サッチャンのコンサートに行くの記
ライブコンサートで歌う沙知ちゃん(中村 譲 提供)
ある年の暮れのことでしょう。確か新宿だったと思いますが、作井君といっしょに荒井沙知さんのコンサートを聞きに行きました。それは何人かが出演するコンサートで、山崎ハコさんも出演していました。ところで、会場に着く直前のことです。沙知さんへのお土産を持って行かねばならないことに気づき、たまたまジャガイモを売っている店があったので、それを持って行くことにしました。どうしてジャガイモになったのか今でも分かりませんが、沢山あって立派で安かったのは憶えています。楽屋に持って行ったのですが、そんなに重いものは持って帰れないと沙知さんにやんわり断られてしまいました。全くその通りです。僕だってそのまま持って帰る気にはなりません。重い上に、一人で食べるには余りに多すぎます。そこで作井君に持って行ってもらうことにしました。作井君の家族は多いのですーーなんて理由を付けましたが、哀れ作井君、重い荷物を持たされて迷惑なことであったでしう。
それから数日後のお正月のことです。猫と一緒に炬燵で淋しくトグロを巻いている僕の部屋に作井君がやって来て、おばあさんが作ったという肉ジャガを抱えていました。沙知さんに拒否されたジャガイモで作ったが、多すぎて余ったので持って来たとのこと。何はともあれ、有り難いお土産で嬉しかったし、何と言ってもおいしかった。「さすがに俺が目を付けたジャガイモだけのことはある」と非常に満足でもありました。もちろん、作井君のおばあさんの腕が良かったのですが。
上左より、そば森、ギタ森、本屋中村Jr、吉田、中村、?
下左より、遠藤先生、ペンキ屋石井、沙知さん、作井(一部 敬称略)
沙知さんのコンサートには何回か行きましたが、写真(撮影者不明)は渋谷のスナック(?)でのワンマンショーのものです。たにしの常連で行きましたが、良い雰囲気でした。終了後、店のマスターが作ってくれた肉の入った丼が鰻丼に味が似て絶品でした。確かフィリピン料理と聞いた気がします。
沙知さんは「赤い鳥ひとり」というLPを出しました。作詞はほとんど寺山修司さんのものです。「荒井沙知の歌は、ブルースと童謡とをおりまぜたようなひびきをもっている」(S・T)とガイドに書かれています。うまい表現です。「生まれはどこかときかれたら だまって夕陽をみていたね」。いかにも寺山的で暗いものがありますが、20年以上経って聞いてみると懐かしさを感じます。ところで、LPは2枚買って1枚は誰かに上げたと思います。ところが、当時の僕はプレイヤーを持っていなかったのです。それで慌てて丸井でローンで買いました。蓋の上はプレイ中は暖かいものだから、猫が良く寝そべっていたものです。レコードが回っている上で猫が寝ているーー全く不思議な光景でした。
プレーヤの上で寝そべっている”お軽”の背中にある、LPは沙知ちゃんのアルバム(当時、丸井のクレジットの保証人は石橋さんです。現金(キャッシュ)の余裕の無かった当時の中村さんは丸井のクレジットを愛用していた。)
撮影 中村 譲 1977年頃 自宅 あさひ荘にて
2000年3月 中村譲