【大雪山系縦走記2】  Aug/'96
『秘湯大雪山系縦走記』     

トムラウシ山から旭岳への山行記
トムラウシ山〜旭岳縦走

【大雪山系縦走記2】
『秘湯大雪山系縦走記』

bar

  

 夏期休暇を利用して、昨年途中で断念した大雪山系の続きを走破した。天候は去年とは異なりそれ程悪くはなかった。温泉も三カ所入浴でき充実した山行だった。

 メンバー:ohsumi、黒川

●6,7/Aug/'96  天人峡へ
 京都からJRで金沢へ。金沢に住む黒川のレガシーで直江津へ。車をフェリー(東日本フェリー:へるめす)に乗せ船内一泊後、室蘭に上陸。途中JR母恋駅に寄る。明日は8が三つ(平成8年8月8日)続く縁起のいい日ということで、駅務を委託されている売店のおばさんがフライングで8並び日付の入った入場券を売ってくれた。24時過ぎに天人峡に着き、駐車場で夜を明かした。

 

●8/Aug/'96  トムラウシ山へ
湿原 化雲岳、トムラウシ登山口になる31曲がりの急登を進む。涙壁にジグザグに登山道が刻まれているのだが、まだ体が暖まっていないため結構きつく感じる。登り詰めると滝見台に出て、『羽衣の滝』が眺められる。しかしこの辺りはカがたくさんいて、自らの命と引換えに血を吸いに来る。この後も針葉樹林帯が切れるまで奴等は追いかけてきた。やがて高層湿原帯である第一公園に着き、視界が開け旭岳が遠方に望める。

 この登山路はエアリアマップでは破線になっており、利用する人が少ないため問題ないのかもしれないが、湿原には表土の現れた幾つもの筋がある。早く木道を設置するなど対策をとらないと、湿原そのものが退化してしまう可能性がある。

トムラウシ山

 

 水流に洗われたガレ場が現れ、ハイマツ帯を抜けると化雲岳が、南にはトムラウシ山の双耳峰が見える。今日の宿泊地はヒサゴ沼キャンプ場(無料)であるが、化雲岳から向かわず、トムラウシ山へピストンの後に向かうことにした。トムラウシ山への縦走路は『神々の庭』と名づけられているが、まさにそのスケール、ヴォリュームはすばらしい。幾つもの小さな沼やモノトーンの岩石、そのまわりに咲く高山植物の彩りが我々の目を楽しませてくれる。やがて岩稜地帯となり、比較的大きさのそろった岩の上を200m程進むとトムラウシ山が現れる。山頂からの眺めは残念ながらガスのため良くなかった。この辺りはナキウサギの生息地になっているが、声は聞こえど姿は見えず。何とか見つけようとするが、無駄な努力で終わってしまう。ヒサゴ沼分岐からヒサゴ沼キャンプ場へ。幕営後ヒサゴ沼のまわりを散策し、沈むゆく夕日を眺めていた。

 

●9/Aug/'96  白雲岳へ

 3時起床、5時出発。ガスっていたためヒサゴ沼北面の雪渓で迷ってしまう。雪渓の途中でトレースが消えていた。先行者はどこへ行ったのか?。化雲岳から五色岳へ向かう途中より雨が降りだした。クマザサの深い登山道を無言で進む。五色岳から忠別岳へ向かう頃より雨風が強くなりだした。地図では忠別岳の西面は切り立った断崖となっているため展望が良いはずなのだが、さっぱりわからない。ピークからの降りは登りと異なり緩やかである。忠別沼あたりで雨は小降りとなり、木道が出てくる。小さなアップの後急激に視界が開け、気温も高くなる。振り返るとガスっており、ここが前線の接地面みたいである。

 白雲岳までの斜面は緑でおおわれ、東面の切り立った側を縦走路が走っている。平ガ岳付近から下方の高原沼を覗き見ると、点在している沼の水面に雲が映り、雪渓や緑の色合いがきれいである。この辺りはヒグマの出没地なので、探してみたが見たいときには現れない。いかにもクマが生息していそうな風景である。平らな岩が散在しているスレート平を過ぎると一転してお花畑となる。白雲岳キャンプ場(無料、寄付金のみ)は広い台地となっており、きれいな避難小屋もある。持参した缶ビールを近くの沢に冷やしてから、白雲岳をピストンする。白雲岳は中央部が陥没したカルデラで、クレーター部の縁になる岩稜を登り詰めると頂上である。しかし旭岳方面の展望はガスため良くなかった。

 キャンプ場に戻る前に沢のビールの存在を確認し、一安心した後夕食をつくる。ビールが気になっていたのは、馬鹿な事をしていた某大学のワンゲルの連中がキャンプ場にいたからだ。明日の天気は午後から崩れるため、できるだけ早く出発することにする。

 

 

●10/Aug/'96  秘湯、中岳温泉、天女の湯

モルゲンロート 夜半頃テントのまわりで何かガサガサする音が聞こえたが、ポリ袋か何かが風で飛ばされていたと思っていた。だが黒川は、クマか何かの動物がうろついていると思い怖い思いをしていたらしい。実際にはゴミ袋が何者かに荒らされていた。

 2時起床、3時半出発。また辺りは暗くヘッドランプを使う。さすがに一番乗りである。白雲岳分岐から北海岳を目指す。緩やかなアップダウンが続く北海平で御来光となり、自分の影が旭岳の峰へ伸びる不思議な情景を目撃する。北海岳は御鉢平を囲む山の一つで、ここから時計回りに、松田岳、間宮岳、北鎮岳、稜雲岳、黒岳がある。御鉢平には川が流れており、その幾つもに枝別れした、朝日に輝いている支流はフラクタル模様のようだ。南には石狩岳、トムラウシ山が雲海より姿を見せ、さらに十勝岳山系まで見渡せる。

中岳温泉

 間宮岳から旭岳に向かわずに、中岳のコルにある分岐路を中岳温泉へと向かう。裾合平へ向かう稜線から、谷へ降りたところに温泉がある。岩石でできた湯船は二つあり、底には湯の湧沸口があり水温は横の沢からの水量によって調整する。好みの湯温に調節でき眺めは良好、しかも無料なのがうれしい。半時間ほどのんびりし旭岳へと戻る。

  旭岳の登りは火山礫の急斜面の直登となり、ステップも切れていないため良くすべり非常に登りにくい。今回の山行の核心といっても良いだろう。旭岳山頂は今までとは異なり、観光客らしき人々で賑わっている。北海道の山々は山小屋がほとんどなく、それなりの装備が必要なため、また絶対数が少ないためあまり人と逢わず自然とふれあう密度が高い。それ故近年北海道に入れ込んでいるのだが、ここは観光地になっている。ザックを担いでいる人がほとんどいない。しばらく風景を楽しんだ後、一気に姿見まで降りる。

旭岳

 

 ロープウェイの乗車券を購入するとき、ザックの重量が10kg以上ある場合は荷物券を買わなければならない。
『山行の帰りなので10kgもない』と主張したが、側にある秤で計らされるとなんと17kgもあった。

 ロープウェイ駅の天女ヶ原で途中下車し、露天温泉の天女の湯に入る。川をせき止めた温泉で湯温も適温。湯船の側にスノコがあるので、着替えるのには便利である。

 再び天女ヶ原からロープウェイで旭岳登山口へ。ここから車をデポしてある天人峡へはバスは一日2本しかなく、すでに出発していたためタクシーを使う。タクシーの運ちゃんに
『天人峡までいくらでいけるの』と聞くと
『五千円でいける』との答え。実際は5千円以上かかったがその分は負けてもらえた。天人峡ではまた温泉(@エ500)に入り一息つく。

 今回は雨にたたられず二年越しの縦走が完了した。おかげで十勝岳山系、大雪山山系を繋ぐ事ができた。これでしばらくは大雪山系から離れられ、他の山域を目指すことができる。

 

 

8/Aug/'96

9/Aug/'96

10/Aug/'96

天人峡

5:40発

ヒサゴ沼

5:00発

キャンプ場

3:35発

 

3:45

 

2:05

 

1:50

化雲岳

 

忠別岳

 

間宮岳

 

 

1:35 

 

1:35

 

0:30

トムラウシ山

 

キャンプ場

 

中岳温泉

 

 

1:40

 

0:45

 

1:30

ヒサゴ沼

15:30着

白雲岳

 

旭岳

 

 

 

 

0:35

 

0:45

 

 

キャンプ場

15:00着

姿見

10:10着

 

Topページへ
ohsumiのホームページへ