森昌子ちゃん



今では酒場に”おやじギャル”などと呼ばれ女性同士で酒を飲みに来る女性達も多いが、当時の『たにし』は女性達が店に現れるのは本当に希で、ましてや一人で女性が飲みに来る事など本当に珍し事だった。たまたま女子大の学生たちが店に現れると、常連たち(おじさん達)は本当に嬉しそうに話しかけ、それに彼女たちがそれに答えてくれると本当に楽しそうでした。しかし、女性同士の場合はあまりおじさん達の話しに乗ってくれる事はなく、一緒にお店に来たもの同志の世界に入っていることが多かった。

女性のお客さんが珍しい『たにし』だったが、ある時店に入ると何時もと違って妙にみなさんの顔が明るく、何かうきうきしていた。森昌子似の明るい女性が一人で来ていたからだ。常連達の中心になっているのはもちろん彼女であり、遠くの離れた席からもニコニコしながら彼女に話しかけている。また、彼女も嫌な顔一つしないで明るくそれに答えていた。その日彼女は『たにし』の人気者、それ以来彼女は『たにし』のおじさん達のアイドルになっていた。大先輩たちも”昌子ちゃん”と親しそうに声をかけている。僕などはかなり『たにし』に通ってやっと覚えて貰ったのに、彼女は本当に一日でみんなの人気者、やっかみ半分、女性の魅力は凄いものだと実感した。

ちなみに彼女を初めて『たにし』に連れてきたのは、他でもない”N”さんだった。

2000年5月  作井 正人


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