最終更新2015_05_12工事中

オイルの粘度指数向上剤

一般的にオイルの粘度と温度の関係は粘度指数(Viscosity Index Improvers=VI)で表されます。
他のページでもこの数値は出てきますが、このVIは高い程、温度上昇によっても粘度変化が少ない(=オイル膜圧がある) と言え、
この添加剤を用いることで、広い範囲の温度でオイルが使用できるし、値段的にも安いというメリットがあります。
粘度指数向上剤は一般的に、分子量10000以上の油溶性のポリマーです。
ポリアルキルメタクリレート(PAM)、ポリイソブチレン、 オレフィン共重合体(OCP)などが代表的です。
高温で油膜が薄くなるとどうなるかと言いますと
金属同士は擦れ合う=摩耗、発熱、摩擦抵抗が起こり、燃異が悪くなるばかりか
オイルの無くなったエンジンを考えれば分かるように、いずれエンジンが壊れてしまいます。
このために、高温になる内燃機関のピストンなどの潤滑には
油膜が必要と考えるわけです。
そのため、高温で薄くなって行く油膜をどうにか厚くするために
いろいろな方法を取るわけです。
元もとから硬いオイルを使うと低温時には硬くてエンジンも回り難くなります。
逆に始動時の低温時を基準としますと、高温では油膜切れも起きやすくなります。
昔のオイルが「夏用・冬用」と分けて使われていた理由がここにあります。
もちろん、シリンダー部で摩耗・摩擦が起きなければ、
内燃機関の燃焼熱の排出の問題・気密性などを除けば
油膜は必要では無いとも考えられます。
ただ、今のところ、そのような都合の良い動部の材料は
添加剤やコーティング膜などで減らす事は可能ですが
一般的に取られる方法は
油膜の状態を管理する事=粘度指数向上の方に重点が置かれています。
なお、PAM、COPなど粘度指数向上剤は、同時に、流動点降下剤(パラフィンワックス結晶形状の抑制機能)をもっています。
また、星形ポリマー(ポリビニルベンゼンの核から多数のポリイソプレンの足が放射状に延びた構造)や、
アルファオレフィンとジカルボン酸共重合体のブタノールエステルポリマーもあります。

 こういった成分は低温では糸をコイル状に巻いたように丸まっています。
そのため添加剤の粘度は ベースオイルとほとんど変わりませんが、
(=抵抗があまり増えない)
温度が上がるとベースオイルは粘度が下がりますが、そういった場合に
そのポリマーは糸がほどけて伸び広がり(膨潤化)、
粘度が下がったベースオイルをくっつけますので、全体としては 粘度の変化がそれほど極端に低下しません。
温度による粘度変化が少ない程良いオイル(=高VI)と言うわけで、
高温でも油膜を金属同士が接触しないよう基準以上に保つ事で
金属摩耗と動摩擦による発熱・気密性の低下を避けられるわけです。

 ただ、ポリマーということは、強い剪断力(=物理的剪断)に対しては弱くなり、
ポリマーの鎖が切れて低分子量化しますので、
粘度低下を招くことがあります。
(反面、高温で分解する官能基を導入し、その導入量を調整することによって、中温域での酸化安定性を低下させずに
高温でのデポジット生成量を低減することが見出されています。)
また高温下ではポリマーの糸まりが剪断を受ける方向に配向しますので、
増粘効果も低下します。(=川底の水草が川に流れに沿って配列しているような感じ)
この点からポリマーの分子構造と剪断安定性の関係が重要となります。

 激しいエンジンの回転数ではこういったポリマーの剪断劣化は早く起こるため、
最近は いいベースオイルの使用が基本となっているようです。
ただし実際はどんなオイルにも こういったポリマーは大なり小なり添加されています。
油温と粘度の関係が密接なため
低温から高温までの広い範囲で使用されるエンジンオイルには
マルチグレード化の方が大切なためです。

マルチグレードのエンジンオイルが現在は一般的ですが、
「低粘度ベースオイル+ポリマー」と言う形は「省燃費性」には効果的ですが、
上記の説明から
高温時に高剪断を受ける「軸受けメタル」には過酷となります。
 

低温の流動性を考えて冬用に「w」で表される数字が小さいものが増えてきましたが、
そういったオイルを夏期に使用する場合、
HTHS(High Temperature High Shear)=高温高剪断粘度の規格が導入されていますので
参考にされるといいでしょう。
150度Cに保たれた油温にてテーパー付きステータに入れられたローターを回転させるのに
どの位のトルクが必要かを測定するものですが、
標準試験油との比較で粘度を求めます。
HTHS粘度とメタル軸受けとの間にはその摩耗量が相関関係にあり、
つまりHTHS粘度が高いほど軸受けメタルの摩耗量が少ないと言うことになります。
HTHS粘度3.0と4.0の比較ではその摩耗量は15mg−30mgが10mg−20mgと
減っていることが確認されています。

 
 

各種オイルへの添加量(配合例)
 
配合量、vol% ガソリンエンジン油 ディーゼルエンジン油 ギア油
粘度指数向上剤 (PMA、ポリマー分)= (OCP、ポリマー分)= (PMA、ポリマー分)=14
流動点降下剤
(PMA、ポリマー分)=0.2
硫黄−リン系極圧剤

3〜5
清浄剤 1〜2 3〜6 1〜2
分散剤 6〜8 1.5〜3 2〜4
抗酸化剤 1〜2 0.6〜1 0.5〜1
消泡剤 少量 少量 少量
基油(鉱油) 86〜90 89〜94 79〜76

資料:「新材料のトライボロジー」日本潤滑学会編、養賢堂、「トライボロジスト」vol.45/No.8/2000

ゲル化現象

通常の呼び方として、ポリマーと呼ばれる粘度指数向上剤は
添加量が多すぎたり、他の添加剤成分との相性によって、
低温時度に(場合によっては常温域の20度-40度であっても)ポリマー成分がゲル状に層を
作り出すことがあります。
従来のオイル規格では0W−XXは高品質のベースオイルを使用していたため値段も高く
ポリマー量も少なく抑えられましたが、
0w−20を標準なオイル粘度とするエンジンが増えてきましたので
値段が安い鉱物系由来のVHVIに添加剤を加えて作られる0W−XXのオイルが主流となってきています。
このため0Wの粘度で金属摩耗を少なくするためにはどうしても
それを守る品質の添加剤で補う必要となり、新しい処方箋で新しい添加剤のパッケージで
作られる事が多くなり、同じオイルメーカーでも
0W−20と5w−30では今までとは異なった添加剤の組み合わせとなります。
例えば「有機モリブデン」などを使うオイルも0W−20などではずいぶんと増えています。
ところが、この有機モリブデンなどは他の添加剤を添加することで
添加剤成分かポリマーを抱き込んでゲル化をするケースが増えています。
あるいは、製造中や保管中にオイル中の添加剤成分のムラが出来てしまいポリマーや他の含有添加剤の
過疎部分が出来てゲル化を起こしやすいオイルがあったり、
後で入れた添加剤によってそのバランスが崩れて、やはりゲル化を起こすことが知られています。

なお、オイル単体でもこういったような不具合現象が起きる場合は
やはり新しいオイル規格に変わったときに多くみられ、
規格をクリアーさせるための新しい添加剤製品が混入されるからだと思われます。
(まあ、車のエンジンや部品などのリコールも同じ事柄ですね。)

工事中





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