関根恵子と和敬塾


和敬塾の入り口


中を覗くと公園の様に緑に囲まれた環境


クラスに和歌山出身で関西弁のユニークな友人がいた。彼は目白にある和敬塾に住んでいた。それまで僕はその塾の名前も、塾の内容も良く知らなかった、何で大学に入学しているのに塾に通っているのだろう位にしか思っていなかった。

どうも彼から聞くと地方出身者の為の寮であるとのこと。ただし、入塾の条件には試験があり一定の成績以上でないと入れないとの事と同時に品行方正でないと退塾されるとの事。

ある日、彼から夏休みに田舎で免許を取ったので、東京で車を運転させてくれとたのまれた。運転を替わって助手席に座っていると、何度もヒヤッとしていた、特に車線変更の時に恐怖を感じた。そして圧巻は目白駅と学習院の間にある、日通のトラックの出入りする広い入り口で方向転換をした時だった。大型バスでも簡単にUターン出来るところで、バックでガードレールにぶつけバンパーをへこめてしまったのだ。見ていた大型トラックの運転手は大笑い…

『本当に、免許取っているんだよな!』彼に確認すると、和歌山での運転の試験には車線変更も無いそうだ、つまり一車線以上の道は近所にはなく、広い道で運転したことがないとのこと。

『じゃあ、運転試験の車線変更はどうするの?』の僕の問いに、『ウインカーを出して同じ車線の中で少し横にずれるだけで良いのだ!』また、つづけて彼は『バックミラーは普通は見たこともないし必要ない、だって他の車が走っていないから』

怖くなり、彼に運転させるのを即やめて貰った。そんな彼に、明治通、目白通りを運転させた事は僕の大失態だった。

そんなある日、彼と飲んだ帰り終電が無くなり、その和敬塾に泊めて貰うことになった。和敬塾は外来者を無断で泊めてはならない規則があるので、見つからぬように彼の部屋に忍び込んだ。

部屋の中に入るなり、『これが俺の彼女だ!』と自慢して差し出した四つ切りのカラー写真を僕に見せた。そこには彼が嬉しそうに綺麗な女性の肩を抱いて写っていた。僕が『おい、彼女、関根恵子にそっくりじゃないか!』と口走ってしまった。

彼と肩を抱かれてにっこりしている女性は関根恵子にそっくり。あまりの美人、酔った気分も吹っ飛んでしまった。

後で解ったことだが、和敬塾の裏には神田川が流れており、当時そこで映画の『神田川』のロケが有った。神経が図太く図々しい彼は(失礼)、堂々と関根恵子の肩を抱き写真に収まっていたのだ。

なかなか常人では成せる技ではない!!

2001年9月  作井 正人

戻る

注)http://homepage2.nifty.com/duarbo/versoj/v-folksong/kandagawa.htmより掲載

昭和40年代後半の同棲ブームに火をつけたのは、昭和47(1972)年11月から『漫画アクション』(双葉社)で連載が始まった上村一夫の劇画『同棲時代』でした。この人気に目をつけた松竹が、由美かおる・仲雅美主演で映画化し、由美かおるの絶品ヌードで評判になりました。『神田川』は、これらの劇画や映画に刺激を受けて作られたようです。南こうせつ、伊勢正三、山田パンダの3人組が歌った『神田川』は、昭和48年の大ヒットとなり、それにより東宝で映画化されました。主演は関根恵子(現在高橋恵子)と草刈正雄。

 神田川は、井の頭池を水源とし、早稲田大学の北側・飯田橋・お茶の水を通って、やがて隅田川に注ぎます。その中流域には、学生相手の下宿が多く、昭和40年代以前には、この歌のように、狭い下宿で同棲していたカップルもかなりいたようです。

注)上記のコメントは二木紘三さまのご好意によりご本人のホームページより借用の上で掲載させていただきました、ご好意に感謝いたします。