学圏が統合されて、府立
12の高等学校が単一通学圏の広域学区となって各校単独選抜に変わりました。単
独選抜は校区全体から生徒を集めることができる制度で、優秀な生徒を集めるこ
とや、スポーツの得意な生徒を集めるために学校の特色を出すこともできます。
しかし、生徒のほうでもいわゆる「学校評価」(序列化)に基づく選別の作用が働
き、いわゆる受験校や「底辺校」といった序列化は避けられません。ある学校の
資料ですが、最近の入学してきた1年生が進級の時期になると2〜3割をこえる
生徒が退学・転学(私学への)や原級留置となる数字が報告されています。つま
り、不本意入学や目的を持って高校生活を送ることが困難な生徒が多い高校は入
学当初から大変な状況にあり、地域や家庭の状況から見ても先生たちの努力も限
界です。また遠距離通学で大変時間がかかります。京都市内のように地下鉄やバ
スがあればよいのですが、クラブ活動もしている生徒たちも大変です。どうして
も救えない生徒が出てくると先生たちは嘆いておられます。学校の責任とだけ言
い切れない実態がここにあります。
次に、京都市内と乙訓地域を合わせて、東西南北の4通学圏ありますが、今これ
を2つに統合する検討案が進んでいます。東京や大阪のように広域通学圏から優秀
な生徒を集めて、特別な学校をつくるという方向に京都府教育委員会も京都市教
育委員会も足を踏み出そうとしています。教育行政がこの考え方を持っているの
は確かですが、これは必ずしもいい結果を招かないと思います。
ここでもう一つの実践を見ていただきたいのですが、府立朱雀高校は、京都市
北通学圏6校(朱雀、北嵯峨、嵯峨野、山城、紫野、堀川)の中で、最低ランク
に位置付けられている学校だといわれていました。多くの生徒が朱雀高校に行き
たくない理由としてあげるのは、校舎の老朽化が激しいことや朱雀の教育では大
学進学が出来ないという点です。挙句の果ては、暴走族の巣窟で恐ろしい学校だ
というデタラメな噂まで流布されていました。
しかし、朱雀高校で生徒を伸ばすための教育が行われて、どう変わったかとい
うレポートがあります。私が一番納得したことは、学力をどう伸ばすのかという
ことについて、教職員組合の先生たちが中心になって校内に「学力問題専門部会」
を設置し、真剣な議論をはじめたことです。生徒たちに本当の学力をつけて、大
学に進学させようということで、授業の内容改善や学習プランも立てて生徒にや
る気を起こさせたということです。「朱雀高校の3年間の学習プラン」で、何年で
授業がどうなって、どこからどういう段階でどうなるかというのを生徒に示した
ということです。この本には、朱雀高校の教育実践として、毎年どのような授業
をして、その内容はどうだったのか、その分析がかなり詳しく書かれています。
朱雀の先生の話では、この「学んで、挑んで、未来を拓こう」という学習プラン
の冊子が中学校の間で評判になり、この冊子を通学圏の中学校3年生全員に配っ
ているとのことです。
先生方の授業充実の努力によって生徒は成長していきますが、新入生は入学し
てまず茶髪の高校生にびっくりするのですが、その茶髪の先輩たちが真面目に勉
強をしていることにさらに驚かされるわけです。堀川高校と朱雀高校は上と下の
両極と言われていますが、朱雀高校では先生が頑張って生徒の学力をつけるため
にも、生徒の生活スタイルも変えなければいけないと、「学習と生活と体につい
て」実態調査をおこない、家庭での生活もどう変えるか、生活指導も含めて生徒
たちとの個別の話合いのなかで改善をすすめています。
それからもう1つ、生徒に教職員のアンケートを取って改善を図ったというこ
とです。これは生徒が先生に文句を言うためではなく、どの先生の授業はどのよ
うに変えてほしいかといった具体的問題点を明らかにして、授業に反映するシス
テムを作ったのです。最初は先生たちの中でも「これ以上何をどうせよというの
か」といった反発もあったということですが、進めていく中で生徒にしてみたら
自分たちの主張によって、先生が授業内容や教え方を改善してくれることに生徒
の満足度もあがって、学習に対してすごく積極的になるという変化が生まれた。
そのような取り組みが保護者にも伝わる中で、保護者も家庭での教育を含めて学
校を支えるようになったということです。
朱雀高校生の声を末尾資料Dに上げておきました。「私の周りで朱雀は悪評だ
ったので、最初は嫌でした。でも、今では朱雀で良かったと思えます。先生方は
個性的な方ばかりで、授業も分かり易く楽しいし、他校にない、類型とは関係な
いクラス構成が新鮮で、とても楽しいです。文化祭の模擬店等は先輩たちのがん
ばりで実現したそうで、生徒の意見がすごく反映されているのを実感しました。
他にもいい所は沢山あります!絶対楽しいので、ぜひ朱雀に来てこの楽しさを味
わってください!!」
朱雀高校の卒業式には保護者の方がたくさん参加されるということです。普通
は卒業生が150人だったら保護者も100人から150人程度参加されることになるか
と思いますが、朱雀高校の卒業式には600人以上の保護者の方々が参加されるそ
うです。自分の子どもが学んできた学校を最後に見てみたいと、お父さんお母さ
ん、お祖父ちゃんお祖母ちゃん、さらには兄弟・姉妹まで来るそうです。子ども
が本当に変わったということを実感できるという点で、朱雀高校の先生たちは胸
を張っています。これまで世間の評価では「最低の学校」と言われてきた学校が、
生徒と先生、さらには地域の努力でそこまで変わることが出来たのです。
京都府教育委員会も、そのことについて一定の評価はしているようで、今まで
のように組合員である教員を一方的に移動させるようなことは少なくなり、現場
教職員の努力を認めるようにもなってきています。
5.教育改革をどのように進めるのか
最後に今後の教育改革の問題についてお話したいと思います。広域通学圏で競
争して、私立にも負けない優秀な学校をつくる一方で底辺校ができてしまう仕組
みの問題と、その根底にある家庭階層が全く違うという日本社会の格差拡大の問
題にどう対応するかということを考える必要があります。
その中で、京都市の同和教育は特別な問題があります。私の以前住んでいた家
は東山区の同和校の学区でしたが、夏休みになると小学校の先生が、連日朝9時半
頃から地域の学習センターで同和地区の子どもを集めて勉強を教えていました。
私は「先生、うちの子にも教えてくださいよ。両親共働きで大変なんです」とお
願いすると、「あなたのところは家庭で面倒をみて下さい」といった返答が返っ
てきました。このように、京都では長年にわたって偏向的な同和教育がおこなわ
れています。
また、弥栄中学校の学級編成は、1年生が32人、2年生が34人、3年生が32人と
それぞれの学年で一つだけのクラスで構成されていますが、そこに担任と副担任、
さらには副々担任まで配置されています。しかも実際には34人のクラスが、12人、
11人、11人と3クラスに分けられているという極端な小人数教育を実施しています。
上京区の嘉楽中学でも同様の措置が取られていますが、1人の先生が12人だけを教
えるので、生徒に対して細かな目配りはできますが、一方で生徒数の多い「マンモ
ス校」には定数の範囲内でしか先生が配置されないという問題があります。同和教
育だけでなく、親の生活環境・教育力も地域ごとに違っていて、学校教育はこうし
た条件に大きく左右されます。教育とはどれだけ力を投入しても十分ということは
なく、その意味では「同和校」であるからといった表面的な一面だけを見た議論で
はなく、相当きめ細かな注意と対策が必要であることが分かります。
住民との協同で教育改革をどう進めるかという問題もあります。教職員集団と教
行政はどこまでも対立するというか、溝が埋まらないところがあります。それは、
国の行政が30人学級実現など教育環境整備を放置したままで逆に教員の適格性につ
いて「試験」をするという管理強化を一層強める方向性を打ち出していますが、地
方教育行政が独自性を確立し、学校教育の現場に立って本来の教育のあり方を推進
していく姿勢に立つことができていないからです。
そして私立と公立の矛盾も客観的にあると思います。愛知県は私学の比重が大き
な地域ですが、愛知私教連では地域住民と共同した教育集会など独自の取り組みを
大きな規模で展開しています。私立学校の教育は教育委員会の所管ではないことも
あり、独自性が強調されるのですが、親の願いは「公立か私立か」の選択で微妙な
問題を迫られるのではないでしょうか。
現代社会において、父母や生徒自身の要求、企業社会の要求や派遣やパートなど
非正規労働者の要求の問題など、社会をめぐる様々な問題を一つ一つ解きほぐさな
いと、教育の問題は共通の土台にさえ乗ることができない状況にあります。教職員
と一緒に何かやろうかという保護者の方々にも教研集会などに参加していただくに
は、どうすればいいのか、そういう努力を一つ一つ積み重ねていく以外に問題の解
決はできないし、京都だけでも教育をめぐる問題の解決は出来ません。また公立だ
けで問題が解決できるわけではなく、公立と私立の関係者が色々な形で協同の場を
作ることによって問題の解決を図っていくことができるのではないでしょうか。
今一つ問題なのは、大学の先生方と高校との連携が十分でないことです。大学の
先生といえば修士課程や博士課程を終えた方々なので、落ちこぼれの気持ちなんて
元々分かるはずがないと言ってしまうと言い過ぎかもしれませんが、もっと高校教
育の現場の実態をつかみ、色々な意味での努力をお互いがすることなしに、高校教
育の問題に迫ることはできないと思っています。これからのそれぞれの分野での連
携と討論の場がもたれることを期待して、私からの問題提起をこれで終わらせてい
ただきます。ご清聴ありがとうございました。
資料集
資料@ 2003年度 京都市立高校、普通科でも進学率過去最高―
専門学科の大躍進で賞賛の声が上がった京都市立高校で、普通科でも2003年度の大学現役
合格実績が過去最高となったことがわかった。現役合格率は、左図の通り、国公立大学、
私立大学ともに上昇した。一方、京都府立高校では衰退に歯止めがかからない。
|
公立高校普通科の大学現役合格率(03年度単位%) |
||||
|
|
国公立 |
前年比 |
私立 |
前年比 |
|
市立高普通科 |
15.4 |
+0.6 |
41.5 |
+2.6 |
|
(参考)府立高 |
7.9 |
-0.1 |
37 |
0 |
資料A 堀川高校生からのメッセージ
「人間探究科/自然探究科」説明会2006/8/26 説明会資料より
8期生からのメッセージ ※ このメッセージ文は、入学後1ヶ月ほど経て中学の先生方
に宛てたものです。それぞれの文章末の(A)〜(C)は出身中学の所在地域を表します。
(A)京都市より北の地域(B)京都市(C)京都市より南の地域
1 堀川高校に入学して
☆ 驚いたことは、リーダーとかの係を決める時に何人もの人が立候補したことです。中学
との、自主性や雰囲気の違いを思い知りました。(B)
☆ 正直めっちゃしんどいけど、充実しています。この高校は「自分のことは自分でする」
という方針なので、何かのイベントの予定を立てるのもすべて生徒中心なのが、大変だけ
ど意見を出し合い、協力しあっていろんなことに取り組んでいます。(C)
☆ 一日一日がすごく充実しています。一日にすることがたくさんあって忙しいけれど、一
日を終えたときにはとても達成感があります。(C)
☆ 周りの人がみんな真面目で、テスト、授業などいつも真剣な感じです。でも、花背の宿
泊学習や休み時間などで遊べる時は思いっきり楽しめます。メリハリがついていて過ごしや
すい学校です。(B)
☆ とにかく全員の意識が高いことをとても感じます。休み時間とかはけっこう皆で騒いだ
りもしているのですが、勉強する時は全員がとても集中します。(B)
☆ 楽しいです。特に厳しい校則もなく、とても自由な校風なのですが、別にみんな気がゆ
るんでいるわけでもなく、しっかりと学習しています。(B)
2 高校での勉強は
☆ 格段にレベルが上がります。正直いっぱいいっぱいです。特に探究科は並々ならぬ勉強
量です。でも決して損はしないし、そういう気分にもなりません。むしろ楽しんでやってい
るという感じです。(B)
☆ 内容が難しく、常に考える事を要求され、スピードも速く結構大変です。でも授業の内
容は興味あることばかりで、楽しく授業は受けられます。(C)
☆ 宿題、予習、復習が毎日大変です。でも、授業は自由に質問できたり、知らないことが
わかったりして面白いです。(B)
☆ テストがいっぱいあって、周りのレベルも高いので大変ですが、その分常に高いモチベ
ーションで頑張れます。(B)
☆ とにかく課題が多いです。テストも毎週あるし、一度サボりだすと、大変なことにな
ります。少しずつでも積み重ねることが大切だと思います。(B)
☆ 宿題が多くて大変です。でも自分に生活リズムを調整したらついていけました。進度
も中学校に比べると、かなり速いです。だけど、先生方はみんな熱く教えてくださるので、
わからないこともすぐ解決できます。(B)
3 校舎や設備は
☆ 勉強に関しての設備はほぼそろっているのではないかと思います。パソコンはあらゆ
る場所に設けられているし、図書館の本も多いです。探究の授業で必要になる、普通の
学校にはない専門的な機械までそろっています。校舎もすごくきれいです。(B)
☆ 校舎は学校と思えないほどきれいです。教室には冷暖房が完備されていて、快適です。
毎日通いたくなる学校だと思います。(C)
☆ 生徒全員にメール・アドレスがもらえます。(B)
資料B
大阪府立天王寺高校:「進学公立トップ」宣言 東大・京大へ50人以上、目標に!
大阪府立天王寺高校が、東大と京大への進学者数を公立高校で全国トップクラスに引き
上げる目標を掲げ、受験説明会などでPRを始めた。 近くホームページにも掲載する。
成績優秀な生徒を集めて公立復権につなげるのが狙い。
同府では、4月から34年ぶりに公立高校の学区(通学区域)が「9」から「4」に
再編され、より広い地域から生徒を集められるようになった。同校によると、5学区だ
った1973年以前には、100人以上が東大と京大に進学していた。しかし、学区増
で通学区域が狭くなったことなどもあり、06年3月の合格者は39人。岡校長は「進
学実績を強調することに校内で議論もあったが、経済的に苦しい生徒でも最高学府に進
学できる道を保障することが、本校の伝統的な使命。分かりやすい提示が必要と判断し
た」と話す。毎日新聞 2007年3月17日夕刊
東京都では、「都立復権」を掲げ、都立上位校を「進学重点校」に
日比谷や西、八王子東や国立などの進学重点校では、難関大学合格者の向上が目的であ
り、土曜授業の展開、補習講習の実施、難関大突破を意識した授業などが行われていま
す。指定された学校は軒並み進学実績を上げており、それまで私立に流れていた層が都
立に戻ってくる現象、都立回帰が起きているほどです。
今春、1974年以来33年ぶりに、東大合格者が20人を超えた、名門・日比谷高校では進
学重点校に指定された成果を次のように語っています。
「今年は学区撤廃後の2年目で、全都から受験生が集まり出した学年です。進学重点校
としての改革が実を結びました」 (日比谷高校副校長)2007.3.23 『週刊朝日』より
資料C「階層化に本と教育危機」(苅谷剛彦著)
「新しい学力観」の提唱は、試験で測られる成績のように学業達成のゴールが単純であ
ったものから、子どもの意欲・興味・関心、さらには「問題発見・問題解決」というよ
うに、学業達成の意味や評価の基準を以前にも増して複雑かつ主観的なものへとシフト
させる。このような変化のなかで、家庭での文化的な資源の差が以前よりもものをいう
ようになると予想される
世代が若くなるほど中学時代の成績は親の職業や学歴とはべつの要因(本人の能力や努
力など)によって左右される度合いが高まっていく。
「高知県では中学校はもちろん高等学校も入学試験はありませんが、併し私立学校があ
るために、私立学校が試験をやっていい生徒を集めます。だから私立学校はますますい
い生徒が集まるが、中学校、高等学校の地方の学校ではいい生徒が集まらなくて因って
いる。」(「日本の教育」1952)
小学区制が理想視される陰で、高校レベルでの学校選択を許さないこの制度は、「いい
生徒」たちを私立学校へと誘う。さらに、小学区制ほどではないにしても、公立高校の
選択の幅を狭める学校群などの総合選抜制度もまた、その意図とは別に、同じような影
響力をもっていたと考えることができる。
そうだとすれば、公立高校間の格差是正策は、以下のような「思わざる結果」を生みだ
したのではないか。それを仮説として示しておこう。
@公立高校間の格差是正は、結果的にそれぞれの高校内での学力格差を拡大した。
A「いい生徒」が私立学校に逃げるという「ブライト・フライト」が生じ、私立学校か
らの高偏差値大学への進学がより有利になった。
Bその結果、私立学校への入学機会が、社会階層との関係を強めていった。
母の学歴別 校外学習時間の変化(単位:分) (父の学歴別調査も同傾向を示している) 母の学歴 1979年 1997年 20年間の差 大 学 短大専門学校 高 校 中学校 123.2 124.9 102.6 86.5 106.3 85.4 63.8 27.4 16.9 39.5 38.9 59.1
学校が教える勉強量が減ったとき、ど
のような階層の子どもが有利になり、
だれが不利になるのか。教科や進路の
選択を個人まかせにしたとき、だれが
得をし、だれが損をするのか。家庭で
の学習時間の階層差が拡大している事
実に照らしても、自由と引き換えに、
階層間の教育格差が広がる可能性は否
定できない。
資料D朱雀高校の生徒たちの声(感想文や卒菓文集より)
◆
私は朱雀高校に入って一番驚いていたことは、生徒一人一人がすべての行事において、
一生懸命がんばっていたということです。特に3年の文化祭の演劇の準備の時、一人一
人が自分達の役割をまじめに取り組んでいる姿を見て感心しました。今まで、こんなに
も一人一人が頑張って行事に取り組んでいる姿を見たことがなかったので、この高校に
入ってとても驚きました。
◆ 私の周りで朱雀は悪評だったので、最初は嫌でした。でも、今では朱雀で良かったと
思えます。先生方は個性的な方ばかりで、授業も分かり易く楽しいし、他校にない、類
型とは関係ないクラス構成が新鮮で、とても楽しいです。文化祭の模擬店等は先輩たち
のがんばりで実現したそうで、生徒の意見がすごく反映されているのを実感しました。
他にもいい所は沢山あります!絶対楽しいので、ぜひ朱雀に来てこの楽しさを味わっ
てください!!
◆
夏休みに、先生主導でなく自分たちだけで演劇の練習計画、大道具も自分たち自身
で考えて協力して楽しむ大切さを学びました。学習ももちろんですが、朱雀高校は自ら
考え、行動する大切さを学べる数少ない学校だと思います。
学習に対する生徒の声〔感想文や卒業文集から〕
◆
朱雀という高校は、みんなが楽しんで学校に来ているように見えます。楽しんで来
ると、自然に姿勢が前向きになり、体が多くのものを学ぼう、吸収しようとするよう
になる気がします。そういった意味で、多くの事を学べたと思います。授業を通して
学んだ事はというと、社会に出ていく上で必要になる知識−本当に必要かどうかは社
会に出ていないのでわからないが−を学べたと思います。実験や課外授業も多く、た
だ言葉を聞いて機械的に憶えるのではなく、実際に体感して学ぺたのでその分、自然
に理解でき、体に入っていくように感じました。
◇
朱雀高校の先生方は、皆とても親しみやすくて、困った時は頼りになる方たちばか
りです。そんな先生方の授業は、私たちの印象に残るように、授業にあった楽しい話
もいれながら進めてくれます。私は朱雀高校で、今の仲間と一緒に毎日楽しく学べて
最高だと言い切れます。
◇
私には中学校の頃からずっと苦手としていた教科がありました。だけど、高校で出
会った先生に「テストの点が取れないから苦手で、点さえ取れればその教科を好きと
いう考え方はやめたほうがいい。その教科の本質を見抜け。」と言ってもらいました。
それから、私は、どの教科に対しても先入観をもたず積極的に学んでいこうとしまし
た。 朱雀高校に来て、こんな先生と出会い、朱雀で勉強することができ、本当によ
かったです。みなさんもステキな先生と出会い、存分に学んで下さい。
◆
私は、朱雀高校の授業中にみんながあんまり喋らなくて、寝る人も少ないことに驚
きました。中学の時は、もっと騒がしくて、寝ている人も多く、先生もたまに因って
いたけど、高校になって、先生がとてもきびしいというわけでもないのに、喋ったりす
る人はほとんどいなくて、3年の授業では、私の講座ではほんとに静かで、授業中は喋
る人が全くいなくて、みんな授業に集中し、黒板に書いてあること以外に先生が言わ
れることをメモに取っている人も多く、みんな成長したと思いました。
◇
高校に入り、勉強していく中で、気になる事や疑問などが、私の中で出てきた。こ
れには自分でもびっくりした。まさか、社会の事で興味を持つ事があるとは思わなかった。