ATF・ベルトCVTフルードと添加剤

1.クラッチ材の基本構成
2.基油と添加剤成分
3.添加剤による摩擦係数の変化
4.後からATFに加えるATF添加剤
5.現在のATF規格と試験方法と評価
6.ATFを交換したインプレ(その1)(その2)
7.故障したATFの原因など
8.(資料)車種別のATF+CVTFの適合表
9.CVTF(CVT専用フルード)
10.CVTのオイル劣化により、発進ジャダーが出る場合
エンジンオイルと同様に、ATフルード・CVTフルードもベースオイル+添加剤の組成になっています。
一部の違いを除き、ほとんどエンジンオイルと同じような添加剤が加えられていますが、
エンジンオイルと最も異なるのは、ブローバイガスに曝されないことで、
比較的交換時期が長く取られ、クラッチ(摩擦材)が使用されているという事からも、
「潤滑」と「摩擦」と言う現象をうまくコントロールする必要性があります。
摩擦クラッチは大別して、オイルなどを含んだ環境で使用される湿式クラッチと
大気中の元で使用される乾式クラッチがありますが、自動変速機には多板の湿式クラッチが用いられています。

1.クラッチ材の基本構成

摩擦を発生させるフリクションプレートは一般的にペーパ系湿式摩擦材が付いており、
充填材としてけい藻土を含んだセルロース繊維が基材になり、熱硬化性樹脂(フェノールレジン)でバインドされています。
(ペーパ材と言われる理由はこのセルロース=紙の材料を使用していることによると思われます。)
摩擦調整材としてグラファイト・カシューダスト、補強剤としてアラミド繊維・カーボンファーバーが加えられることもあります。
湿式クラッチではその摩擦係数と滑り速度の関係についての
・垂直荷重
・潤滑油の粘度
・添加剤
・材質
などが影響しているので、それぞれが研究対象となっています。
なおこちらにエンドクラッチの写真があります。

上写真全体図


磨耗した箇所の拡大図

オーバードライブ側のクラッチですが、3枚の湿式クラッチが使用されています。
ATの修理で入庫し、1枚だけがかろうじてペーパー材が残っていました。

2.基油と添加剤成分

ベースオイルは最近では100%合成油を使用する製品も多くなってきていますが、
一般的には原油から精製された鉱物油が主流となっており、部分的に合成油を使用されることもあります。
転がり−すべり接触にあるオイル(油)は、ごく薄い油膜厚さ(数ミクロン)で、圧力も大きいために弾性流体潤滑状態にあり、
粘着弾性物質(あるいはガラス状の物質)のようになっていますので、
片方の回転力などをオイルを挟んでももう一方に伝達できることになります。
粘度的な違いはありますが、ほぼエンジンオイルと同じとみなして良いでしょう。
違いは摩擦力とみなせるせん断抵抗が大きい方が動力伝達に適していると言われます。
また、トラクションオイルは上記影響を強く意識したベースオイル組成となっています。
(もちろん添加剤も変化してきます。)
ハイパーCVT油※1やトロイダルCVT油はそういったトラクションオイルと考え、
また別になりますので一般的なATFとは異なるオイルとされた方がいいでしょう。
※1通常のCVT油はATFと共用されていますのでほぼ同じとわかりやすいのですが
  それでも適合不可で専用油を指定する「ハイパーCVT専用油」があります。
  実はそれでもまだまだ現在のATFに近い作りですので、
  これをATFに変えたからといって即日壊れるといった事は無いと思われますが
  保証がありません。
  製品によって「ATF・CVT共通製品」がありハイパーCVTでも使えますが
  やはり高級品になり値段も多少高めになっています。
  各社のATF間でも摩擦係数や粘度など違っていますので
  入れ替えるとよく分かりますが、
  CVTに目的の異なるATFを入れますとやはり違和感や
  長期使用での耐久性や耐摩耗性が問題となります。
  ATFもCVTFも選ぶ場合はまず使われているATやCVTに適合する製品を選び
  次にフィールを考えてゆく順序をお勧めします。
なお、一般的なATFでは、40度Cでの動粘度は20.8mm2/s、100度Cでの動粘度は4.2mm2/sというあたりが普通のようです。
この基油に下記の添加剤が加えられてATFとなります。
高温でのATの安定した作動のためには製品として(添加剤を加え)動粘度5.5mm2/sぐらいありますと
大排気量車にも良好な状態と言え、ベースオイルの良質な鉱物系精製油とか合成油などであれば更に良いと思われます。
もちろん、どの添加剤一つとっても同じ使用目的でも質の差は大きくありますので、それ以上の高温での使用や
長期安定性の問題はメーカーの意識するところのようです。
(すぐ、劣化してしまうATFもあります。)
  • 摩擦調整材
  •    1.油性向上剤・・・ステアリン酸・オレイン酸アミドなど
  •    2.固体潤滑剤・・・二硫化モリブデン・有機モリブデン化合物など 
  • 酸化防止剤・・・・・・・・・フェノール系(ヒンダードフェノールなど)アミン系(ジアルキルジフェニルアミンなど)
  • 金属系分散剤・・・・・・・Caフェネート・過塩基性Caスルフォネートなど
  • 分散剤・・・・・・・・・・・・アルケニルコハク酸イミドなど(標準型と硫黄含有型)
  • 粘度指数向上剤・・・・ポリメタクリレート・オレフィンコポリマーなど
  • 摩耗防止剤・・・・・・・・リン酸系、リン酸塩系、Zn系(ジンクジチオフォスフェートなど)
  • 基油に含まれる量としては、添加剤により配合量は変わり、添加量の多少の差はありますが、
    全体に占める割合が大体10%−15%になっているように思われます。


    3.添加剤による摩擦係数の変化

    ベースオイルが合成油系の方が低すべり速度領域においては摩擦係数が高く、応答性がよいとされていますが、
    (1・2速など変速時のつながりが早く、高トルクによく対応するため)
    鉱物油主体の基油では添加剤の配合量やクラッチ材の材質により低すべり速度領域・高すべり速度領域によって
    摩擦係数が変化します。
    添加剤がどのように影響するかは添加量や油温やクラッチの面圧にも依りますが、下記のように現れているようです。

    ATFの添加剤の種類
    代表的な添加剤 摩擦係数に関する傾向
    粘度指数向上剤、
    酸化防止剤
    ポリメタクリレート 油温(60度C、100度C)及び面圧(0.5MPa、1MPa)においてほとんど影響しない。

    分散剤
    コハク酸イミド 高すべり速度領域の摩擦係数を高くする。100度C油温での低すべり速度領域の
    摩擦係数を若干下げる分散剤もある。
    金属系清浄剤 Caスルホネート 高すべり速度領域の摩擦係数を高くする。低すべり速度領域の摩擦係数を低くし、高温側で顕著に現れる。
    面圧による差は少ない。
    摩耗防止剤 ジアルキルジチオリン酸亜鉛 低すべり速度領域の摩擦係数を低くし、高温側で顕著に現れる。極性基の違いによりその度合いが異なる。
    摩擦調整剤 二硫化モリブデン 低すべり速度領域の摩擦係数を低くし、高温側で顕著に現れる。極性基の違いによりその度合いが異なる。
    面圧による差は少ない。
    ※硫黄系化合物 高すべり速度領域の摩擦係数を大幅に高くする。
    上記のように試験され、また各添加剤で使用する添加剤の量や成分の違いによっても異なることが分かっております。
    ただ、ユーザーにとって市販されるATFの成分は不明のため、どうしようもないことのようにも思われます。
    添加剤とベースオイルを変えることによって
    ペーパ材の面の摩擦係数も変わるわけですから、例えば大きなトルクを必要とするRV車などは、
    従来のDVよりもT-WやワコーズのハイパーSの方が
    フィール向上すると思われるので、試して見られても良いように思えます。
    また、シフトショックがひどい場合などは作動油としての摺動面の潤滑不良も考えられますので
    ATFというよりNEW−GRPなどのような添加剤を利用する方法も効果的と思えます。
    ただし、どちらにせよ故障を修理するための商品でないため、
    根本的に不具合な症状には解決策とはならないのは、
    エンジンに対するエンジンオイル(漏れ止めを含むオイルと添加剤一般)と同様です。

    ※1通常は硫黄硫黄型コハク酸イミドなども入るがここではジメルカプトチアジアゾール(DMTD)、硫化オレフィン(C16ーS4)など
     

    4.後からATFに加えるATF添加剤
     
    AT自体の変速時のショック緩和のためとか、微少な滑りの発生を抑制するため、
    あるいは異音の緩和のため、さらに全般的フィーリング向上目的などの目的をもって、市販添加剤は販売されています。
    静摩擦係数の大きな基油を主成分としていたり、FM剤・清浄分散剤・酸化防止剤など、高品質タイプの成分が
    添加されていますので、「適量」であれば、ほぼ問題(滑り)が出ないことが普通です。
    つまり後入れのATF添加剤は、元々のATF性能を向上させる目的で添加されることになります。
    変速ショックを小さくするためには元々小さい動摩擦係数を大きくし、元々大きい静摩擦係数を小さくすれば良いということで
    下記5.での動摩擦係数の勾配を小さくすれば良いことになるのですが、
    基油だけではかなり難しい事で、添加剤調合もノウハウ的な要素が強く現れる事になります。

    これは、エンジンオイルに入れる後入れ添加剤とほぼ同じ意味合いでの使用方法と言うことになり、
    場合によっては、機器の性能・製造上の製品のばらつきが関連して、
    うまい具合に、効果を体感できたり、反対に問題点を発生させる現象が発生したり、何も変化がなかったり・・と言う具合に、
    千差万別な現れ方があると言うことに、つながってきます。
    軽微な症状である場合は、その原因が添加剤によって改善され、修復効果のように現れることがありますが、
    基本的には修復剤とはなりません。

    各研究者の方が、そういう問題点について実験されているわけなのですが、
    各ATメーカーは余程問題がない限り、AT自体の機構の改良の方が早いせいか、ATFのグレードは決めていても、
    後から加えられる添加剤についての是非についてはあまり詳しい資料もなく、
    「添加剤は入れるな」を基本としていますし、それも納得できる考え方と思われます。
    この点についてもエンジンオイル添加剤と同様の判断が出来そうです。

    基本的には経験的・実験的な調べ方しかできないと言うような状況ですから、
    AT機構とATFの開発は一緒になされる方法が取られています。

    ですが、メーカー純正のATFを使用していても、何故か、ATが滑ったり、変速しなくなったり・・・と言うような現象は発生しています。
    使用状況によりATFが異常に劣化したため起こる場合もあるようです。
    ATFの交換をこまめにしているからといって、ATの寿命がのびるとも限りません。
    違うメーカーの同一規格品を入れた場合、異音の発生、変速の違和感・・・などが起こることもあります。
    後から加える添加剤にしても、同じメーカーの同じ型式の自動車2台に規定量以上の量を添加した場合、
    一方は明らかに滑ってしまったのに、もう一方は全く滑らなかったと言う事が現実的に起こっているようです。
    元々のATの性能向上のために入れる添加剤のはずなのですが、
    かえって「不具合」=滑り発生・シフトフィーリング悪化現象が発生することもあります。
    自動車によって、AT自体の構造が違うこともあり、
    必ずそういった問題が引き起こされる可能性を含む商品も少なからず見受けられ、
    エンジン以上に微妙なバランスで成り立っているATF・ATF添加剤の使用は、特に注意が必要なようです。
    5.現在のATF規格と試験方法と評価
    現在、デキシロンVタイプがほとんどですが、その規格の承認油として各社オリジナルのATFが商品化されています。
    通常一般に交換されているものは「デキシロンV−F」が多いようです。
    また新たな規格も加わってきています。
    WAKO’Sなどでは「T−V」があり、トヨタでも「T−W」などを開発していますが、
    この「T−V」「T−W」は簡単に考えて、「デキシロンVG」という規格にあたり、
    この「デキシロンV−G」は今までの「デキシロンV」に「剪断安定性」をいれて評価した規格ですから、
    「デキシロンV−G」「T−V」「T−W」などの製品は耐久性が非常に優れたATFといえます。
    ※規格としては
      1997年8月にGMのそれまでの規格「デキシロンV−F」から、
     新しいこの規格=「デキシロンV−G」に移行して現在に及んでいますが
     デキシロンはGM社の規格承認のための呼び方で、別にフォード社の規格は現在「マーコン・M」となっています。
     両方の規格承認があるタイプが「マルチタイプ」というわけですが、通常は「デキシロン」の方で呼ばれることが
     多いようです。
     日本の規格は下記記載の「JASO 1A」で、この規格が入っている方が日本車には良いかもしれません。
     なお現在、国産のAT、CVT生産はメーカー製以外では3社で
     アイシンAW(トヨタ、スズキ、三菱、マツダ、ダイハツなどへATとCVTを供給)
     ジャトコ・トランステクノロジー(日産、スズキ、三菱、マツダ、スバルなどへATとCVTを供給)
     愛知機器(スズキ、ダイハツなどへ供給、CVTを供給)
     となっており
     自社製品だけを使用しているのがホンダ車(=ですからATFは専用対応油の方が良いでしょう)。
     外注品と自社製も併せて使用しているのはトヨタ、マツダ、ダイハツ、スバル、
     すべて外注品は日産、スズキ、三菱(内部部門を分離後)となっています。
     (分離前の三菱製のATもホンダ車と同様に使用するATFとの相性は注意が必要かも)
     アメリカをはじめ海外のメーカにも日本のATは使用されておりますので
     日本の「JASO 1A」というATF規格としてはある程度世界共通の規格となってゆくと思えるのですが
     「承認」制度はどうも違う面で出てくるように思えます。
     なお、最新規格は「デキシロンV−H」ですが、日本での市販は2005年となるようです。
    デキシロンIII−Hの試験項目として追加内容:
  • 低速域における耐摩耗試験の導入(ECCC電子制御コンバータクラッチ)
  • 空気混入試験の導入(エアーエントレインメント試験)
  • 酸化テスト(4L60 THOT)を300時間から450時間へ
  • 変速プレートの耐摩耗試験(3T40)を100時間から150時間ヘ
  • また、剪断安定性を考えますと、100%合成油(=基油はPAO)が条件として優れた性能を持っています。
    粘度指数的にも鉱物油のニュートラルオイル(添加剤を含まない精製油)は100あたりですし、
    一方PAOなどは140ありますので、ATFの粘度指数175−200に粘度をあげるには
    添加剤(粘度指数向上剤)を多く入れなければならないので、剪断安定性に強いタイプの(いわゆる高価な)向上剤を
    選ばねばならず、それでもいわゆるポリマーですから、剪断されて、高温時に粘度低下が起こってゆきます。
    この高温時の粘度低下がどうしていけないかと言いますと、
    ATFは基本的には「作動油」ですし、油圧機器によってATが構成されている以上、油圧によって作動する事に依ります。
    大体ATの油圧機器は油温が高くなりますと粘度が下がりすぎて機器の隙間から漏れてしまい、
    圧力が抜けてしまうことになり正確な作動が望めなくなってきます。
    (エンジンでのブローバイと言う感じです。粘度があれば隙間から漏れにくく、
    圧力を一定に保持したり、正確に力を伝えたり出来ます。)
    場合・場所によっては140度Cにも油温が上がりますし、剪断が進行してしまえば、高温粘度が不足状況に陥ります。
    もう一つは摩擦調整剤の劣化となりますが、
    これらはATF交換で元に戻るATFの一つの劣化現象で、
    エンジンストールテストを長く行ったり、夏の渋滞路、登坂路など高温高出力下で起こりやすいようです。
    症状としてはある程度走行して変速ショックなどが出やすくなったり、すべるようなタイムラグが発生する場合など
    ATF交換した方が良いという事になります。
    剪断安定性の回復や、劣化してしまった添加剤の入れ替えを、ATF交換でするわけです。
    油温100度で5.5cStほどあれば十分な性能を持つATFと言えますが、
    調べる事など研究所でしか出来ませんので、残念ながら、予防整備的なメンテナンスとなりそうです。
    ただ、鉱物油と比較してみると不純物の無い合成油のPAOは摩擦係数が高くなりますので、車種によっては
    変速ショックのような感じになって現れる事があるようです。
    不都合な点は添加剤、特に摩擦調整剤でカバーしているようです。
    で、一般的には高品質なATFはどちらかと言いますと、同じような傾向が見られるようです。
    静摩擦係数が他と比較して高い場合は、トルク伝達がよくなるため発進時・加速時のつながりがよくなります。
    動摩擦係数では高い場合が変速時のトルクが大きくなるわけですから変速時間が短くなります。
    最終動摩擦係数が高すぎますとシフトアップ時にノイズが発生したりし、
    上記の試験結果から総合的によりよい作動性を求めて開発されることになります。
    なおJASOからの要請(?)もあって、国産車にはDV以外の基準でATFを作るよう求められ
    現在ではATFの国産車基準規格「JASO 1A」のATFがありますが
    これはDV規格の外国車には適合しなくなっているようです。
    ATFの粘度などの性状に関してはSAE粘度分類の方に記載しております。
    現在、機構や作動油としてのせん断安定性の問題と摩擦の出方の違い=摩擦特性(摩擦係数の違いではない)の問題で
    下記のように分かれていることになります。
    ・トロイダルCVT油(トラクションフルード、KTF−1)
    ・ハイパーCVT油などの専用CVT油(トヨタTC、日産D、NS−1、スバルE&iCVTフルードなど)
    ・ホンダ&三菱系CVT・AT油(ATFUZ−1、SP V)
    ・ロックアップ付き車両用AT油(T-W、D、M-V、スバルATF、アミックスD-Vなど)
    ・マーコンを除く上記以外のATF油(DV・DUなど)
    ・その他メーカー指定油(タイプF指定車、ナビ5、乾式CVT油など複数)
    6.ATFを交換したインプレ(その1)
    静摩擦係数と動摩擦係数両方共に高く、変速時間が短いタイプのATFはベースオイルの品質が高く、
    合成油系など高級ATFとしてチューン用などとしても販売されています。
    それらは一般的な鉱物系の最新グレードD−V(G)と同じ規格品なのですが、変速時のシフトフィールがよく、
    高荷重車に用いられることが多く、高温での作動安定性に優れるとされています。
    最近は新車の工場充填オイルとしても入れられるようになり、耐久性の高さから
    交換不要という傾向が強くなってきています。

    で、そういったタイプのATFと通常交換用に使用されている汎用タイプと、どれくらい違うか比較してみました。
    使用車種は例によってH4式日産ローレルHC33−5AT、走行81000km(括弧内132000km時)と、
    同じくH4式日産セレナSR20DE、走行171000kmで、あくまでも主観的な判断によります。
    通常の使用中の汎用ATFから高級ATFへ交換後の体感の変化でしか評価できませんので、
    使用年数によるATF劣化も加わってきます。
    なお、オイルは全量抜き替え圧送式のライン抜きで、各々9L使用。

    粘度 汎用タイプより、高級な新油の方が常温では柔らかくかんじる。とはいえ常温では見た目でどちらが粘度が
    高いか判断は難しいように思えます。
    (同じ)
    交換前のATFの汚れ 着色料が判断できる(赤ワイン色)。やや黒っぽくなっているが、痛んでいるという感じは受けない
    ローレルでは約2万キロ使用後。セレナでは5万キロ使用後。
    (倍以上=5万km走行したが、汚れはさほど気にならない)
    低速でのシフトショック 元々ほとんど感じていなかったが、ATF交換後、ローレルではかすかにショックが強く感じるように変化。
    100km走行後には、ショックが軽減された。セレナでは変化を感じず。また、タイムラグはほとんど感じられない。使用するにつれ、ショックの体感的大きさが下がり、シフトの感じが心地良く感じる。
    (きびきびとしたつながりだが、ショックは交換前よりも多少感じる)
    高回転でのシフトショック 変化がほとんどわからず。シフト時の切り替わり時間が心持ち長くなったように感じる。
    ただ、ショック自体はほとんど感じない。
    (つながりにダイレクト感が出ている。まれにあった違和感のあるショックは解消)
    始動→1・2速のフィーリング 問題なし。エンジンが軽くなったような感覚。ダイレクト感が増した様に感じる。
    (同じ)
    3速以上のフィーリング 同上に加え、レスポンスが良くなったように感じる。軽やかさが印象的。
    (同じ)
    総合評価 古いATFと同じATFに交換した場合は、さほど大きな差を感じなかったため、
    多分、ATFの劣化はそれほどひどくなかったのでしょう。
    (きびきび感が随分改善されたのはオイルの劣化に依るのか、製品の性能に依るのか
    はっきりと違いを感じる事が出来たので、交換の値打ちはありそう。
    フィール自体は交換前の方が好きだが、妙なショックが出ることがあるので必要なメンテナンスと
    思われる。フィールはある程度添加剤でも変化させることが可能なので
    しばらく走行して慣れなければ添加を考えたい)
    今回はATFも異なるため違いが体感できた気がします。
    新旧大きな違いは、粘度によるのか、摩擦係数そのものの違いによる物なのか、その他なのか、
    始動時からATのシフトフィーリングが、温度が上がってからも同じようになめらかに感じたため、
    質的なレベルで良くなったと感じられたことです。
    変速のタイムラグも僅かに短く(早く)なったように感じられ、変速時の状態が伝わってきますので
    変速が分かりやすく上品な走りになったような気がします。
    特に感じた変化はエンジンが軽くなったようなフィーリングで、ダイレクト感が加わって、
    ATFの品質の差を感じられる気がします。交換する値段は、通常のATFの倍はしますので
    頻繁にはできませんが、ATFで差を感じるには、これくらいの品質差が必要なのかもしれません。
    オイルメーカーとしては新車充填オイルとして使用されることで、こういった高品質オイルを研究しているのですが、
    そうでないマイナーなメーカーが高級ATFを開発することは採算上、難しいので、ほとんどOEMとなってしまっているようです。
    高品質ATFが新車から使用されるようになってきますと、ATF交換が不要となってきそうな傾向があるようですね。


    6.ATFを交換したインプレ(その2)・・・同時に添加剤のテスト
     

    ATが既に滑っているけれども、一応は走行可能な自動車で、ATF交換前後の変化をみました。
    同時に添加剤を添加したフィールの違いを調べました。

    走行距離は122077kmのH9式ミニキャブで、
    ストールテストをすると、エンジンは上限無く回転してしまいそうなわけで
    クラッチの滑りがあると判断できる状態です。
    発進時はCVTのように回転数がある程度無いと動き出してくれません。
    ただし、全く動かないわけではなく、平坦なら無理矢理そこそこスピードも出る状態です。

    まずATFの油量を確認しました。
    規定油量レベル内でしたが、
    ATFは多少焦げたような臭いで、
    ATFの色はちょうど1−2万km走行したエンジンオイルのような汚れた茶褐色で、
    全く透明度は無し。
    私的な推測では多分一度もATFが交換されていないと考えられます。
    またATF点検用のディップスティックは後部席からネジを外さなければ油量も確認出来ない為、
    確認も車検毎にされていたかどうかも判らない状況でした。
    (ネジを外した痕跡が殆ど無いため)

    で、次にラインの循環しているホースから油圧でATFを全量交換します。
    ライン内のATFが通常の赤みがかってくるまで新しい100%合成油のATFを入れ替えるまでに
    7Lほど使いました。
    通常なら5Lから6L程度で、結構綺麗になりますから、かなり汚れていると言えます。
    これで、ATFはすべて新油に交換されました。
    ディップスティックで確認しますと、ちゃんと赤い透明な色になっています。

    過走行車のATF交換は通常交換後「すべり」を懸念され、断られるケースが多いのですが、
    実際にそれが原因で滑ったケースは一度も経験しておりません。

    まあ過走行ですから、交換で配管内のゴミが剥がれて故障の原因になったり、
    あるいは運悪くちょうど滑る時期に重なったり
    すでに滑りの症状が「出ている」ので、改善するかな?と言う願いで交換される場合もありますが
    ATF交換が十分な原因で故障とまでになるケースは殆ど聞いたこともありません。
    どちらかと言いますと「フィール」的な問題が主となるようです。
    (ジャダー、変速ショック、変速時のタイムラグなど)

    配管内のゴミが
    運良く添加剤などで取れ、正常に作動するようになったり、
    痩せたシールを膨潤する事で、油圧が正常に戻ったりするケースもありますが
    本当に運の良い「まれ」なケースとも思われます。

    ではでは、
    すでに滑っているATがオートマチックのオイル交換ですぐに滑るかの検証ですが、
    今回の場合は、交換しましたら、逆に、
    初期の動きだしがスムーズになり、力強くなりました。
    普通、交換後に皆さんが言われる「走りが機敏になった」という感じです。
    もちろん、ストールテストすれば滑りの症状は残念ですが変わらないのですが、
    交換前よりは軽く始動(動き出す)ようになりました。

    念のため、油温の違いも滑りに関係することが多いので
    十分油温が上がるまで、敷地内でDとRで動かしましたが、
    油温の変化での結果は、
    「若干動き出しの力が落ちたかな」という程度で
    フィールはATF交換後の方が確かに向上していました。

    で、次は添加剤の添加での変化です。
    1つは手持ちのウインズ社製の「AT&PS」という「ATF系の漏れ止め剤」なのですが、
    通常、漏れ止め剤系は滑り気味のATや動きだしがもたつくようなATに改善効果が見られる傾向がありまして、
    変速ショックが出る場合は、逆に変化がないか、もっと大きくなるなど逆効果になる事も起こってきます。

    もちろんそんなに簡単にそれらが直る訳ではありませんので
    もし改善されたらラッキー程度とするのが良いでしょう。
    本来の目的の軽い漏れ止め効果もひいき目に見て大体50%ぐらいは期待できそうです。
    軽い漏れは直っても完全に直るまでには至らず、多少の滲みが残る場合も多々あります。

    また、GRPなどのような潤滑効果の高い添加剤は、
    滑り気味のATや動きだしが「もたつく」ATにはあまり効果が期待できず、
    逆に悪くなることもありませんが、殆ど改善されることは少ないと言えます。
    場合によって改善される事もありましたが、
    漏れ止め剤系と逆の効果で
    変速ショックが強い場合などにはかなり改善効果を持つと思われ
    実際にテストしたユーザーさんもフィールもショック緩和に効果的との報告が圧倒的です。

    もちろん、どちらにしても、改善・緩和効果でフィール的な変化しか無い場合もありますので
    既に相当悪くなっていいる状態に対しての修復材としては過度の期待は禁物でしょう。

    で、先に「AT&PS」を150cc添加。
    思った通り、更にクラッチの「食いつき」感が増したように感じました。
    加速も多少なめらかかもしれません。
    油温を上げて動かしても、それによる落ち込みは少ない感じです。

    次に「NEW-GRP」をその上から追加で100cc添加。
    ATから出ていた僅かな「異音」がクリアーに聞こえ、
    ATの回転か軽やかになったと感じました。
    でも、逆に始動のフィールはもたつきが温間時程度に元に戻ったようになり
    漏れ止め剤で良くなった分の食いつき感が多少悪くなったように感じます。

    当たり前でしょうが
    実際に滑っているATにはこういった潤滑系の添加は良くないと思われます。

    その後、かなり強烈にストールテストもしましたが、
    ペーパー剤がどこか一面全面に無ければ、金属同士が直接摺動する事になりますので
    GRPなら即効で滑る可能性が高いはずなのですが、
    これも予想とは逆に
    始動に大きな変化はありませんでした。
    まだ若干ペーパー材が残っているのではないかと思われます。

    で、その後も2−3日は始動確認しましたが、
    ATFを全量抜き変えても、
    添加剤が両方入れている状態でも、
    それでも最初の交換する前よりは遙かに良い繋がり状態になっています。
    ただし、本格的に滑るのはやはり時間の問題と思われます。

    こういった経緯から見てゆきますと
    今は、予算が無く、後僅かでも走ってくれれば、ATの修理が出来るとか
    (どちらにしてもATは分解修理というより、リビルトのATごと全体の交換ですし)
    またあるいはしばらくして廃車する予定というような自動車には
    添加剤も試してみても良いかもしれません。
    もちろん車体が動かないような状態では無駄になる可能性が高いですから
    やめた方が良いでしょう。

    上記の自動車は繋がり具合からみて、
    通常の一般道の40−50km走行程度ならまず可能でしょうし
    貨物ですから坂道で荷物が多くなければ登坂も大丈夫かもしれませんが
    逆に、何時完全に滑ってしまうかも判らない状態です。

    添加剤は修復材ではありませんから、
    こういった故障してしまった場合は
    現状維持をどこまで延ばせるかだけです。

    できるだけ長く乗れるように
    故障原因を作らないようなメンテナンスに添加剤の役割がありますので
    そういった使用目的で是非添加剤はご利用ください。


    7.故障したATFの原因など

    ATの修理は高額となるため、おかしな添加剤添加や指定外の入れ替え用ATFでの交換をクレーム対象外としているメーカーが
    ほとんどですが、実際のクレームでは、組み立て時のミスや油圧装置やセンサー系のトラブルが多く見受けられるようです。
    なお、合成油ベースあるいは高品質鉱物油ベースのATFが新車から充填されている場合、市販の汎用ATFに交換されますと
    ATFの静摩擦係数と動摩擦係数の低下により高負荷・高温時にフィーリング劣化(滑りや変速ショックなど)、が生じることもあるようです。
    一般的に言えば性能的に下位へは変更されない方がいいと思われます。
    なお、ATFのオイルパンには「磁石が取り付けられている場合が多くあり
    (コイン状の磁石が3個ある写真)、
    ギアなどから出る摩耗した金属をくっつけるようにしています。
    もっと積極的にはオイルパンのバルブボディのフィルターだけではなく
    ATF専用の交換用カートリッジ式オイルフィルターも取り付けられている事が多くなってきています。

    例:ATの故障で原因を見ようと分解した写真ですがクラッチのすべりは無いのですが、見事にギアが壊れています。

    パーツの全体図

    壊れたサンギア/遊星ギア部

    故障した時の状況は聞いておりませんが、最初ドライブシャフトかホイールのセンターベアリングが異音を発生しているのだろうと
    そのあたりを点検されたようです。
    ペーパー材はまだ残っているので、通常すべりが発生するはずはないのですが、ギアがロックしてはどうしようもありませんね。

    例:キックダウンブレーキバンドの金具が疲労により切断した図。

    バルブボディを外した図

    (拡大図=壊れた部分)

    取れたブレーキバンド
    メーカーでも滅多に見ることが無い症例のようです。
    ODをOFFしますと、通常の走行が出来るため、加えて、自己診断でもODの同期不良とでた為、
    まずエンドクラッチと早合点し(通常はそう判断します)、交換したが、改善されず。
    その後、PC側のエラーかあるいはバルブボディの中のODの部分が作動不良と判断し、交換しようとしたところ
    ポロリとバンドの端部の鉄板が落ちてきて、原因が判明。
    実際は4速だけでなく2速でも作動するはずなので、2速でのすべりが無かった理由が不明。
    ブレーキバンド単体の交換が出来ない為、AT自体を丸ごと交換となってしまった。

    例:

    8.ATFの適合表

    各メーカーから資料として適合表が出ているので
    自分の使用する車種と合っているかを確認して、交換してください。
    カストロールのATF
    ワコーズのATF
    モチュールのATF
    スノコのATFとCVT専用油の適合表

    9.CVTF(CVT専用フルード)
     

    今後とも使用するATやCVTに適合した製品がオイルメーカーから
    販売されてくるものと思われますが
    最新のCVTにも対応するために、摩擦係数を向上させ、金属ベルトの摩耗を防止するために
    自動車製造メーカー以外からも専用のCVTフルードが販売されています。
    対応商品のベースオイルは部分合成油となっていますが、ATFとして兼用できるタイプと
    兼用不可の全く「CVT専用油」となっている製品に分かれていますので
    使用車種に適合するか、商品の説明書をよく読む必要があります。
    当方で使用しているCVTFはワコーズのハイパーS、スノコのCVT専用油です。

    ハイパーSはATFとの兼用が出来ますが
    スノコのウルトラシンセティックCVTFは基本的にはATFとして使用できず、
    トヨタ、日産、スズキ、スバル、フィアット用の特定CVT油となります。
    ですから色も間違えないように「グリーン」で着色されています。

    鉱物油系ではPOLOのCVTFが価格も抑えられており優秀です。

    なお部分合成油系のワコーズハイパーSとスノコCVTFと
    鉱物油系のポロCVTFの代表性状を記載しておきます。

    ウルトラシンセCVTF ワコーズハイパーS
    ポロ CVTF
    (トヨタおよびホンダ用)
    粘度指数(VI) 189 171 160
    動粘度・・・40度c 33 39.00 39.9
      ” ・・・100度c 7.683 7.5
    流動点 −55.0度c −52.5度c −42.7
    色相 グリーン レッド レッド
    一般的な価格(1L)2007年 1500円前後 2000円前後 1000円前後

    10.CVTオイル(フルード)の劣化により発進ジャダーが出た場合のCVTF交換の要領
     

    CVTF(CVTオイル)が劣化して、発進時に引っかかるような挙動があってからクラッチが繋がる場合は、
    クラッチ面に付いた劣化物を取り除くことで、改善されることが出来ます。
    取り除く方法としては
    走行距離にも因りますが、通常はブレーキをしっかり踏んだ状態でアクセルを踏んでも
    車体が動かないことを確認し、
    クラッチをフェードさせるような状況のストールテストを行います。

    最初はCVTFを確認し余程CVTFが悪くないなら、
    そのままストールテストを何回か行ってから
    CVTFを全量抜き替えます。
    この作業ではCVTF自体もかなり熱を持ちますので、
    交換時はやけどをしないように
    注意してください。

    全量抜き替えてから、もう一度同じようにストールテストを行います。
    この時点でほとんどの場合は発進ジャダーが治まっているはずです。

    もう一度抜き替えて完了です。
    それでも変化がなく、相変わらず、ジャダーがひどく出るようでしたら
    AT自体をオーバーホールしないと直らないかもしれません。

    上記はホンダ車の作業例で、車種としてはモビリオとフィットに起きる現象ですが
    他メーカーでも同じように出来ると思いますので
    ディーラーに作業方法を確認した上で
    (場合によっては保証範囲の修理として無料で作業してもらえますから)
    お試しください。
     


    工事中



    <参考資料:「トライボロジスト」Vol.45/No.5/2000>
    <参考資料:「トライボロジスト」Vol.52/No.12/2007>
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