【北海道山行記2】
『またも雨だった利尻岳』
長期天気予想図では、北海道行動中の天候はあまり良くないどころか、はっきり言って降雨の確率の方が高い。去年と同様ほとんど雨かもしれない。バタフライ効果1)とあとは知る人ぞ知る超晴れ女の能力を期待するのみだ。今回は車で青森まで行き青函フェリーで函館に上陸した。車での走行距離は約4000kmだった。
■1st:駒ヶ岳(1131m)
●7/Aug/'98
金沢から北陸自動車道、磐越自動車道、東北自動車道を経由して青森まで11時間で走行した。今日はねぶた祭りの最終日で山車を少し見ることができた。フェリーで函館へ。深夜に着いた大沼湖畔の森林公園キャンプ場(無料)で幕営。、キャンプ場は雨でぬかるんでいる。
●8/Aug/'98
5時起床。素直に目的の駒ヶ岳登山をすればよいものを、黒川の強い希望で反対方向に位置する函館の朝市まで朝食を食べに行く。三色丼(うに、いくら、ほたて)を満喫した後駒ヶ岳登山口へ。ここは既に六合目なので暫定頂上の馬の背まで書くことがないぐらい、あっと言う間に着く。馬の背より先は『危険につき一般者登山禁止』らしきことが書いてある。駒ヶ岳は活火山で噴煙があがり、山頂部だけが岩稜となっている。岩稜部の麓には立入禁止のロープが張ってあるが、我々は自己責任のある登山者という事で無視して三級位の岩稜に取り付く。が、ガスつて来たため、かくある岩塔のどれが本当のピークかがわからない。とりあえず上に行けばわかるだろうという楽天的な発想で登ったところが運良くピークだった。
羊蹄山自然公園キャンプ場(@\300)に向け出発、途中寄った登別温泉では風呂代(@\2000)をぼられてしまった。キャンプ場に幕営後、メインイベンターを迎えに新千歳空港へ。遅れて気嫌を損ねると後が恐いので、車も気もあせっていた。でも車は黒川のレガシーグランドワゴンなので乗り心地は快適。私のと違い、まともなエアコンもCDもMDも付いている。岡部さん無事合流。今後の天候はこの人の実力にかかっている。
■2nd:後方羊蹄山(1898m)
●9/Aug/'98
4時半起床。曇っているが雨は大丈夫そうだ。疲れからか岡部さんの調子が悪い。高度を上げるにつれガスの中に入ったが、樹林帯を抜けた頃にはガスの上に出た。やがて岡部さんもほぼ回復し、火口の縁に出る頃にはガスも晴れ、広い視界が得られる。独立峰だけあって麓の地形が良くわかる。火口を見て『(想像より)こんなにでかかったのか』とひとり感心していた。なぜなら以前岩峰会のメンバーで登った時は雨でな〜んにも見えなかったからである。また遠くに有珠山や昭和新山の噴煙も見えている。やっぱり山は晴れないとね!。岡部さん完全復活です。
テント撤収後、小樽に向け移動。小樽では有名な『一心』でおいしい物をと思っていたが、日曜日なので休みだった。小樽自然の森キャンプ場で幕営。
■3nd:暑寒別岳(1491m)
●10/Aug/'98
朝早く起きて港の側の市場へ。ここで毛ガニを購入する。1万円で7匹買えた。今日は暑寒別岳のベースとなる雨竜町南暑寒荘キャンプ場(@\300)までの移動日である。暑寒別岳は前から行きたかったところだが、アプローチが長いため、短い休暇の中では行きにくい所だ。今日は今までになく快晴である。『こんな移動日に力を入れて晴れなくてもいいのに。それより最期の山行日に晴れてくれ〜』と思いつつ富良野、美瑛で遊んでいた。日暮れまで遊んでいたので、急いでキャンプ場に向かう。途中のダム湖までは舗装道路が続くが、以降はダートのブラインドコーナーの連続である。21時半キャンプ場着。結構テントが多い。
●11/Aug/'98
4時起床。吊橋を渡りペンケペタン川の右岸に沿って登山道を進む。やがて白竜の滝が現れ、橋を渡って左岸へ。ここから高度を上げていく。平坦になったところが天然記念物の雨竜沼湿原である。朝靄がかかり、広く誰もいない静かな湿原である。尾瀬ヶ原と同じ高層湿原であり同様に木道が走っている。木道を抜けると緩やかな登りが続く。ふり返ると、樹林帯に挟まれた湿原もやがてガスがかかり見えなくなる。1時間ほど歩くと雲海の上に出て、すぐ南暑寒別岳である。眺めは360度層積雲の雲海であり、雲海の上に暑寒別岳をはじめ、西、北、東の暑寒別岳のピークが顔を出している。あの穂高岳でも全部揃っていないのに。やるな暑寒別岳!。しかしこんなJR浦和駅シリーズ2)みたいな名前を付けるより、アイヌ語で名づけた方が風情があっていいと思う。
ここから暑寒別岳との鞍部に約200m降りまた登り返す。トレースだけ踏み固められた緑の絨毯を進むのは気持ちがいいが、天候が良く高度が低いためかなり暑い。右手には鏡面と化した沼と緑の木々の箱庭みたいな風景が見える。ピークに着き行動食を食いつつ風景を眺めていると、雲海の彼方に小さなピークが見える。『利尻岳だ!』二日後あのピークに立っていることだろう。それまでに晴れていてくれよ!
キャンプ場に戻り手早くテント撤収。留萌まで出て、黄金海岸キャンプ場(無料)にテントを張る。海岸に横に並んだ駐車スペースの後ろがテントスペースという合理的でお得なキャンプサイトである。
■4th:利尻岳(1721m)
●12/Aug/'98
5時起床。今日は利尻島に渡るまでが予定である。日本海オロロンラインを進み、サロベツ原生花園を巡り、稚内へ。フェリーの時間があるため最北端の宗谷岬へ。記念写真を撮りすぐ引き返したが、車の駐車場が見つけられずフェリーの出航時間がせまり、ザックを担いで久々に走るはめになった。みんないい年なのだから、もっと余裕を持った行動をしましようね。
港からキャンプ場までは一時間程かかる。歩いているのは我々だけだ。タクシーを使う発想は我々にはなかった。なぜならその費用でビール(もちろんサッポロクラシック3))が余分に買えるからである。またこれで本当に標高ゼロからの登山となる。利尻北麓野営場(事後申告のため無料)の奥に有名な甘露泉4)があるため、観光客も多い。夕日は高緯度地方の特徴である燃えるようなオレンジ色で、カナダのユーコンで見たものの次にきれいであった。
●13/Aug/'98
3時半起床。とりあえず雨は降っていない。甘露泉までの舗装道を進み、そこから登山道となる。緩やかな樹林帯を登っていき、五合目付近で視界が拓け鷺泊の港が見える。しかし上空は曇っており太陽光線の暖かみが感じられない。六合目付近からガスに突入し、つづら折れを登って行く。長官山を過ぎ避難小屋へ。ここであきらめてレインスーツを装着。
賢明な読者は、今回天候に関する描写が多いとお気づきのことと思うが、4年前MTBで利尻に来た時に雨であり、今回が二回目となるからである。利尻に来るには、時間と費用がかなりかかるのである。その挙げ句雨だったら・・・ほとんど絶望にかられながらも一抹の希望を抱いていたが。やがてハイマツ帯が現れ、ガレ場が出てくる。雨でゆるんだガレ場を慎重に進むと、沓形コースの分岐となりすぐ祠のある北峰(1719m)に着く。ガスっていて展望はまったくない。岡部さんの実力を持ってしても晴れないとは。
ピークでしくしく悲しんでいると、『岩峰会の大住さん?』との声。なんと京都山の会の森川夫妻ではないか。こんな北の外れで逢うとは世間はやはり狭いのか。以前は早々とあきらめて下山し、降りた時には晴れるという失敗を経験していた。そのため気象状態から晴れる確率は少ないことは理解できていても『もうちょっとしたら晴れるかもしれない』と思いねばっていた。ところが『いつまで待っているの。絶対晴れないわよ!先に降りてるから』という神をも恐れぬ岡部さんの声。あきらめて降りることにする。今回はこれぐらいにしておいたるが、次は晴れてもらいます。しかし、二度あることは三度あるとも言うし、三度目の正直とも言う。どちらに出るかは今後の行い次第か。
この後稚内に戻り、三年前北海道で出逢った友達と再会できた。後は贅沢にも飛行機で帰る岡部さんを札幌周辺でデポし、函館へ帰るのみだ。が、多少の余裕時間ができたので、ビール園や北大植物園に寄るという観光までしてしまい、後は押し迫ったフェリーの出航時間までひたすら車を走らせる事になった。ちっとも学習能力がない人々でした。
1) バタフライ効果
MITのロレンツ博士が提唱。気象の数値予想において初期値のわずかの違いで予想に大きな差となって現れる現象を『ブラジルでの蝶の羽ばたきがアメリカのテキサス州で竜巻を起こすとがありうる』と例えたことからきている
2) JR浦和駅シリーズ
浦和駅には東、西、南、北、中、武蔵と7つある
3) サッポロクラシック
日本で一番美味しいビール。北海道限定販売
4) 甘露泉
日本名泉百選のひとつ
駒ヶ岳
8/Aug/'98
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後方羊蹄山
9/Aug/'98
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暑寒別岳
11/Aug/'98
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利尻岳
13/Aug/'98
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六合目
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8:30発
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真狩登山口
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5:35発
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登山口
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5:15発
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登山口
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4:30発
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0:40
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3:55
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1:00
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2:20
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馬の背
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火口縁
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雨竜沼湿原
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長官山
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0:30
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0:50
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1:50
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1:20
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ピーク
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ピーク
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南暑寒別岳
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13:55着
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ピーク
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0:40
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1:50
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1:50
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2:20
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六合目
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10:30着
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真狩登山口
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13:25着
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暑寒別岳
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登山口
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12:05着
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4:00
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登山口
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16:00着
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