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松浦正則社長講演会

「最近の欧米事情」

1999.2.4(木)京都リーガロイヤルホテル3階「鈴蘭の間」

講師:(株)松浦機械製作所 代表取締役 松浦正則 氏

 

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松浦正則社長

 松浦社長は、2月4日・5日と京都国際会館で開催中の「関西財界セミナー」(主催・関西生産性本部、関西経済同友会)に出席のため来洛され、お忙しい中を機青連のために世界情勢について、お話いただく機会を得ました。

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新基軸通貨と言われるEUROのトラベラーズチェック(松浦氏のサインがある)

まだ現地では一般的には使われておらず、ドイツの一流ホテルでも受取を拒否されたとのこと。
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メディカル分野は不況知らずで、急伸中。ライカの細胞の超精密スライスラー

<腫瘍などの良性、悪性をすばやく判断するために、細胞を-20℃に冷却して、27ナノメーターの薄さにスライスする>

写真は松浦社長持参のライカのカタログから

 

<講演内容要約>

 アメリカでは、7%の人間が、9割の富を握っており、残りの93%内の7〜8割の人間がアメリカ経済を支えており、直接、間接的に財産の44%は株に賭けており、どうしても株価を支えなけらばならない。
 アメリカでは、株価維持しないと立ち行かない。デリバティブのヘッジ(損失のつけ)を他国へ回して凌ぐ仕組みができている。
 ロシアのマネークライシスの影響は、予想以上に大きく、4000兆ドルの損失が起こる可能性があったが、デリバティブのヘッジを日本に振り向けて回避した。
 ロシアの破綻は、ブラジル等ラテンアメリカに飛び火し、ブラジルに金をつぎ込んでいるアメリカ(900億ドル)、ドイツ(300億ドル)、フランス(300億ドル)、スペイン(300億ドル)は大変である。
 ユーロ経済圏のGDPが9兆ドルで、アメリカ(8兆ドル)を凌いでおり、50年かけて形成されたコンセンサスは容易には崩れることはないと自信をもっている。因みに、日本のGDPは4兆5000億ドルである。
 ブラジルでは、自国通貨を変動のないドルにしようとする動きがある。カナダ、メキシコも加わると、世界通貨の87%をにぎることになる。
 企業においても、生き残りをかけて大規模な合併が進んでおり、薬品、軍需産業などで世界規模で手を結ぶところが増えてきた。
 
 アメリカの景気は、個人消費が順調で、住宅関連、自動車関連が好調である。個人消費に直接関係しない農業機械や石油が悪い。半導体関連にようやく動きが出てきた。
 好不況に関係なく順調なのは、メディカル関係であり、今後も大きく伸びると期待されている。松浦機械では、ライカ(光学機器メーカー)が製造する細胞の超薄切りスライサーの部品を加工するための機械を納入しており、非常に好調である。
 メディカル関係のほかに、環境関連、情報化、デジタル化関連、健康関連等の産業分野が今後有望である。
 また、コンピュータネットワークが進んでいるアメリカでも、自分の目で見ないと、本物の情報かどうか分からないと言うことから、フェイストゥフェイスで自分で本物かどうかを確かめる必要性が出てきており、人の移動が増えている。そこで、快適な移動を提供するための航空機やホテル、コンベンションセンターが活況を呈してきている。
 工作機械の受注動向は、1990年がピークで1兆3800億円(内、内需1兆300億円)、1993年が3200億円(内需2000億円)まで激減。最大のユーザーである自動車関連に需要の減少が現れている。
 自動車業界では、今の形態の自動車ではもう伸びなくなった。人口動向を見ても2002年をピークに減少に転じることから、内需への期待は出来ない状況で、海外での現地生産が増える。
 国内の自動車は、7000万台あり、年間1000万台ほど売れると見ているが、今後の需要予測からトヨタは300万台程度の生産を見込んでおり、現在のシェア40%を維持するとして、年間750万台程度しか需要がなくなることになる。まさに、日産自動車1社分の需要がなくなることになる。
 工作機械のライフサイクルは9.5年〜12年で、2001年には1兆円にもどるが、自動車産業が縮小するとしても、物を削るリーディングインダストリとしては、自動車産業以外に新しい産業が見えてこない。
 需要を増やすためには、社会システムを倍増することが早道であるが、資源、環境を考えると現状のままでは不可能である。半分の資源でシステムを倍増する新しい方法を考えだすイノベーションが求められている。
 日本のマーケットだけでは必ず縮小していく。世界のマーケットを見なければいけない。マーケットは移り気で、せっかちである。素早い対応、動きを求める。アメリカ、ヨーロッパは変化が早く、社会システムが素早く変化する。変化することに躊躇していられない。変化しなければ、生き残れない。
 アメリカでは、日本の優位は中小企業にあると見ており、中小企業をつぶすことが、日本に勝つことだ考えている。貸し渋りの仕掛けを日本に仕掛けて中小企業をつぶしにかかっている。
 日本の銀行も都市銀行は4つしか残らないと思われている。予想では、東京三菱、住友とあと2つだけだと言われている。
 アメリカでは、単独でヘッジファンドの始末がつかなくなっている。アメリカの金持ちは、年率30%の利益がないと納得しない。実需の世界では考えられない状況であり、博打を仕掛けるしかない状態である。
 今、アジアが手薄になっており、アメリカ、ヨーロッパには金が無く手を出せない状態であることから、アジア経済を助けられるのは日本だけである。あと3000億円も出せば何とかなるのに、世界一のODAを実施している日本政府には、全くその気がない。アジアでイニシアティブを取るチャンスを逃している。
 最近の企業では、2割が良い、3割が普通、5割が悪いと言った状況である。良いとする企業は、「環境」或いは「健康」をキーワードとした仕事に関わっている。例えは、環境ホルモンの関係から発砲スチロールの使用ができなくなってきたカップラーメンの容器を紙に切り替えるため、紙容器を扱う自動機が多忙を極めている。
 「環境」「健康」などをキーワードにしたソリュージョン(解決策)の提案型企業が求めらてくると考えられる。
 今後、貸し渋りはさらに進むと思われる。銀行からの融資が難しくなるので、商工中金から融資を受けることを考えてはどうか。機青連が組合組織にあれば、低い金利で融資が受けられる。
 日本のポテンシャリティは悪くない。人、ものについて、日本ほど品質が安定してものを集められるところは他にない。自信をもつべきだ。
 
 今のところ、経済、軍事で世界一はアメリカである。アメリカの動向は重要だが、とりあえずは、大統領がどうなるかを見ていれば良いと思う。
 2000年に大統領選があり、現状から行くと、ゴアが大統領になる。最長で2008年まで日本に厳しいゴア大統領の時代が続くと見るべきである。
 今、コンピュータハードディスク屋が忙しい。情報家電の動きも活発である。
 韓国もかなり回復し、500億ドルの外貨を確保し、新たな動きを見せ始めている。財閥解体が進むだろう。
 中国は、何か問題を起しそうだ。ロシアは最悪の状態である。
 インドがこれからの相手として、注目されるが、人口10億人のうち、2億5000万人だけが物を買えると言うような国である。
 環境問題から1リッター30キロ走れるディーゼルエンジンの開発が進んでいる。完全燃焼する技術(DDI)が不可欠である。
 2005年頃には、新しいインダストリーが見えてくるはずだ。
 これからは、マーケットに近いところでの生産がさらに進むので、海外への展開をしない限り、国内での仕事は減っていく。国内に踏みとどまって頑張るなら、差別化を図らなければならない。ちょっとだけ違うと言う差別化で良い。
 生きられれば良いで、当面は走ろう。

以上

 

 

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「シングル or ダブル特集」<マツウラニュース掲載された松浦社長執筆のコラム>

 

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