オバサン・ドライバーが行く 35
観光スポット進化論
(網走、旭川、小樽)
ガイドブックを読むと、私の知らなかった施設がいくつかあった。とくに興味をひいたのが、流氷の現物を見せてくれるという、オホーツク流氷館であった。
流氷館は、網走の天都山の上にあり、私は迷いながらも、興味にひかれて山を登っていった。ここの館内にある流氷体験室は、マイナス十度に保たれていて、冬に収穫(?)した本物の流氷が保存されている。オシャレな防寒具を貸してくれるので、そう寒くはない。

この手の施設には、大阪にあるエキスポランドでお目にかかったことがある。たしか、「マイナス40度に挑戦」とかいって、人為的に作られた氷点下の部屋に入るのだ。真夏の遊園地では、しばしの涼感(?)を求めて、たくさんの人が入館していた。
また旭川近辺にも新しい施設があった。少し東に行ったところにある上川という町には北の森ガーデンがあった。ここには、大雪ベアセンターとアイスパビリオンがある。熊と氷は、どうやら北海道のキーワードらしい。
アイスパビリオンは氷点下20度のホールの中に、つららや氷柱が芸術的に造形されている。ライトアップされていて、幻想的な生きた絵画を鑑賞しているようである。
旭川郊外には、北海道伝統美術工芸村がある。ここには、優佳良織工芸館、国際染織美術館、雪の美術館の三館がある。建物自身がレンガ造りやら、純白のビザンチン風やらと、北海道の夢そのもののおとぎ話的な美しさだ。あこがれの花のエゾカンゾウもさりげなく演出に使われている。
ここは団体さんのトイレストップのためにもロケーションがよく、お高い入場料(三館共通で千二百円)にもかかわらず、にぎわっている。
とくに雪の美術館は、よくできていた。氷の回廊と名づけられた所には、氷の造形を左右に造り、ガラス越しに見ながら歩く。氷のスペースと通路は、隔絶されているので寒くはない。雪の結晶やダイヤモンドダストを説明する映像、大雪山の冬景色など、それぞれ思わず足を止めて見入ってしまった。

その他、ガイドブックの目新しいものでは、札幌にある生活工房、サッポロファクトリーというのがある。サッポロビール第一製造所跡を中心に、レストラン、ブティック、温泉アミューズメント、フィットネスクラブ、エネルギーやノーザンライフに関するパビリオン、アイマックスシアターなどが詰まっている。
とくに何もないのだが、遊園地と博覧会とスポーツ施設の融合体のようなものである。ノスタルジーを感じさせる古い赤レンガの建物に、徹底的に人間の手をいれ、オシャレでナウい空間に変えてしまう。
考えてみれば、こういう施設は日本中のあちこちに生まれている。
あとひとつ、最近とみに脚光を浴びている町に、足を踏み入れずに北海道を後にすることはできなかった。
小樽である。ここの人気もサッポロファクトリーに近いものがある。まあ古い町並みが、かなりの範囲に拡がっているところが本物の威厳をもつ点がちょっと違う。
しかしここで訪れるべき所というと、感覚はサッポロファクトリーと同じである。小樽オルゴール館、北一硝子、小樽ヴェネツィア美術館・・・とミュージアムとショッピングになる。
テレビのドラマなどでしょっちゅうお目にかかる、小樽運河は、たしかにきれいが、あまりにも短いのにがっくりだった。その狭いエリアに大道芸人や絵かきが、数メートルごとに立っているのも、スペースプアーな日本ならではの光景だった。
この小樽は、北海道の格安パックツアーでも、人気が高いようで、今回の旅で唯一、宿の確保に窮した地であった。ここに至るまで、宿の予約を試みて断られたことは、数えるほどだった。が、ここ小樽でだけは、宿の空きにスケジュールを合わせたほどの混み具合だった。

さて、現在中年まっただなかの私にとって、この新しい観光スポットは、パーフェクトにはフィットしがたかったが、古典的な観光地もまた理解できなかった。
北海道といえば、層雲峡が有名である。たしかに渓谷全体の景色は素晴らしいのかもしれない。しかしふつうの観光客として見学する場合、「層雲峡」という看板がぽつんと立っているスポットで、バスを降りて、記念撮影をパチリと撮って、あとは出発時間まで、近くのみやげ物屋を物色する。こういうスポットで見る、渓谷美の景色というのは、はっきり言って、まったく感動しない。
たくさんの観光客が、看板を取り合うようにして囲み、一組ずつ順順に写真をとる様は、なんともはや、の感がある。
こういう場所は、すたれて当然、と思うのだが、やはり知名度が圧倒的だから、パックツアーなどには、いつまでたっても外せないスポットになるようだ。
観光は進化している、と私は思う。名所旧跡の物見遊山の旅から、自らが主役になる旅へと。
ゴルフやマリーンスポーツをするために外国に行く人が増えている。また歴史の比重が軽くなってしまったのか、歴史巡りがすたれ、新しいテーマパークに注目が集まる。
現在の観光を眺めると、老いと若きが、まったく違う旅のスタイルを追っている。時が進むと、老人御用達のスポットは、ますますじり貧になり、若者を狙うスポットが台頭するのであろうか。
私自身が携わってきた、ガイド、という仕事も、現在日本においては時代遅れの産物かと思うこともある。
観光地を見ても、ガイドさんに引き連れられて、旗に続いて歩き、歴史の説明をフムフムと聞いて、メモを取っているのは、決まって平均年齢の高い団体である。
若い人の観光の仕方は、着実に変化していると感じる。
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