本題:人民元・ドル・円
著者:田村秀男
出版社:岩波新書


冒頭、著者は以下の様に本書を取りまとめている。

本書の狙いは、中国のおカネである人民元(正式には「人民幣」)を通じた中国経済の洞察と、人民元、アメリカ・ドルおよび日本円の三角関係の解明にある。

人民元の歴史から始まり、社会主義と市場経済の混合体制の中国に焦点をあて、ドルにペッグした形で海外からの投資を積極的に導入し、世界の工業から世界の市場に変貌しようとする中国の経済成長の光と影を描いている。さらに、アジアの中で機軸通貨たらんとする中国政府の意図を描写し、アジア地域の中で自らの円を機軸通貨とする努力を怠ってきた日本政府に警鐘を鳴らしている。

日本の経済発展がピークを打って、中国や東アジア諸国にバトンタッチされたことは共通認識として持って良いのではないだろうか。

この本に書かれている様に、汚職や賄賂が中国共産党幹部を中心に暗躍していたとしても、中国の経済発展のトレンド自体は否定しようのない現実ではないか。

個人として発展する中国経済に相乗りするもっとも手っ取り早い手段は中国株の購入になる。
この本に書かれている様に不良債権を母体と共に分離し、国際会計基準に準拠する形で化粧直しをして、香港市場やアメリカ市場に上場し、資金を世界から集めようとする中国政府の台所事情が良く分かる。

北京ダータンや上海実業、ペトロチャイナなどの中国株のメージャーの上場の舞台裏やIPO直後の株価の低迷などなるほどとうなずいてしまう。

株の話にかたよってしまうかもしれないが、中国株を購入する場合に、企業個々の業績をみて投資するというよりも、発展する国に投資するという意味合いの方が強い気がする。北京ダータンの配当を見ると0.18香港ドル、上海実業で0.32香港ドルである。それぞれの株価(2004年9月26日現在)は、9.5香港ドルと14.21香港ドル。配当利率では1.89%、2.26%。
中国株の中で格別高い配当利率とは言えないが、日本の銀行の利率よりははるかにましだから、少々の上げ下げがあったとしても今現在購入したとしても納得のいく価格とは言える。

これから上場が予定されている中国四大銀行(中国工業銀行、中国農業銀行、中国人民銀行、中国建設銀行)の不良債権の問題など、中国政府の手腕が問われている。

著者も指摘しているが、中国が抱える不良債権の問題は経済の高度成長の影で解決されていく問題かもしれない。日本が経済成長したころとは世界情勢が変わっている。すっかりグローバル化した現在の世界経済の中で間違いなく中国は明日の重要なプレイヤーであることは間違いない。

海外からの直接投資や株式市場への間接投資など、確かに時価総額が少ない分、上下動が激しく投機性の強い市場かもしれないが、長い目でみれば成長市場であることは間違いないし、中国の発展に相乗りするのも視野を広げるという意味からも、日本国内だけに目をむけているよりも賢明な気がする。

この本の中に書かれている様にニューヨークへの上場の際には国際会計基準に準拠するためにアメリカの監査法人が手をかしたそうだから、アメリカの投資銀行も中国の市場には注目しているはずだ。ウオーレン・バフェットやビルゲイツのうわさを語るまでもなく、直接投資だけでなく株式市場にも中国に有資が集まるのは時間の問題だろう。

香港の土地も投機の対象とされて、ずいぶんと値上がりした様だ。
バブルの頃の日本と一緒で家賃収入で金利の返済が可能な水準にあるのか、それを超えてしまったのか...。
何れにせよ、香港、上海などの不動産は軒並み投機の対象とされて高騰してしまった様だ。

個人的には中国の経済状況をウオッチすることは必須だと思うが、同時に東アジアも視野の中に入れていく必要がある。

韓国、台湾、シンガポールは既に成長と言う点ではピークを迎えているのだろうが、サムソンなど明日のソニーと思しき企業も台頭している。

さらに、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどの経済成長は見逃せない。

アメリカの第三次産業革命の行方を注目することも非常に大切だが、同時に東アジアの国々の経済発展の状況。ヨーロッパのメージャーな企業のグローバル化の動きにも注目していきたい。

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