1.伝統的工芸品と、一般的な商品との境を考える

 

伝統的工芸品として、指定を受けている『京扇子』ですが、その種類は非常に多く、その利用目的も多種多様です

観光地へ出かけていって、例えば熊や鷹の彫り物を購入する場合、『飛騨の一刀彫』ではなく2000円位の物であれば、民芸品の印象を受けます

民芸品とはどういうものか、又、そうではなく街へショッピングへ出かけて、おしゃれな小物をさがしにいった時、店頭で『扇子』がおいてあった場合、これはおしゃれな扇子だなと思って購入するとしたら、『伝統的工芸品』を買うんだなとは、絶対思いません

しかし、その店頭においてあるものも、工芸品『京扇子』にまとめあげる事ができます

『今年の夏は暑いし、会社で使っているうちわは外では使えないし 扇子一つ買おうかな?』といいながら、職人仕事の集大成であるが為に、6000円する扇子があるならば、私には手が出ません

そこに好みの柄の男物扇子 2500円があるので、これを買って電車に乗ろうと取り敢えずそんな所です。

このどちらが工芸品で、どちらが一般的なファッション小物か、あるいは両方共工芸品なのか、よくわかりません

(1) 工芸品を加工する場合、職人は、『最も素晴らしい仕事をしよう』と考えて仕事をする

(2) 一般的な商品を加工する場合、加工者は、『不良のない』『指定された数量を指定納期で仕上げる』『仕様書で決められた範囲の精度、品質の製品に加工する』といった事を考えて仕事をする

この二通りのどちらで加工するかは、おのずと商品の性格で決まります

現在、われわれの業界である、『京扇子』加工に従事する職人は、この切りわけができないのが実情です

それぞれこの二つのパターンでは、利用する材料、製品の最終品質、売価に対して求められる目的とその顧客の満足度全て異なります

加工者は、その二通り存在しているならば、なにも問題はないのですが、一人でその二役をこなせないといけないのが現状です

(1)と、(2)との加工するものの取り組みの違いは、何も加工する事の代償(金額)のみではありません

しかし、その都度その分業された仕事が、どれに当たるかはその時点では不明な事も事実です

とりとめない文章になってしまいましたが、これから真剣に整理して考えていかないと行けない事だと思います