それはロンシャンから
紫の照明のある喫茶店(たにし亭の隣)が喫茶店のロンシャン
それは1973年の梅雨の頃、そのシーンは雨の降っている日の喫茶店から始まりました。日本女子大の側にある喫茶店”ロンシャン”での互いに一年生同士、彼女たちと僕らクラスの仲間との茶話会でした。
彼女たちとは日本女子大、生物学科の学生達。今時の女子大生の様にゴージャスな服装はしていなかったが、それでも高校時代の同級生とは遙かに違った大人の女性を感じた。僕らは、たわいのない話をして、彼女たちを喜ばし笑わすことに一生懸命になっていたのだろう。
その日、大学の食堂で仲間達から、今日は茶話会の予定が有ること、そして合ハイでの彼女たちの話を色々と聞かされていた。話を聞いているうちに、僕も是非にと参加させて貰ったのだった。午後からの授業をサボって雨の中、目白駅からの長い道のり足下をビッショリ濡らしながら喫茶店『ロンシャン』にたどり着いた。
実は、2週間ほど前のやはり雨の日の事。僕は授業が終わり初めてのアルバイトである家庭教師に行く時だった。何とクラスの仲間達が、学校の入り口で女子大生達と話しているではないか。何でも日本女子大と合コンを計画して、その幹事の会合とのこと。男子学生が圧倒的に多い理工学部のキャンパスで傘を差している彼女たちの姿は大いに目立ち眩しかった。僕には傘を差した彼女たちの後ろ姿と緑色のヒールの靴が目に焼き付いていた。羨ましくも思いながらも、後ろ髪を引かれながらアルバイトに行かざるをえなかったのだった。
この時から、僕らの青春は始まった。
2001年9月 作井 正人