オイルの消費について

オイル交換する際に、自分でされる方以外は
給油量や廃油の分量を正確に測定する事がないので、
多少、オイルが減っていても、どれくらいオイル消費しているかわかりません。

特に、3000km−5000km毎に交換されている場合など
正常なエンジンでは(一部車種除く)異常に少なくなることは無いので
まずスタンドやディーラー・整備工場、あるいはカーショップなどで「少なくなっていますよ」と指摘されることはありません。
あれば、オイル漏れやオイル上がり・下がりなど
整備上の関連箇所の点検修理になりそうです。

実際のところは
オイルが多少少ないくらいでは、他の機器が正常であるならなんら影響がないことがほとんどと言えます。
走行後にすぐ交換してしまう走行会などではオイル注油規定量の少ない方ぎりぎりのLOWレベルで
入れていることもあります。

ところが、オイルがロングドレイン化してきているのと、使用オイルの粘度が低粘度化していますので
長期間使用しておりますと、ある時期から急にオイルが減ってしまう事があります。
オイルが減れば、エンジン内部の冷却能力が落ちてしまいますので、
エンジン自体が熱を持ってしまいますから、エンジンに悪い環境を作ってしまいます。

金属は温度が上がりますと確実に膨張し、柔らかくなりますから
摩耗促進も起こってきますし、
オイルも高温化し、更に蒸発しやすくなり、スラッジ化も促進されます。
こうして、ある時点から急に悪循環が極端に進んでゆく事になります。


粘度との関係のグラフを見ますと、
油温が120度を超えて高くなりますと、通常では高粘度と言われるオイルと言えども、
かなりのオイル消費となり、5W−20などの低粘度油は更に消費が早くなります。
150度以上になりますともう10w−30と10w-50との差がほとんど無くなります。

つまり、こういった環境で長時間運転をすれば
高速走行などのスピードと言うよりも、時間的なレベルで消費される量が増えますので
知らないうちに、いつの間にかLOWレベル以下になり、エンジンを壊してゆく要因を作るわけです。

オイル交換は人任せでも、オイルゲージ(ディップスティック)が付いていますので、
オイル交換時には出来るだけ交換前、交換後で確認されると良いと思います。
整備上でもオイル消費情報は非常に役に立つ事柄となります。

また蛇足ですが、普通、仕事以外で長時間継続的に走行するというと
レジャーなどの用途となり、急に長距離・高速走行するわけですから
出発する前の時点で最低の点検が必要です。
オイル、クーラント、ファンベルト、タイヤはチェックされると良いでしょう。
ワイパーゴムなどもきちんと雨を拭えるか確認が必要ですね。

また、この消費度はASTM法の「エンジン油蒸発性試験方法=NOACK」との関連が高いと言われています。
これはオイルの温度を250度Cに上げて、真空にした状態で、オイルが1時間でどれくらい蒸発したか
(=減ってしまうか)を、全体量からのパーセンテージで調べるテストなのですが、
実際には再現精度は低いと言われており、今後、さらに改善されると思われます。
このテストで蒸発するオイルの量は
例えば10w−30あたりの粘度のオイルで10%前後が1時間程度で減りますので
オイルは過酷な条件では結構蒸発するものだと言うことが分ります。
もちろん新油です。

最近のディーゼルエンジンなどについてはオイル粘度とPMと関係データが
こちらのHPで詳しく紹介されています。

通常の使用状況からは、3000km程度で極端にオイルが消費されてしまうことなどまず起こらないのですが
走行距離が5000kmを超えてきますと、オイルもかなり劣化してきます。

その時点まではほとんどオイル消費がなかったと言う経緯がありましても
その後、急に減ってしまったと言う事が時々起こって、理由を聞かれることがあります。
理由のうちには、この時点で今まで無かった高速道路を使用したとか
登坂路を多用したとか、長時間運転したとかが重なりますと、余計に消費量が増えるわけですから
「いきなり減った」という感覚になってしまう事が一番多いようです。
もちろんオイルの粘度劣化、燃料水分などでの希釈と深い関係があるようにも思えます。

オイルの消費については下記の事を考えれば良いのではないかと思われます。

1.ピストンリング(オイルリング)の張力に起因する
2.オイル粘度に起因する
3.オイルの性状のうちの「蒸発量」に起因する
4.オイルの劣化に起因する
5.機器の状態(漏れ・発熱)に起因する
6.その他

1.の場合で、最近の省燃費化による異常に低いリングの張力が原因で、ピストン高速摺動時に
リングが暴れてしまい、オイル消費を制御出来ない=異常にオイル消費をする現象も起きています。
このケースは通常走行では普通は起こりませんので、
高速道路や登坂路の多用で(走行会などすればよく分るのですが)発見されることが多いです。

リングの張力を下げることは摺動摩擦抵抗を減らすことで、これが減れば燃費を良くしますから
省燃費設計のエンジンには粘度オイル消費を考えなくてはならなくなってきました。

省燃費に関してのオイル中の添加剤の役割としては
オイルの低粘度化傾向という「流動摩擦の低減」と、
ピストンリングの張力低減で起こる現象と同じような意味合いでの極圧剤を含む摩擦調整剤を使用するといった
「境界摩擦の低減」になるのですが、
蒸発量としては、ベースオイルの品質の問題になり
リングとの関係では、張力に加えシリンダーとのクリアランスや摩耗痕、傷の状態でのオイル上がりが
重要となってきます。
隙間の充填と言うことでオイルを考えるのであれば、つまり、オイルの油膜の厚さが問題となるわけですから
これらは 粘度指数向上剤=ポリマー(OCP、PMA、PIB、SCPなど)の性能とも深く関わってきそうです。
     OCP=オレフィンコポリマー
     PMA=ポリメタクリレート
     PIB=ポリイソブチレン
     SCP=スチレン・イソプレン共重合体の水添物
なお、ピストンとシリンダー間の状態は
最近の水鉄砲のような注射器のようにゴムが付いて密閉されているような状態ではなく、
昔懐かしい(シリンダー筒になる)竹と布を巻いた(ピストンになる)棒のように
水(=この場合はオイル)があって初めて密閉性が保たれるような、
結構スコスコした隙間が大きい状態をイメージされた方が良いでしょう。
ですから、オイルや添加剤で密閉性も変わって来ますし
布が破れるようにピストンリングの金属摩耗も出来てしまうわけです。
通常の4輪のピストンリングは2500回転ぐらいで、
一番密閉性がよくなるように張力が設定されているように思えるのですが、
回転数が下がるとブローバイガスがクランクへ吹き抜け、
オイルに未燃燃料が入ってオイルを希釈したり、ススなどの成分や水分も入ってきますので
粘度がずいぶん変わってしまうことがあり、.とあわせて、オイル消費がかなり増加してしまう事があるようです。
特に、外気温が低くオイルの温度が上がりにくい冬は、
未燃ガスやオイル中の水分も蒸発しにくく、蒸発してもオイルフィラーなどが冷たいとそこで水滴になって
又オイルへ戻ってしまうので、見かけ上のオイル量が増えると言ったような現象が起こることもあります。
また、エンジンによっては、このオイル希釈現象がかなり多く出る車種もあるようです。

そのまま油温が熱くなるような走行をしたり、外気温が温かくあるいは暑くなってきますと
オイル中のそれらが蒸発しやすくなり、冷えて水滴にならずに再循環して燃焼室へ運ばれます。
油中の水分量も少なくなり、オイルを希釈している燃料も気化しやすくなって蒸発(再燃焼)するわけですから
これも結果的にはオイル消費となるわけです。

使用オイルを変更し、推奨オイル粘度よりも更に低い粘度のオイルを選びますと
冷間時のエンジン始動直後から10−20分程度は軽いエンジンと変わることが多いです。
これはオイル自体の温度がまだまだ低いですから、オイルの密閉性効果も落ちず、
省燃費に向いていますので、短距離走行が中心の方は、上記「希釈」に注意しながら試されると良いでしょう。
 

もう一つ、通常運転では問題ないオイル消費でも
高速高負荷運転ではオイル消費が急激に多くなるリングの張力不足や
合い口隙間に起因する現象があります。
ピストンリングは通常はガソリン車では2個から3個(オイルリングも含め)あるのですが
2個以上リングが使用されている場合に
ピストンリングの燃焼室側の最初のトップリングとその下にあるセカンドリングの張力の違いや、
それぞれのリング形状の違いによって
かなり変化することが分かってきています。
具体的には、
高速高負荷回転によって
最初のトップリングと2番目のセカンドリングの間の圧力が高くなってしまい、
シリンダー側壁に付着させたオイルをクランク側つまりオイルタンクに落ちるようにはしないで
逆に燃焼室側へ掻き(噴き)上げてしまうという現象です。
シリンダーの往復運動の1回1回では微量なオイル消費ですが
それでも、わざわざ燃やすようにオイルを掻き(噴き)上げてしまうわけですから、
かなりのオイル消費量となります。
なお、リング張力の変更以外にも
この現象はリングの「合い口」の大きさや形状で消費量が変わる事が分かっています。

ですから、ピストン部のオイル流路にスラッジやデポジットが溜まりますとリング自体の固着(リングスティック)や
オイルの流れが悪くなりますので(ディーゼル車で多く見られる現象)、上記のようにオイル消費が多くなったり
潤滑不良でリングやシリンダーの摩耗や深い線傷が出来たりしますので
オイル管理はこういた意味合いでも重要なメンテナンスと考えられます。
メーカー側も実際に起こる不具合の対策を取っていますが
今後とも設計上の問題でクリアーして行って欲しいものです。

また、エンジンが新しい内でオイル粘度を変化させても、
上記構造的な要因によるオイル消費は根本的には消費量がほとんど変化しませんので
あまりにもひどい状態の場合は保証期間内にメーカーに相談されると良いでしょう。
ピストンリング交換(張力の変更)で消費量が直るケースが意外に多くあります。

シリンダーやピストン構造でオイル消費が変わるという事は
ユーザー側ではどうしようもありませんが、
個々のエンジンによって起こるその傾向だけは知っておいた方が良いでしょう。
 
 
 

工事中



参照:ピストンリングのページへ(上記、粘度との関係のグラフはこちら)
 


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