オバサン・ドライバーが行く 27
輝く京都ナンバー
(遠野、花巻)

京都から見ると、東北は遠い。容易に行くことができない。すると、人間というのは、それらの地にあこがれを募らせるようだ。
中尊寺の金色堂、遠野、花巻の宮沢賢治記念館、弘前城、十和田湖、奥入瀬渓谷、八甲田山と、私にとっては、あこがれ色一色に染められた所にどんどん足を踏み入れていく。このあたりは、訪れてみたい場所がいっぱいなので、私はその引力にエネルギーをもらって、精力的に見て回った。
私にとって、この地があこがれであるように、東北の人にとっての京都は、やはりはるかかなたの地というイメージがあるようだ。
遠野の五百羅漢の駐車場では、オバサン観光客数人を乗せたジャンボタクシーが一台いただけだった。私が車の中で、次の訪問地の場所を地図で確認していると、タクシーの運転手さんが、窓をたたく。なんの用だろう、と思って窓を開けると、彼は言った。
「あんた、京都から一人で運転して来たの?」
「ええ、そうです」
「ええっ?ずっと、一人で?熱心だねぇー」
と、彼はオーバーに驚いていた。

宮沢賢治記念館に行った日は日曜日だったので、駐車場はほぼ満杯状態だった。運良く、ちょうど一台が出るところだったので、そこに車を入れた。その場所は、記念館にもっとも近いところだったので、大勢の人が私の車の前を通って入館することになる。何人かの人が、ナンバープレートを指さして、同行の人と何やら話している。聞かずとも分かる会話である。
「ねえねえ、ちょっとこれ見てぇ。すごぉい。この車、京都から来ているのね」
私が、記念館を見終えて、車に乗り、車を発進させると、真向かいで客待ちしていた数人のタクシーの運転手らが、呆気にとられたような顔をして、私の車に目をくぎづけにしていた。京都から来ているだけでも驚きだが、まして女一人でその車をころがしてきたのだ。彼らにとっては、びっくりこく事なんだろう。
京都ナンバーの青いフェスティバは、東北のあちこちに、あこがれと驚きをまき散らしながら走った。人々のそんな視線を感じるのは、ちょっとした快感であった。ミーハー的な快感には違いないが、少なくともン十万円のシャネルのバッグをちらつかせて視線を集めるよりは、グレードの高いミーハーだと、私は自己満足していた。
28 一人旅の旅館