スモールボア弾の選択

Sorry! Japanese Only
'00.03.04作成 '02.08.04更新

スモールボアライフル射手の悩み、どのメーカーのどのロットを使うべきかについて、意見を述べます。

98年初頭、柳田勝氏のホームページに「エレーはダメ、フェデラル凄い」を投稿して、 エレー社から抗議のファクスがやってきた騒動を引き起こしたのは私、櫛風沐雨です。 柳田さんのウェブはそれでややトーンダウンしてしまいました。残念です。 その時のファクスでは希望したらエレー社にご招待で試射をさせてあげると 書いてありましたが、私には抗議を頂けませんでしたので、ご招待に与っていないことは 誠に残念です。これを読んだ人はエレー社に是非チクッて私をイギリスに行かせて下さい。 嫁と双子と三男と父母を連れて楽しい家族旅行にしたいと思います。

さすがの私も、舌禍事件には懲りました。私如きの言葉を柳田さんのご同意があったとはいえ、みんながあんなに信じるなんて思ってもいませんでした。 だから、どのメーカーのロットがいいのかはここでは言いません。今のエレー弾はあの当時よりもずっと良くなっているという事は確言します。

ここでは、オリンピック競技であるスモールボアライフル射撃競技の22口径ロングライフル リムファイヤ弾、 自分で調整できないメーカー品を買うしかない弾種を、私はどうやって選ぶべきだと思っているかと言うことを述べます。 もちろん、私が一人で考えたりしたことではなく、先生、諸先輩のお導きと自分の経験で掴んだことです。


大原則

先に結論を......

自分で撃ってみてベストの結果を出す弾が良い弾である

冷静になって考えてみて下さい。

そもそも自分で違いが分からなければ、どんな弾で撃っても同じだと思いませんか?
「エレーテネックスは当たらないんですか? どの弾がよく当たるんですか?」という質問は「私は弾を選ぶことが出来ません。どの弾で撃っても同じなんです」という意味です。

自分で弾の鑑定が出来るくらい上手になろう!




こんな話を聞いたことがありませんか?

アンシュッツ、ファインベルグバウやワルサーのライフルのテストターゲットは、
バイスで銃身を固定して撃つから精度が良くて当たり前だ!

これは違うと思います。彼らはテスト効率(生産性)を上げるために銃身をバイスで固定するのであって、精度を上げるためではないと考えているからです。エアライフルの場合は機関部をバイスで固定します。

なぜならば、私はアンシュッツのテストターゲットの10発と同じ1標的10発ずつ撃ち込んで練習しているのですが、 テストターゲットよりも小さいグルーピングを得ることが度重なったことがあるからです。あれぇ、おかしいなぁ、としか思いませんでした。

ところが、ある日、ベンチレスト射撃の人とそんな話をしたら、当たり前だ!とドやされました。

射撃の常識

精度がいい射撃が出来る順は、
  1.ベンチレスト > 2.伏射 >> 3.バイス > 4.マシンレスト

ただし、上位2つは腕がモノを言いますから、人間のコンディションによる上下があって 下位2つのバイスやマシンレストを精度が下回ることもあります。 色々な弾の精度を相対的に比較するだけならバイスやマシンレストには利があります。、

10発か5発の弾のテストで、弾の善し悪しは絶対に判断できません。私は、全日本選手権の前に弾のテストを10発で切り上げて思いきり痛い目にあいました。このページの主旨とは関係ないのですが、10発か5発しか入っていないテストターゲットで、銃身精度の善し悪しを判断することは出来ません。10発か5発では「偶然」を排除できません。


どうやってテストするのか

風や光の状態が一定の射場を選びます。
東京なら、小石川射場が理想的だったんですけど、信じられないことに廃場になってしまいました。 陸軍砲兵学校や砲兵工廠の跡地で38式や99式歩兵銃の開発に使われた元は300mあったトンネル射場だったのに。 伊勢原のようにいつも風の状態が変わる射場ではテストになりません。冬の八代射場はストーブや 電気カーペットがないと凍死しますが、テストには良いと思います。

50発ずつ、比較テストする弾を買います。
簡単なテストなら、10発撃って確信を持って10点に伏射で入れた数発の弾がどこに入ったかで見ます。 先輩の中には5発で分かると豪語する人達もいます。
私は更に50発撃って合計点や、5枚のターゲットを並べて比較します。(某コーチからの連絡によると、やはり25発は撃ってみないと確率論的に見ても違いは分からないようです。)

試合で撃っていい結果が出たら、間違いなくいい弾です。

ワールドカップへ行って勝負するレベルの射手は、各メーカーのテストレンジで良いロットを選ぶべきです。 でも、国内レベルだったらこれで充分だと思います。


風が強くて変動があるときの弾

弾速が遅い弾の方が横方向への移動は小さい

理由は、分かりません。教えて下さい。

速いほうが横方向に強いのが原則ですが、弾頭形状によりY軸に横風変異量、X軸にス ピードをとった場合あるスピードで急激に横風に弱くなります。SB弾頭の場合音速を 超えた地点で横風偏移量が倍数の単位で大きくなり、マッハ1.5程度でもとの変異 量に復帰、それ以後急速に改善されます。SBでも早く飛ばしたいのですが鉛弾頭の制 限が規則にあり音速直前にセットされます。鉛弾頭使用ルールがなければジャケットをかぶせ マッハ2以上で飛ばすでしょう。(リムファイア,ロングライフルでも火薬の増量で可能)。(某コーチよりの回答です)

欧米の記事でも、エレーなどのメーカーも、私の経験も同じです。弾速が早い22LRの競技弾は風による横への移動量が大きいのです。 整流理論でも乱流理論でも説明できません。遷音速領域特有の現象(小さなショックコーンが弾速が早いと生成されている?)です。 超音速で飛ぶセンターファイヤライフルでは、弾速が早いほど風には強いのです。

日本の山間部にある射場では風の変動が大きくてあり得ない状態ですが、陽炎がなくて強い風でも一定の方向と強さなら、どんな弾速で撃っても同じ点が得られるはずです。サイトのクリックで調整できるからです。

風が強くて安定しないときは、ワールドカップの選手の中には、弾速が遅いエレーテネックスに替える人もいると聞きました。また、50mベンチレスト用にエレーはテネックスの弾速が遅いバージョンのテネックスライトをアメリカで売っていました。


各メーカー寸評

やっぱり触れなきゃしょうがないでしょう。でも、弾って本当に生ものです。 人の評価はガイダンスにはなりますが、決定打にはなりません。自分でテストです。

人が何を使っているかみて、試してみるというのも方法ですけど、 全日本選手権入賞者でも本当にバラバラです。つまり主観的な評価で選ぶべきだという事です。

ラプア

98年初頭からミダスはすごくいい弾になったと思います。 ロットによるバラツキが小さいのが素晴らしい。でも、最近、途方もなく当たらないのがありましたので、新しいロットは試合で使う前にチェックは必要です。それと、この弾は長期保管ができないと言われています。また、2000年頃からリムが厚くなってきています。リムのスペースをテネックス用に狭くしている人は,ボルトを壊すことがあります。調整して使って下さい。

ミダスと以前のドミネーターは実は全く同じものです。アメリカで別にドミネーターとい う商品があり、商標の関係で名称変更しました。精度が良くなったのは製造管理を厳 しくしたせいで、マシンも同じです。ちなみにラプアではSB弾ラインは1つしかあり ません。ラプアは火薬関係(ビザボリ製)以外は弾頭を含め全て自社生産で薬きょう などは3回焼入れ加工しています。生産態度は非常にまじめです。

サイズMが普通の競技には良いと思われます。サイズLでも、アンシュッツ20シリーズのように ヘッドスペース調整が簡単にできる銃なら問題なく使えるようです。

RWS

R100という高速弾がでました。高速弾大好きの私はラプアと同じくらい良い弾だと思います。P40 で395点 をマークしたこともあります(H13.7 近畿選手権,能勢,ほぼ無風)。同弾でまくり! もっと、使いたいです。値段が高いのが弾(珠)に傷。風には高速弾の宿命で弱いです。変動がある風の時の使用は避けた方がいいと思いますが、あのトリガーハッピーになる強反動は素晴らしい。それと、大口径の超音速に比べると中途半端な高速なので、肩付けが独特のモノが要求される気がします。
でも、某人に言わせると、R-100はバイスで撃つ と良好な精度を示しますが50mでは不利で、100mでは残存スピードの関係で 有利になる状況が考えられます、といいます。

フェデラル

製造時期による違いなのか、ロットによる違いなのか、さっぱり分かりませんが、バラツキがあります。精度がよい弾はあったようです。

弾速が遅いシリーズ(マッチ弾の UM1B、練習弾の 900B )ばかり評判になっていますが、早い方(マッチ弾の UM1、練習弾の 900A )もよい弾です。早い方で撃つとストレス解消にいいです。周りはうるさいから迷惑ですけど。

99年から量産体制に入って、品質が落ちたという話です。

エレー

クラブ、マッチ、テネックス、ゴールドと良くなっていくとメーカーはいいます。でも15円程度から 38円まで値段も上がっていきます。

ゴールドとテネックスの間には差がないような気がします。ワールドカップで 一番よく使われている弾は、今でもテネックスです。いくつも優勝もしています。

クラブは伏射で560点くらいの射手なら充分使えます。マッチは570点 くらいの人ならテネックスと差を感じることはないと思います。このクラスの人は、 据銃練習と実射を数多くバランス良く実施することが大事です。 高い弾を買って射場まで時間とお金をかけてやって来て空撃ちを交えてケチケチと 少ししか撃たないくらいなら安いマッチ弾で数多く撃つべきです。 空撃ちなんか、家でできます。

99年の後半に入ってきたテネックスは結構使えると思います。

安定して輸入されているのがいいところです。

2001年から Ultimated を売り出しました。使ってみた感想ですが、昔のテネックスのようにロットでバラツキが極端にありますが、よいロットでは精度はあがっています。面白いことに、人によって当たるロットが違っていたり、同じだったりします。ただし、ロット番号が近いから同じように当たるというモノではにような気がしています。同一ロット5万発と数が多いせいでしょうか。2001年の感想としては、いいロットにはいいけど、ダメなロットは練習弾にもなりません。早急なる製造工程の見直しが必要でしょう。


アメリカのウェブに Ultimated と新しいマッチのロット番号の読み方がありました。
The Quest for Rimfire Accuracy

Eley EPS lot numbers

The system for logging lot numbers changed with the new EPS product offerings. It is as follows:

Tenex EPS example:

Lot#UFV4144
"U" identifies this as a Tenex Ultimate Product
"F" is year of production 2001
"V" is machine V ( not Roman numeral for 5)
"4" identifies crimper #4
"144" is the 144th lot number in 2001 from machine "V".

For Match EPS example:

Lot#MF1123
"M" identifies this as a Match EPS product
"F" is year of production 2001
"1" is Machine "Z" (Start at the bottom of the alphabet and count up; 1=Z, 2=Y, 3=X, 4=W, 5=Y)
"123" is the 123rd lot from the F machine in 2001.

I hope this makes this complicated thing a little easier.

Bart


私は高速弾が大好きです。RWSのソリッドは精度はないけど安くて早いから大好きでした。トリガーハッピーが味わえました。
20年前、いまはない兵林館で売っていた、黄色いプラスチックのケースに入ったレミントンのエキスパートもよかった。今でも、バシュッ、シュルシュルといって弾が 走ってドーンとバックストップから反響音が帰ってきたのが耳に残っています。大きな黄色いプラスチックの箱に50発しか入っていなくて、 ラベルに大きく「×」(エックスだけど)が入っているのが弾の性能を正直に表していました。

当時は、エレーのクラブは紙箱でした。小さな段ボール紙の箱に、ジャラジャラって入っていたんだよ!

おおらかな気持ちで弾は選んで欲しいです。


22LR の精度を決める要素

Precision Shooting, Feb 2002 の P.41 に、 LAPUA Research Program と称して,Frank Tirrell, NW 在住 という人が 22LRの精度テストのあらましを書いています。
メーカー名や詳しいデータはさしさわりがあるので、 ということでかいていません。

精度を決めるのは、

1 プライマーが各弾に均一の重量で塗られていること
2 ボルトヘッドとリムケースの後部の隙間が小さく一定かないこと
3 上記により弾速のバラツキが少ないほど、グルーピングは小さくなること
とあります。

ちなみに非売品の弾のよいグルーピングは, 25発で 100ヤードで.259インチで, 弾速最大差は4.98FPS だったといいます。 なかには、0.1インチのものもあったそうです。

不発弾を処理するときに弾をばらすと分かりますが、22LRの推進薬量は耳掻き3杯ほどと微量です。推進力は発火薬(プライマー)からほとんど得られています。たまに、推進薬を入れ忘れたらしい弾を発射すると真下4点前後に着弾しますが、50mは辛うじて飛びます。
エレーもプライマーを替えたとたんにガタガタの着弾になったこともあります。
この論文は信憑性が高いのではないでしょうか。

プライマー薬量が一定になるように選んだ薬莢群から作った22LR弾を発売して欲しいものです。


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