■94年12月5日

井幡万友美チェンバロリサイタル

場所=青山音楽記念館(バロックザール)


●当日パンフレットよりごあいさつ


本日はお忙しい中「チェンバロリサイタル」に来て項き、有難とうございます。

今日こうしてステージの上で演奏出来るのも皆様の暖かいはげましあってのこと、私の感謝の気持ちが少しでも音楽によって伝えられればと、心を込めて弾かせて項きます。どうぞ聴いて下さいませ。


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Jean Philipp Rameau
     〈1683−1764)
 Pieces de Clavicin
  Prelude
  Allemande
  Courante
  Sarabande I,II
  Menuet
  Gigue



Johann Christian Bach
     (1735−1782)

 Sonata,Op.17,No.5
  Allegro
  Presto



Allen Sapp
   (b.1922)

 Five Toccatas
  No.1
  No.4



Johann Sebastian Bach
     (1685−1750)

 Partita No.3 BWV827
  Fantasia
  Allemande
  Corrente
  Sarabande
  Burlesca
  Scherzo
  Gigue



Domenico Scarlatti
   (1685−1757)

 Sonatas
  K.104
  K.87
  K.368
  K.369

 

●J・Ph・ラモー タラヴサン曲集第1集
  フランスの作曲家ジャン・フイリップ・ラモー。

彼のチェンバロのための第1番目の曲集は、自由な曲の流れで始まる前奏曲、次にイネガールと呼ばれるその当時フランスでよく使われていた手法をふんだんに使ったアルマンド、2拍子と3拍子の入り混じるクーラント、やさしさのあふれるサラバンドT、TT、かわいらしく少しメランコリックなメヌエット、そして最後は演奏者泣かせの装飾音がいたるところに現れるジーグへと続きます。

フランス音楽と言うとどことなく軽やかでふわふわしているイメージがあるのですが「いえいえ、もっとしんの強いところもあるんですよ!」とこの曲に教えられた様な気がします。
 
●J・Ch・バッハ ソナタ Op,17 No,6
 

バッハと言えばヨハン・セバスチャン・バッハとなるのですが、彼の息子達のうち何人かはとても優秀な音楽家でした。

そのうちの1人ヨハン・クリスチャン・バッハのソナタ、どこかモーツァルトの様な……。

第1楽章はメロディーと伴奏パートとをいかにチェンバロの持ち味を生かして色分けするかが、難かしさでもありおもしろさでもあるのかもしれません。

そして第2楽章はひたすら勢いが大切。メロディーが上ったり下ったりとっても急がしいのです。

 
●Allen Sapp 「5つのトッカータ」より No.1 No.4(現代曲)
  アメリカの作曲家アレン・サップ氏。このトッカータを弾かせて項くのが御縁で在米中よくホームパーティーにお招き項いたり、励ましのお声をかけて頂いたり、それはもう、かわいがって頂きました。

氏はフランスで研さんを積まれており、パーティーではおいしいチーズにワイン、奥様のお手料理、そして何よりも音楽史の本の中でしかお目にかかったことのない様な有名作曲家達(例えばシェーンベルク)が、氏の同級生として出てくるお話に時のたつのも忘れたものでした。

ここに登場する2曲のトッカータは、「5曲のトッカータ」のうち最もチェンバロの躍動的な部分を使わせてくれる曲達です。

「音を間違えて弾いてるの?」なんて言わないで下さいね。1つ1つの音は生き物の様に意志を持って動いているのです。
 
●J・S・バッハ パルティータ第3番 BVW827
  息子さんの後はお父様、ドイツが生んだ音楽の父ヨハン・セバスチャン・バッハの登場です。

パルティータとは組曲。こちらも初めのラモー同様、いくつかの小さな曲から出来上っています。まずはファンタジア、右手と左手がメロディーの真似っこをいたる所でくり広げます。

そして風に揺れるレースの様なアルマンド、少し攻撃的なコレンテ、しっとり落ち着いたサラバンド、ちょっとずる賢いピエロのイメージのブレスカ、お次はドジなピエロのスケルツォ、最後は息付く間もないジーグで終わります。
 
●D.スカルラッティ ソナタ
  最後はイタリアの作曲家ドメニコ・スカルラッティ。彼ほどチェンバロの為に曲を書いてくれた人はいないのではないでしょうか。

一説によるとスカルラッティはギャンブル好きでそれが高じて借金返済の為、自筆の楽譜を売りとばしたと言われています。

それゆえかどうか、彼の作品は弾いていて音楽の上での”遊び”がふんだんに使われていると感じるのは私だけでしょうか?

ギターのリズムあり、音のぶつかりあいあり、とつ然のメロディー乱入ありと盛りだくさん。そうかと思うととても落ち着いた旋律だったり、飽きることのない内容です。