自然素材製品の生産技術のポイント
(手作業工程の合理化の場合)
自然素材を利用した製品を、機械加工主体のラインに乗せる場合には、多くのリスクがあり、又ノウハウが必要となるのはゆうまでもなく、弊社でも、近代工業に使用される技術そのままでは、均一な加工というのは不可能でした。
そのノウハウを蓄積する為には、多大な時間と労力を必要としますので、一般的に、加工設備を外注製作した場合は、トラブルは必須です。
そのトラブルや、加工設備製作の為の初期投資は、いったいどこがもつのか、どの部分で、線引きをするのかという事で、おおむね、外注する場合の製作費の見積金額は大きく跳ね上がり、又、最終的に、完成しても、実稼働できないとか、完成しなかったという話も多く耳にします。
やはり、伝統産業の各加工工程の省力化設備においても、そのノウハウを手作業レベルで多く持ち、リスクを自身で背負う覚悟をもっていないと、機械化は不可能です
以降に、弊社の行ってきた省力化製造ライン構築の上で、経験したいろいろな事例を記載致します
当然失敗例は、他にも多数あり、成功例と比較した場合、未完成のままあきらめた設備も多くあります
その責任を背負うのは、やはり、自身しかないと痛感しています。
1.ワークの寸法誤差を吸収する
自然素材の加工品は、寸法が不安定で、その形状も環境により、反ったり、変形したりする事が非常に多くあります
寸法を一定に設定できない場合は、『ひとつひとつのワークの寸法を測りながら加工する』事が必要です
例えばワークを幅がばらつく場合は、その幅方向をつかんでその寸法に加工代をプラスするという方法です
加工代は一定とする事が目的ですので、切断したり、工具をセットする場合は、その稼働側にセットするようにすれば、ばらついたワークに合わせた加工が可能となり、最終的には、一定の品質の加工が可能となります
又、固定する場合、変形があるのならば、パッドには、永久変形の少ないウレタンゴムが最適です
剪断方向に力が加わらない場合は、シリコンゴムも利用できると思います
2.加工完了前に、人間の目で確認する工程を加える
自然素材であるが故のバリや、ささくれ等の障害物がある場合は、機械に最終まで強制的に加工させると、キズや、不良が多く出やすいです
そういう障害物が無い事を確認する為にも、『決定前に、人間の目の確認するタイミングを与えて、確認スイッチ等を押すと、次の動作を開始する』というような流れにしておくと不良を出さずに済みます
いずれにしても、流れ作業ではあっても、次の工程まで、機器にもっていかせるような設計は絶対に避けるようにします
近代産業の製造ラインと比べて幼稚な設備と思いますが、自然素材の加工ラインでは、不可欠な設計思想と考えます
3.エンジニアリングプラスチックは多種多用途に応用できる
金属でも、鉄は、変色、さびが発生して、ワークにタッチする所にはなかなか使いにくいです
真鍮、アルミは色がつくし、又、磨耗も多く使用しにくいです
ステンレスは、良いのですが、加工がしにくいです
そこで、良く利用できるのが、『ジュラコン(ポリアセタール)』です
丸棒や、板の状態で必要な分づつ購入できますし、又、機械加工性にすぐれており、旋盤でも切削できます
最も良い点は、耐磨耗性にすぐれている、すべりが良い(摩擦抵抗が少ない)、繰り返し応力に強いという3点です
複雑な形状も、簡単に加工でき、板バネとしても利用できますので、テンションを掛けたい時等は重宝します
他にも、ワークを見ながらセットしたいのだが、ガラス板は使いづらい場合等は、『ポリカーボネート』の板を利用する事も多いです
耐衝撃性にすぐれているので、アクリル等と比べはるかに安心して利用できます
その他、金属では、絶縁に心配があるところで、性能が必要ない場合は、『ABS』も良く利用します
自社開発の加工設備を利用する場合、そのオペレータの安全性も十分考慮しておかないと事故につながる恐れがあるからです
4.加工刃物の材料選択について
扇子の竹の材料を削るのに、通常『刃物屋』さんから、鍛造された鋼を利用する事が過去は多かったのですが、扇子の扇骨を削る時などは、どちらかというと、『剥ぐ』という加工に近い為に、刃先の『ちびり』が非常に多く、その事には適していないという結論に至りました
鉄鋼材料の加工は、『タングステン合金』や『炭素工具鋼』『高速度鋼(通称ハイス)』『焼結合金』が用いられます
このちびりには、『焼結合金』が最も適しているのですが、高価である事、個別形状の刃物が型なしでは作りにくいという事で、『ハイス』を用いる事が多いです
ハイスの中でも『SKH9』が最も優れており、これを『真空熱処理』すると、ちびりを遅らす事ができます
簡単な形状の刃物で良い場合は、『旋盤の突っ切りバイト』を利用すると、もっと有効です
その他、焼結合金に近いもので、簡単に機械加工で切削できて、手に入りやすいものに『フェロチタニット』という焼結金属に似た材料もあります
これが、扇骨の材料『竹』の場合の『剥ぐ』という動作ではない『裁断』するとか『切り取る』という動作の場合であれば、『炭素工具鋼(SK材)』で十分です
自分の所でどうしても熱処理したい場合に、私は、こういう方法で熱処理します
コークスの火を七輪で起こして、材料(SK材に限る)を加熱します
赤くなってきたら、『磁石』を当てながらひっつかなくなる時を待ちます(組織の変態があるまで)
引っつかなくなった時に、瞬間灯油か水に付けて『焼き入れ』を行います
温度計がないので、この方法で行う事があります
順次、ポイントをご紹介していきたいと思っています
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