三月書房販売速報[129]
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2018/12/15[20-03-129]  (c)SISIDO,Tatuo    *転送歓迎* 

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 129号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] 2月19日から月曜と火曜を定休日とする週休二日制にしました。営業
   時間が17%減に対して、売上は10%ほどしか落ちていないようなの
   で、まずは順調と言えるでしょう。

   2002年から2016年2月までは週休一日、日曜のみ6時間、その他の5日
   が各8時間で計46時間営業。   
   2017年2月からは週休一日、各日6時間にて計36時間営業。
   2018年2月からは週休二日、各日6時間にて計30時間営業。
   そして来年は週休三日で計24時間営業にする予定ですが、いずれは週
   休四日とか五日とかも、試してみたいと思ってます。そしてそう遠く
   ない時期に、めでたく週休七日になるでしょう。
   
   出版業界はここ20年ほどで売上がほぼ半減し、出版輸送網の維持が困
   難になりつつあり、書店や出版社の運賃負担増は避けられそうにあり
   ません。消費税は上がるし、ばかげた軽減税率には、わけのわからな
   いポイント還元が上乗せされるし、ゆうメールやゆうパックや宅配便
   の送料は上がったし、ゆうメールの定形外は廃止されたし、土日の郵
   便配達もなくなるらしいし、郵便振替の手数料も大幅値上げ予定とか。
   しかも、その上にレジ袋の有料化まで法律で強制されるようでは、く
   そばかばかしくてやってられません。うちの店は、営業時間を徐々に
   減らしつつ、ゆるゆると逃げる準備をしているところですが、こんな
   ことならのんびりしていないで、脱出を急ぐべきかもしれません。
   
   
[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「ロック・ミュージックのオカルト的背景」グライナー SAKS-BOOKS
  ◆「耳を傾ける人間 音楽体験の本質」フーゼマン 涼風書林
  ◆「(歌集)六六魚」小島ゆかり 本阿弥書店
  ◆「(歌集)春の顕微鏡」永田紅 青磁社
  ◆「(歌集)水中翼船炎上中」穂村弘 講談社
  ◆「(歌集)ランプの精」栗木京子 現代短歌社
  ◆「文学を食べる」小山鉄郎/ハルノ宵子・画 作品社
  ◆「推薦文、作家による作家の全集内容見本は名文の宝庫」風濤社
  ◆「いじめの解決 教室に広場を」村瀬学 言視舎
  ◆「小岩へ 父敏雄と母ミホを探して」島尾伸三 河出書房新社
  ◆「脈 98号 写真家 潮田登久子・島尾伸三」脈発行所※完売
  ◆「脈 99号 今氏乙治作品アンソロジー/名編集者・上間常道」脈発行所  
  ◆「飢餓陣営 47号」編集・佐藤幹夫 飢餓陣営発行所
  ◆「続・最後の場所 6号」編集/発行・菅原則生
  ◆「アルテリ6号(石牟礼道子追悼号)」 アルテリ編集室
  ◆「黒のマガジン3号」”特集・水木しげるとアメリカンコミックスの
    世界”編集・発行 藤本和也
  ◆「渚に立つ――沖縄・私領域からの衝迫」清田政信 共和国
  ◆「ぽかん 8号」山田稔ほか ぽかん編集室  
  ◆「やちまたの人」涸沢純平 編集工房ノア
  ◆「卜部哲次郎・鐵心和尚集」大竹功編著 仮立舎

   
[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「(歌集)牡丹の伯母」米川千嘉子 砂子屋書房※入荷済
  ◆「(歌集)架空線」石川南 本阿弥書店※入荷済
  ◆「預言の哀しみ 石牟礼道子の宇宙2」渡辺京二 弦書房
  ◆「シュルレアリストのパリ・ガイド」エディション・イレーヌ※入荷済
  ◆「(歌集)遠くの敵や硝子を」服部真里子 書肆侃侃房※入荷済
  ◆「親鸞の言葉」吉本隆明 中公文庫


[#03] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その91)

 ○京都の中心街にあった岩波書店専門取次の不退書店が10月末で閉店さ
  れた。市内の書店は減る一方だし、岩波の本も昔のようには売れない
  ので廃業されたのだろう。おぼろげな記憶によれば、まだ新刊書店が
  景気のよかった1980年代頃には、同所で小売書店(※店名は思い出せ
  ない)を併設されていたが、こちらはかなり以前に閉店されたはず。
  うちの店も1950年の開店からしばらくは、岩波の本はすべてここから
  仕入れていたが、鈴木書店と取引を始めてからはほとんど取引がなかっ
  た。今世紀初頭の鈴木書店倒産時には、岩波の本の売上が相対的に大
  きく低下していたこともあって、以後は日販からふつうに仕入れてい
  る。うわさでは不退の岩波本は他の取次よりもごく少し正味が低かっ
  たらしいが、わざわざ仕入れに出向くほどのことはなさそうだった。
  不退書店がいかに岩波の特約問屋であったとはいえ、閉店に際して売
  れ残りをすべて返品するというわけには行かなかったようで、某筋か
  ら岩波新書を安く仕入れてくれないかという打診があったが、即断っ
  たので、卸値がいくらなのかは聞いていない。おそらく単行本とか文
  庫とかはどこかが買い取ったが、新書だけは買い手がなかったから、
  うちに話が来たのではないでしょうか。しかし、うちは新本専門なの
  でどんなに安く仕入れてもバーゲンはできないし、たとえ半額以下で
  販売できたとしてもたいして売れないでしょう。新書は生ものなので
  売れ止まるのが早く、返品不可の岩波新書はショタレ化してしまうの
  が多いので、近年はよほどうちに向いたものでなければ仕入れないよ
  うにしています。
    
 ○「男の隠れ家」12月号の特集は“お気に入りの一冊に出会える 本のあ
  る空間。」
  京都では「誠光社」「ホホホ座浄土寺店」「恵文社一乗寺店」「三月書
  房」と「MONTAG BOOKSELLERS」が載っています。このモンターグ・ブッ  
  クセラーズというのは全く知りませんでしたが、2年くらい前に開店し
  た“海外文学をメインに品揃えした小さな本屋”だそうです。歳のせい
  か、店名がカタカナやアルファベットの新しい本屋はちっとも覚えられ
  ません。ガケ書房とか善行堂みたいなのが覚えやすくてよいのですが。
    
 ○G.B.(※あえていうなら、出版社名としては最悪に近いのでは。出版
  社名とはわからないし、検索してもアルファベットの略語の群に埋没し
  ています。出版を続けるのなら社名あるいブランド名を変更すべきでは)
  から8月に出た「全国 旅をしてでも行きたい街の本屋さん」はなかなか
  見やすくまとめてあって便利な本です。
  

  京都では「ホホホ座浄土寺店」「恵文社一乗寺店」「マヤルカ古書店」
  「CAVA BOOKS」「小さな絵本美術館・カフェ響き館」「ミシマ社の本屋
  さん」「誠光社」「三月書房」「竹苞書楼」「アスタルテ書房」「Books
   & Things」「レティシア書房」「山崎書店」が登場。よく知らない店や
   新しい店がいくつかありますが、どこもなにやら説明がややこしくなり
  そうなのばかりなので現物を読んでください。しかし、こうして並ぶと、
  古本も雑貨も飲み物も売らず、ギャラリーも掘り炬燵もなく、イベント
  もしない“ふつうの新刊書店”は三月書房のみのようです。うちの店も
  自分が今より30歳ほども若くて、まだまだこの商売を続けねばならない
  としたら、古本を扱うとか、ギャラリーを併設するとかを、遅くとも数
  年前には決断していないと手遅れになっていたことでしょう。
    

[#04] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など
  
  前号以降、海悠出版、週刊秋田社、リンダパブリッシャーズ、モーニ
  ングデスクが破綻したらしいが、うちの店とはほとんど縁がなかった
  ので。どんな出版社だったのかは知らないし、売れ残りもありません。
  ちかごろは、それなりに名がある出版社がピンチになっても、破綻す
  ることなく、知らぬ間にどこかの子会社になっていることが多いよう
  です。少し古い例ですが、山と渓谷社がインプレスの子会社になった
  とか、新人物往来社が中経出版の子会社になり、その中経出版も角川
  グループに吸収されたとかいうようなことです。角川もそうですがツ
  タヤも積極的に出版社を買収しつあり、徳間書店、主婦の友社、ネコ・
  パブリッシング、復刊ドットコム、美術出版社、光村推古書院他いろ
  いろが子会社になっています。大日本印刷が丸善とかジュンク堂とか
  文教堂などの書店群を子会社化したときは、いったいどんな利益が見
  込めるのか、あるいは慈善事業のつもりなのか、まったく理解できま
  せんでしたが、角川やツタヤが出版社を集めるのは、まだわからない
  でもありません。昔の名前で出版を続けているけれど、実はどこかの
  子会社になっている出版社の一覧表はどこかにないでしょうか。
  
  
[#05] etc.…
 
 ○ちかごろめんどうなのが、角川文庫などの短冊廃止です。何年か前か
  ら、講談社コミックはそうなっていましたが、コミックはさほど売れ
  ないのでちょっと気になる程度でした。しかし、角川文庫はちまちま
  と数多いので、短冊無しで入荷したのには、手製の短冊を挟まないと
  管理できません。短冊無しでも返品できるようになったこととか、売
  上カードを定期的に送る必要がなくなったのは楽ですが。そして、短
  冊廃止するとどのくらいの経費節約になるのかは知りませんが、ポプ
  ラ社とか平凡社とか追随する出版社が続出していますから、いずれは
  短冊無しが主流になってしまいそうです。いまのところ、短冊なしに
  なった出版社は、受注サイトがあるのでまだましですが、今後受注サ
  イトのない出版社が短冊なしになったら、いちいち手書き伝票で発注
  しなくてはならないので煩わしくてかないません。うちの店はもう先
  が長くないので、いまさらどうでもいいですが、もしもまだ何十年も
  続けるとしても、ポスレジは導入したくありません。うちの店の商品
  にはバーコードがついていない自主流通物が多いし、バーコードがつ
  いていても自動発注などしたくありません。

 ○今年も「週刊読書人」の“アンケート特集「2018年の収穫」”に寄稿
  させていただきました。2018年12月14日号です。図書館ででも読んで
  みてください。
  ご参考までに昨年(2017年12月15日号)の分を再録しておきます。
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  清家雪子『月に吠えらんねえ』(既刊7冊)講談社。
  詩歌句が苦手で面白いと思ったことがほとんどない。よーするに下戸
  が酒屋をしているようなものですが、この漫画を読んで少し面白いか
  もと思えるようになった。それにしても、現代には朔太郎、白秋、中
  也、賢治らに匹敵しうる詩人が皆無と思われるのは、小生が詩歌句オ
  ンチだからでしょうか。
  上村武男『遠い道程 わが神職累代の記』人間社。
  『吉本隆明手稿』などの著書がある人の本なので読んでみたら、地方
  の小社のありかたとか、神主一家の暮らし向きとかなかなか興味深かっ
  た。神社はぼちぼち古来の神仏混淆に戻したほうがよいのでは。
  ライアン・エイヴェント『デジタルエコノミーはいかにして道を誤る
  か』東洋経済新報社。
  AIによって従来の仕事の多くが食えなくなる日が近いという話題に
  は大きな関心がある。さっさと店じまいし、隠居老人として高見の見
  物をしたいなと希望しているのですが…。
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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜128号)」はHPにて公開中です。
     
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