三月書房販売速報[125]
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2017/06/27[19-01-125]  (c)SISIDO,Tatuo    *転送歓迎* 

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 125号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] 2017/02/14の号外にてお知らせしたように、営業時間を短縮しましたが、朝夕各1時間
       仕事時間が減ったのでのんびりできる時間が増えて快適です。売上はやや下がったよう
       な気がしますが、まだ少し余裕があるので、次は週休二日にできないかと思案中です。
   
   
[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「脈 92号 特集:島尾敏雄生誕100年・ミホ没後10年」脈発行所   
  ◆「脈 93号 特集:鶴見俊輔の世界」脈発行所  
  ◆「続・最後の場所 4号」宿沢あぐりほか 編集・発行/菅原則生
  ◆「吉本隆明『言語にとって美とはなにか』の読み方」宇田亮一 アルファベータブックス
  ◆天草文化協会機関誌『潮騒』第32号  天草文化協会※完売
  ◆「遠い道程 わが神職累代の記」上村武男 人間社
  ◆「無名鬼の妻」山口弘子 作品社
  ◆「批評の熱度 体験的吉本隆明論」大井浩一 勁草書房
  ◆「島尾敏雄・ミホ - 愛の往復書簡」 中央公論新社
  ◆「琉球文学論」島尾敏雄 幻戯書房
  ◆「日本詩歌思出草」渡辺京二 平凡社
  ◆『「認知症七〇〇万人時代」の現場を歩く〜「人生の閉じ方」入門』
    (飢餓陣営せれくしょん6)佐藤幹夫 言視舎
  ◆「いま読む! 名著  震災後の日本で戦争を引きうける――
     吉本隆明『共同幻想論』を読み直す」田中和生 現代書館 
  ◆「もうろく帖 後編」鶴見俊輔 編集工房<SURE>
  ◆「これが好きなのよ 長新太マンガ集」亜紀書房
  ◆「小山清論ノート」サワダオサム 文芸タイムス社    
  ◆「ぽかん 6号」山田稔ほか ぽかん編集室
  ◆「あの頃」武田百合子 中央公論新社
  ◆「文藝別冊 中井久夫 精神科医のことばと作法」河出書房新社
  ◆「吉本隆明全集 第37巻 書簡1」 晶文社
   年4冊のペースで12冊出たところで第一期完結。このペースだと後7年足らずで全巻完結と
       なるはずだけれど、この巻が5月で次回が9月だから年2〜3冊のペースに落ちてしまいそう
       でちょっと心配。それと〈吉本〉本は読者ばかりでなく、編集者も高齢者が多いので、こちら
       も先行きが明るく ないような。「37巻」は全集の目玉巻で待望の配本だったのだけれど、
       いまのところ通常巻よりちょっと多い程度しか売れていません。十年前なら間違いなく大量
       に売れたはずなのですが。


[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「島尾敏雄・ミホ」河出書房新社編集部編 河出書房新社
  ◆「(歌集)景徳鎮」大辻隆弘 砂子屋書房※入荷済
  ◆「大辻隆弘講演集 子規から相良宏まで」青磁社※入荷済
  ◆「シュタイナー 根源的霊性論」シュタイナー 春秋社※入荷済
  ◆「編集とはどういう行為か?」松田哲夫他 編集工房<SURE>※入荷済
  ◆「飢餓陣営45 島成郎 総集号」佐藤幹夫・編集 飢餓陣営発行所
  ◆「吉本隆明質疑応答集 1 宗教」 論創社
   全7巻。こんなものまで売れるのかと思ったけれど、全巻予約が意外と多い。隔月刊なので
       1年ちょっとで完結する予定だから、高齢の読者でも手を出しやすいようだ。

  
[#03]  短歌本の売上げ(TOP9) 2016/06〜2017/05

  01 20冊 「(歌集)鳥の見しもの」吉川宏志 本阿弥書店
  02 15冊 「(歌集)馬上」小島ゆかり 現代短歌社
  03  8冊 「(歌集)晴れ・風あり」花山多佳子 短歌研究社
  04  7冊 「読みと他者」吉川宏志 いりの舎(a)
  05  6冊 「(歌集)キリンの子」鳥居 KADOKAWA(b)
  05  6冊 「(歌集)人魚」染野太郎 KADOKAWA
  05  6冊 「(歌集)無縫の海 短歌日記2015」高野公彦 ふらんす堂
  05  6冊 「歌ことば100」今野寿美 本阿弥書店 
  05  6冊 「(歌集)行け荒野へと」服部真里子 本阿弥書店(c)
   ※(a)通算17冊、(b)通算9冊、(c)通算32冊
   
   これはうちの店だけのことかどうかは知らないけれど、短歌本の売れ行きも落ちている。
       うちの場合はやはり〈吉本〉本と同じく、団塊の世代から上のお客が減りつつあるのが大きい。
       この世代のご婦人方は、いわゆるカルチャ講座の隆盛期に短歌を始めた人たちが多く、
      けっこう懐具合の良さそうな方が多かった。しかし、そのカルチャ講座もひところほどの活気は
   ないみたいだし、短歌結社はごく一部を除くとどこも高齢化による会員減少が顕著で、継続が
   困難になりつつあるところも少なくないらしい。カルチャ講座や結社に不参加の若い人たちも
   いないわけではないけれども、もともとの人口が少ない上に、ネット歌会や電子本に流れてい
   る部分も多いようだ。しかし、そんなことよりも根本的にまずいのは、俳句や現代詩と同様に、
   実作者ばかりで純読者がいなくなりつつあることだろう。1970年代には現代詩に飽きて移行
   してきた読者たちが、塚本邦雄、齋藤史、寺山修司、前川佐美雄、葛原妙子、春日井建など
   を大量に買ってくれたものでした。このままだと、いずれは歌集も俳句や詩と同様に、ふつう
   の読者が買って読むのは岩波文庫あたりのだけになるのでは。ただ、歌人たちは詩人や
   俳人に比べると勉強熱心で、歌書をたくさん買ってくれる傾向があるので、まだしばらくは
   商業出版も可能と思いますが。
   
   
[#04]  日販への返品率

   2010年   書籍23.5% 雑誌28.4%
   2011年   書籍23.5% 雑誌27.2%
   2012年   書籍21.3% 雑誌31.0%   
   2013年   書籍21.8% 雑誌30.0%
   2014年   書籍21.3% 雑誌33.7%
   2015年   書籍20.0% 雑誌34.3%
   2016年   書籍21.3% 雑誌31.6%

   昨年も大きな増減はなかった。うちの場合、返品は金額を考慮することはなく、ただただ、
   新たに仕入れた分を並べる場所を空けるために返品するというのが基本である。ほんと
   はもう少し多い目に返品しないと棚がきつくて、並べきれずにはみだしているのだけれど
   も、まだ売れるかもと思うとなかなか返品しきれない。それでも、以前よりは日販経由の
   在庫金額はかなり減ってはきている。これは、バックヤードのストックが減少したことと、
   直扱いとバーゲン本が増えたからである。日販への返品は率的にはもう少し増やしても
   大丈夫そうだけれど、今年も5月現在むしろ減ってるくらいだ。
 

[#05]  <天に唾する>京都の書店のうわさ(その87)   

 ○天狼院書店「京都天狼院」とかいうのが、1月末に京阪四条駅の南東に開店したらしい
  けれど、まだ見学に行ってないので何もわからない。東京と福岡に続く3店目ということだ
  けれど、サイトを見る限りでははたして、どの程度の割合で「本屋」なのかさっぱり見当が
  つかない。 
  
 ○四条河原町のマルイに入店していた「FUTABA+京都マルイ店」が1月31日に閉店した。
  この店は2011年5月の開店だったが、当初はメインの6階以外に1〜5階にも極小売場が
  点在していて、管理がやたらに面倒そうでしたが、やはりほどなく6階以外は撤収されま
  した。開店直後に見学行って以後、一度も入店してないので、その後どうだったのかは
  まったく知りません。
  
 ○京都地方裁判所の東隣(丸太町通富小路角)の法律書専門「高文社書店」が3月末?
  で閉店された。店頭にはごく少し一般書や週刊誌等もおいておられたようだが、メインは
  弁護士事務所や司法書士事務所や大学の法学部等への専門書と専門雑誌の外商だっ
  たはず。ちかごろまったく付き合いがないので、閉店の理由は聞いていないが、おそらく
  店主高齢、後継者不在というようなことでしょう。あるいは、法令や判例等がネットで公開
  されるようになったので、売れ行きが落ちたのかもしれませんが、そのあたりはまったく
  わかりません。


[#06]近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など
  
  前号以降、知ってる限りでは「シィーム出版」、「比較文化研究所」「インターデザイン」、
  「週刊住宅新聞社」、「可成屋」、「エフエム企画」、「ニューハウス出版」、「ニュートンプレス」、
  「キョーハンブックス(日本地図共販)」が破綻したようです。
  さいわいなことに、うちの店にはほとんど縁のない版元ばかりなので、返品不能や売り損ね
  の被害はまったくありませんでした。なお、これらの情報源は“不景気com.”と“地方小出版
  流通センター
”です。
  
  
[#07]  etc.…

 ○アマゾンがバックオーダー発注を止めて、出版社との直取引を増やそうとしている件で理解
  できないのは、「なぜ出版社はマーケットプレイスを利用しようとしないのか?」ということです。
  アマゾンとの直取引は以前から「e託販売サービス」というのがありますが、これはもともとは
  一般流通していない自費出版物などでも販売可能になるということで始まったものでした。
  正味60%が基本だったようですが、今回、出版社に提案しているのはもう少し率がよくなる
  ようです。しかし、当初は良くても、いずれは切り下げられるのではという、かなりありそうな
  危惧を抱いている向きが多いようです。
  ところが、マーケットプレイスなら、正味85%で他に手数料(プロ契約は月4900円、一般は
  1件毎に100円)がかかりますが、別に送料が150円程?もらえるので、e託よりははるかに
  利益率が高く、しかも、契約条件は一律なので開始にあたってのめんどうな交渉は一切あ
  りません。出版社が自社本をマーケットプレイスで定価販売するなら、再販制がらみの問題
  もまったくないでしょう。出品者名に社名を出すのを何らかの理由で避けたいのなら、ハンド
  ルネームでも可能だし、ある程度まとまった量が売れそうなら、別に販売会社を立ち上げれ
  ばよいでしょう。それに、別会社なら返品で傷んだ本を値下げして売ることも、在庫僅少本を
  定価より高く売ることも可能です。自社での梱包発送がめんどうなら、アマゾンのフルフィル
  メントを利用することもできますが、これでもe託よりは条件がよいのでは。
  マーケットプレイスに新本を定価で出品しておけば、お客を待たすことはなくなるし、ポイント
  は付加されないので、水声社さんも販売拒否する理由がないのでは。アマゾンは各種税金
  をちゃんと支払っているのだろうかとか、不審な点もなくはありませんが、マーケットプレイス
  のシステムだけは、真に画期的だと、高く評価しています。
  もし、マーケットプレイスを利用する出版社があるようなら、ひとつだけ忠告しておきますが、
  現在、われわれ書店がバックオーダー発注したときに、小口研磨の過剰なのや帯のないの
  などを平気で送品して来られることが少なくありませんが、あの状態の本を「新品」として出
  品したら、状態が悪いと苦情が来ること間違いなしなので、ご注意ください。
  
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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜124号)」はHPにて公開中です。
     
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     (c)SISIDO,Tatuo     三月書房
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