『ものづくり』について

10数年前くらいは、私たち業界の、組合の中では、『後継者育成』という話題が、大半をしめていました。

技術継承の為、家業を次ぐ若い世代は、親の手仕事の大変さをいつも見て育っている為に、なかなか後継者となる人は、少ないものでした

平成大不況が始まった頃より、いつの間にか、この話題は、なくなり、反対に、自分たちの職場を守る為、海外生産等を問題にする事が多くなってきました。

テレビを見ていても、セーフガードの発令に伴い、『いぐさ』や『タオル』といった業界の方々の現状と、未来への努力が、番組で放送されています

一冊の本を買いました。PHP研究所の発行している『ものづくりを忘れた国は滅ぶ』というタイトルの物で、松下電器の偉い人が書かれていました。

BOOK OFFで買ったので、数年前の発行で、少し現在の経済状況とは異なるのですが

海外生産と、日本の製造現場との土台が逆転しつつあるという警鐘を訴えておられます

私は、以前家電メーカーのテレビ製造工場に努めていましたが、現在その工場もすでになくなっており、国内にはそのメーカーのテレビ工場はありません

私の時代は、ノックダウンで部品をキットにして、アメリカの製造工場へ送るというのと、国内用を製造するという2本立てで、テレビ事業部はなりたっていました。

その本では、すでに日本には、テレビ工場をつくるノウハウはなくなったと書いています

シンガポールのテクニカルセンターで、他の国に新しいテレビ工場を作る為の生産設備を作り、金型の製造もそこで行われているそうです。

以前なら、金型の製造技術は、日本のオハコであった訳ですが、日本では、金型工の平均年齢は60歳を越えているそうです。

海外の新しい工業国では、日本が高度成長期に行ってきたような導入した技術のレベルアップに懸命な努力をしています

ところが、かつて先端であった日本は、その努力を怠っているのが現状のようです

扇子業界でも、同じ事が起ころうしている気がします

伝統産業という名の元に、技術のレベルアップに努力を怠っていると、海外の製造拠点に、そのノウハウを奪われるだけでなく、レベル自身にも差がついてしまうからです。

惰性でものづくりを続けて行く事程、恐ろしい事はないと思います。

ふと気がついてみると、自分の職場に、仕事が回ってこないという時は、突然やってきてもおかしくはありません。