間淵領吾の研究業績

概要

著書


『公平感と政治意識』(日本の階層システム:第2巻) 、東京大学出版会、2000年。
第7章:「不公平感が高まる社会状況は何か―公正観と不公平感の歴史」
(1)日本で実施されてきたさまざまな世論調査のなかから、社会的不公平感(現実の社会がどのようなものであるのかという評価)ならびに公正観(望ましい社会とはどのようなものであるべきかという価値観)について、日本人の意識がいかに変化してきたのかを示した。(2)社会的不公平感の推移とマクロな社会状況の変化がどのような関係にあるのかを検討した。


『現代社会学のパースペクティブ』、学文社、2000年。
第7章: 「業績主義は労働者に支持されているのか?―日本的雇用慣行をめぐる労働者意識の変化」
(1)年功賃金制度に対する労働者の意識がどのように変化してきたのかを示した。1970年から1995年までに実施された6つの世論調査の結果を男性について年齢層別に検討した結果、いずれの年齢層でも「年功制は良くない」という意見が増加傾向にあり、同一年齢コウホートに着目しても増加していることを明らかにした。(2)業績主義的処遇が今後さらに進展した場合、どのような問題が生じ得るのかを予測した。業績主義が進展すると不公平感を抱く人が増加すると予測した。(3)不公平感を抱いた労働者がどのような行動を取りうるのかを示した。ここでは、就業継続率ならびに就業継続希望率の低下傾向、労働意欲の低下傾向を示した。(4)予測された問題を回避するために必要となる対策について検討した。一般に業績主義のメリットを強調する論者は多いが、ここでは敢えて、業績主義のデメリットについて検討した。


『ミクロ-マクロ・リンクの社会理論』、新泉社、1998年。
第7章:「複雑かつ不確定な制度的秩序におけるミクロ相互作用とマクロ構造の相互浸透」
独逸におけるNeofunctionalismの推進者の一人と目されているRichard Muenchが、ここで主張しているのは、(1)ミクロな相互作用とマクロな構造のあいだには、相互浸透の関係がある、(2)Talcott Parsonsの行為論は、このことを包括的かつ詳細に理解するための有効な手段となる、というものである。第1点に関して、Muenchは、交換理論・コンフリクト理論・象徴的相互作用理論・エスノメソドロジーは専ら社会を行為者間のミクロな相互作用の産物として捉えているが、それは真理の一面に過ぎない、と主張し、具体例をあげつつ説明している。第2点に関して、Muenchは、交換理論・コンフリクト理論・象徴的相互作用理論・エスノメソドロジーと比較すると、Parsonsの行為論の方が有用である、と考えており、この点の説明を本論文の主たる目的としている。


『地域社会計画の研究』、学文社、1996年。
第2章:「首長の選挙公約と地域計画」
われわれが平成3年−4年に実施した全国調査「社会計画の比較実証的研究」のデータを利用して、全国市区町村長の選挙公約と総合計画の関係を分析し、大都市の首長ほど抽象的な選挙公約を掲げる傾向があること等を明らかにした。
第3章:「地域問題と自治体による対策」
地方自治体の抱える地域問題と対策を分析し、(1)解決困難な問題で最多なのは高齢者問題である点、(2)後継者問題の中心的対策は農村青年の結婚難解消策である点、(3)地域ごとの問題と対策の特徴などを明らかにした。


『地域社会の構造と変容:多摩地域の総合研究』、中央大学出版部、1995年。
第5章「多摩地域の社会計画と住民生活」
われわれが平成3年−4年に実施した全国調査「社会計画の比較実証的研究」の調査結果から多摩地域のデータを抜き出して分析し、従来見られてきた東京都(23特別区)の西郊地域・衛星都市としてではなく、独自の影響力を発揮して活動していく自律した地域圏としての構造と機能を持っていることを明らかにした。(田野崎昭夫と共著)


 

論文



不公平感の趨勢―既存調査の2次分析―
日本で実施されてきたさまざまな世論調査の結果を時系列的に分析し、下記諸点を明らかにした。(1)社会全般に関して不公平感を持つ人は1980年代末に急増し、1990年−1995年は減少傾向にある。(2)「日本社会は不公平だ」というイメージは、景気と相関しており、不公平イメージを持つ人は、好景気だと増加し、不景気だと減少する。(3)男性の場合、利己心が不公平感に影響を及ぼす傾向が見られるのに対し、女性の場合、社会についての情報量が不公平感に影響を及ぼす傾向が見られる。(4)単相関では高学歴層ほど不公平感を持つが、変数をコントロールするとほとんどの領域に関して学歴は関連していない、など。


職業カテゴリーによる日本人の職業の序列付け―「職業に貴賎なし」意識の現在―
1955年・1975年・1995年のSSM(社会階層と社会移動)全国調査の職業威信調査データを利用して、人々の職業に対する評定を「上層ホワイトカラー」「一般ホワイトカラー」「ブルーカラー」「農林水産業」といったカテゴリー毎にまとめて時系列的に比較したところ、職業間に上下の差を認めない人が1975年から1995年にかけて増加傾向にあることを見出した。さらに、1955年から1975年にかけても増加傾向にあったのではないかと推定した。また、上層ホワイトカラーを第1位に評価し、一般ホワイトカラーを第2位、ブルーカラーを第3位、農林水産業を第4位に評価する人は、1975年・1995年ともに1割ほどしかいないことも見出した。


日本人にとって『社会階層』とは何か:自由回答の分析
階層帰属意識について自由回答と選択回答の関係を分析した結果、(1)日本人は、社会階層への帰属感のある人が欧米より少ない、(2)自由回答方式で質問すると階層帰属意識を答えられない人が多い、ということが明らかになった。自由回答方式で答えられない人は、「社会階層」という概念を知らないためであろうと推測した。そのような人も階層帰属意識を答えることができるという意味で、選択回答方式は有効であると結論した。


社会的不公平感の趨勢:世論調査の時系列分析
日本で実施されてきたさまざまな世論調査の結果をを時系列的に分析し、(1)社会全般に関して不公平感を持つ人は1980年代末に急増し、1990年代に入ってから1994年に至るまでは減少傾向にある、(2)公平判断が困難になってきた、(3)領域別に見た不公平感は、1990年代初頭まで増加傾向にあったが、それ以後は減少傾向にある、(4)単相関では高学歴層ほど不公平感を持つが、変数をコントロールするとほとんどの領域に関して学歴は関連していない、などを明らかにした。


全般的不公平感と領域別不公平感
1991年「日本人の公正観」調査のデータを利用して、9種類の領域別不公平感から得られた3因子に対し、利己心仮説と情報量仮説を立てて検証した結果、<経済生活に関する不公平>感と<属性による不公平>感については情報量仮説が生き残った。<地域社会に関する不公平>感については何れも支持されなかった。社会についての情報を与えれば当人の利害にかかわらず社会的不公平の存在を認めることになり、利害関係に妨害されることなく不公平感を解消する可能性があると推論した。


区議会議員の社会・政治意識(2)
東京特別区の区議会議員を対象に意識調査をおこない、(1)特別区の権限委譲(自治権強化)に対する意識、(2)特別区の政策決定に影響を及ぼす機関・集団についての意識,(3)東京一極集中問題に対する意識、を分析した結果,ほとんどの区議が権限拡充を望んでいるが、望ましい分権化のあり方については、所属する区の税収再配分をめぐる利害意識と所属政党の政策理念によって異なることなどを明らかにした。(川崎嘉元と共著)


現代日本における労働者の中心的生活関心
雇用労働者のあいだで会社への帰属意識が希薄化する傾向にあるが、この会社離れ意識が職業意識といかなる関係にあるのかを分析し、会社離れ意識が強い層は、(1)企業内でのキャリア志向の低い層、(2)若年層、(3)労使間コミュニケーションに不満のある層、(4)労働組合内コミュニケーションに不満のある層、(5)労働組合に参加しない層、であることを明らかにした。


組織参加の規定要因について―労働組合員の組合参加データによる分析―
労働組合の組合員の属性、組合員意識、組合参加意欲が組合活動参加度に及ぼす影響を分析し、参加度はもっぱら組合役員経験によって規定されており、組合風土の楽しさや企業内でどのようなキャリアを志向しているのかによっても規定されていることを明らかにした。組合員の参加度を高めようとするならば組織風土を改善することが重要になるであろうという点などを指摘した。


ブレズノ町の事例 V:文化
社会主義体制の変容ならびに崩壊が経済・社会生活に及ぼす影響を明らかにするために、1つの事例としてスロバキア連邦共和国ブレズノ町にて聴き取り調査をおこなった。これは、その文化・教育分野について分担執筆したものである。調査の結果、資本主義化により無償奉仕の精神が薄らぐ傾向や、所有権の移転や業績組織の一部の解体にともなう問題が生じていることを明らかにした。


バンスカー・シティアブニッツア町の事例W:文化
社会主義体制の変容ならびに崩壊が経済・社会生活に及ぼす影響を明らかにするために、1つの事例としてスロバキア連邦共和国バンスカー・シティアブニッツア町にて聴き取り調査をおこなった。これは,その文化・教育分野について分担執筆したものである。調査の結果、以前は共産党による検閲があり、宗教的要素のある民俗的文化活動には制約があったが、社会主義体制の崩壊後はこの種の活動が活発化していることを明らかにした。


2つの組織環境制御モデルについて
組織論には、組織は外部環境を制御できるとする立場を採るものがある。そのような組織論として、戦略的選択モデルと資源依存モデルを比較・検討し、両者のあいだには相補的関係があることを示した。組織の一般理論の構築を目指すには、両者を統合する必要があるが、そのためには組織の内部構造に関する制御可能性を独立変数として導入する必要があることを指摘した。


社会システムの適応概念について
T.パーソンズの社会システム論における適応概念について検討し、パーソンズ自身が主張した適応概念は、その通説として理解されている「受動的適応」概念(すなわち社会システムの構造は環境に従属しているというもの)ではなく、社会システムは環境を制御しうるという側面も持つという「能動的適応」概念を意味していたのではないかと論じ、パーソンズ理論についての従来の解釈を変更する必要がある可能性を指摘した。


組織の『構造慣性』に関する一試論
組織論には、組織は外部環境を制御できないとする立場を採るものがある。そのような組織論として、固体群生態学モデルと構造コンティンジェンシー・モデルを比較・検討し、両者のあいだには相補的関係があることを示した。組織の一般理論の構築を目指すには、両者を統合する必要があるが、そのためには組織の内部構造に関する制御可能性を独立変数として導入する必要があることを指摘した。


自治会成員の欲求充足と資源選好
趣味・文化活動・スポーツ、葬儀の手伝い、地域清掃、防犯・防火活動、公共施設の誘致、市政情報の入手・伝達という6つの領域に関し、自治会成員は、自治会を通じて問題解決を図ろうとするか、個人的に解決しようとするか、などを分析し、所得階層ならびに居住年数によって問題解決の手段についての志向が異なることを明らかにした。住民の自治会離れを防ぐには新旧住民間の障壁を取り除く必要があると結論した。


コンティンジェンシー理論再考―組織の環境概念を中心に(修士論文)
組織論のレビューをおこない、一見多様化している組織論は、組織の外部環境と内部構造に関する理論的前提に着目すると4つのモデル、すなわち固体群生態学モデル、構造コンティンジェンシー・モデル、戦略的選択モデル、資源依存モデルに分類できることを明らかにした。これらを統合し、組織の一般理論を構築するには、組織による外部環境制御可能性ならびに内部構造制御可能性を変数として導入する必要があることを指摘した。

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