蝉時雨
昔々のことだった
眩しい日差しと蝉時雨
あれは目白の暑い夏
昨日のように思い出す
東京を離れ暮らして四半世紀
好景気、続くバブルに大不況
サラリーマン
あっと言う間のことだった
返っては決してこない過ぎた日々
ふと数えてしまう、そんな時
無性にあの頃、あの時の
あの友”たち”に出会いたい
もしもなんとか、叶うなら
タイムマシンで帰りたい
若さも気力も取り返し
昔のようにバカをして
涙が出るほど笑いたい
大好きな人と叶った、初デート
感きわまりて、胸躍る
チラッと見えたボトルには
他人姓での彼女の名
あそび半分でも書いたのか
グサッと胸が、抉られた
ながい時間が過ぎた今
それが、彼女の姓となり
昔、そんなことあったって
気づいてくれて、いたのだろうか
覚えてくれて、いるのだろうか
それは甘くてほろ苦い
`74年、目白の夏
学生だったあの頃に
想像なんかはしなかった
あの日と違う空の下
今日の暑さに蝉時雨
2002年7月31日 詠人不知