三月書房販売速報[131]
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2019/10/08[21-02-131]  (c)SISIDO,Tatuo    *転送歓迎* 

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 131号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] ごくゆるゆると、そう遠くはなさそうな、閉店に向けて、まこと
   にのんびりと作業を進めているのですが、だれにせかされている
   わけでもないし、なんらかの期限があるわけでもないし、負債も
   まったくないので、いまいち急ぐ必要が感じられなくて、ほとん
   どはかどっていません。いまのところすこーし在庫が減りつつあ
   るかなという程度です。
   うちの商売の現状は、たいして儲かっていないことを別にすれば、
   通勤時間はゼロだし、仕入れにも配達にも行かないし、従業員も
   いないしでまことに気楽なものです。ちかごろは営業時間も短く
   したし、お客も減りつつあるので、店番しているときも、読書し
   たり、ネットで遊んだりで、ぜんぜん退屈しません。
   このままもうしばらく続けられないこともないのですが、今年で
   七十歳になったし、後継者も不在なので、元気なうちに整理せね
   ばと思っているところです。日販だけとの取引だったら、いつ倒
   れてもさほど問題なく片づくはずですが、うちの場合はその他の
   細かな直接仕入れが多く、ネットでの通販も少なくないので、自
   分がやらないと、きれいに片づきそうにないのだけが問題です。
   

[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「祭り裏」島尾ミホ 幻戯書房
  ◆「光の海〜シュタイナー世界からの死の考察と死との向き合い方」
    ミヒャエル・デーブス 精巧堂出版
  ◆「ナマの亀岡」グレゴリ青山とキリカメ7 かめおか霧の芸術祭
  ◆「(歌集)風にあたる」山階基 短歌研究社
  ◆KAWADEムック「永遠の太宰治」河出書房新社
  ◆「追悼私記 完全版」吉本隆明 講談社文芸文庫
  ◆「光太郎ルーツそして吉本隆明ほか」北川太一 文治堂書店
  ◆「逸脱する批評」齋藤愼爾 コールサック社
  ◆「二つのメモランダム」ルドルフ・シュタイナー 涼風書林
  ◆「海老阪武のかんたんフランス料理」編集グループ<SURE>
  ◆「吉本隆明からはじまる」瀬尾育生 思潮社
  ◆「アルテリ」8号 アルテリ編集室
  ◆「脈 102号 黒田喜夫と南島」脈発行所
  ◆「脈 101号 勝連敏男という詩人」脈発行所
  ◆「山田稔自選集 1」編集工房ノア


[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「本はどのように変わっていくのか」津野海太郎 編集グループ<SURE> ※入荷済
  ◆「飢餓陣営 49号」編集・佐藤幹夫 飢餓陣営発行所 ※入荷済
  ◆「(歌集)鳥影」花山多佳子 角川書店 ※入荷済
  ◆「(歌集)梨の花」小池光 現代短歌社※入荷済
  ◆「(歌集)紫のひと」松村正直 短歌研究社※入荷済
  ◆「アルテリ 別冊 顔」渡辺京二 アルテリ編集室※入荷済
  ◆「夢ひらく彼方へ(上)」渡辺京二 亜紀書房※入荷済
  ◆「京都詩人傳」正津勉 アーツアンドクラフツ※入荷済
  ◆「幻燈15 追悼・うらたじゅん」北冬書房 ※入荷済
  ◆「人間と大地における惑星の作用と生命プロセス」ベルナード・リーヴァフッド 涼風書林 ※入荷済
  ◆「門司の幼少時代」山田稔 ぽかん編集室

  
[#03] <山田稔>本の売上

  いわゆる文芸書はたいして売れませんが、ここ20年近く例外的
  に売れ続けているのが、編集工房ノアが刊行している山田稔氏
  の本です。うちの場合文芸書は以前なら5冊、いまなら3冊も売
  れれば上等ですが、ノアの山田本の売れ行きは桁が違います。
  例えば2015年7月刊の「天野さんの傘」(2000円+税)は117冊、
  2018年6月刊の「こないだ」(2000円+税)は74冊も売れています。
  今年の7月に出たばかりの「山田稔自選集1」は40冊しか売れて
  いませんが、これは旧作の再編本なのでやや少な目でも不思議
  ありません。いままでにもっともよく売れたのが、2000年刊の
  「北園町九十三番地:天野忠さんのこと」(1900円+税)で、実
  数は不明ですが300冊位は売れたでしょう。過去に300冊以上売
  れた単行本は、吉本隆明の「共同幻想論」「敗北の構造」等を
  別にすれば、三木成夫の「海・呼吸・古代形象」しか記憶にあ
  りません。
  編集工房ノアのその他の著者の本では、天野忠が毎年数十冊売
  れているほか、川崎彰彦、杉本秀太郎、杉山平一、三輪正道、
  永瀬清子、鶴見俊輔、富士正晴、足立巻一などもコンスタント
  に売れています。涸沢純平社主の「遅れ時計の詩人 編集工房
  ノア著者追悼記」と「やちまたの人 編集工房ノア著者追悼記
  続」もそれぞれ66冊と36冊売れています。
  (以上のデータは2019年9月末現在)
  山田本はたしかに面白いことは間違いありませんが、なぜ、う
  ちの店でこんなによく売れているのかはいまいちよくわかりま
  せん。流通関係で言えば、地方小出版流通センター扱いの買い
  切りであるため、常時在庫している書店が限られていることが
  大きいでしょう。同社が年一回発行しているPR誌兼出版目録の
  「海鳴り」の人気は非常に高いのですが、同社のご厚意により
  これを大量にいただいて、おまけとして付けることができてい
  る効果も少なくないはずです。現在、ノアの本の売上は、通販
  と店売がほぼ半々でが、通販のよいところは、事前予約率が非
  常に高いことです。ぽかん編集室が今月刊行する山田氏の新刊
  「門司の幼少時代」もすでに30冊以上予約が入っています。店
  売りも合わせると年内に少なくとも60冊は売れるでしょう。
  [山田稔の本]


[#04]  短歌本の売上げ(TOP8) 2018/06〜2019/05

  01 22冊 「(歌集)六六魚」小島ゆかり 本阿弥書店
  02 12冊 「(歌集)ランプの精」栗木京子 現代短歌社
  03  9冊 「(歌集)海蛇と珊瑚」薮内亮輔 角川書店
  04  7冊 「(歌集)春の顕微鏡」永田紅 青磁社
  04  7冊 「(歌集)行け荒野へと」服部真里子 本阿弥書店(a)
  06  6冊 「(歌集)やがて秋茄子へと到る」堂園昌彦 港の人(b)
  06  6冊 「(歌集)遠くの敵や硝子を」服部真里子 書肆侃侃房
  06  6冊 「私の前衛短歌」永田和宏 砂子屋書房(c)  
   ※(a)通算43冊、(b)通算28冊、(c)通算16冊
   
  例年のことながら、売れそうな歌集の出版は7〜9月が多いのですが、
  上記は今年5月までなので、それ以降のは含まれません。
  今回の集計でも歌書の売上の漸減傾向はかわりませんでした。これは
  いつも書いていますように、購買者の中心であった、団塊世代から上
  のご婦人方の高齢化が、もっとも大きな理由であろうと思われます。
  詩歌句は苦手で、まったく読まないため、近頃の歌集が一昔前のよく
  売れた頃のよりも、つまらなくなっているのかどうかは不明です。

   
[#05]  <天に唾する>京都の書店のうわさ(その93)   

 ○「開風社 待賢ブックセンター」が3月29日に開店しました。
  多店舗展開している会社の旗艦店のような店名ですが、自宅の一部を
  利用した5坪ほどの小店だそうです。営業日は開店当初は金土日の週
  3日でしたが、現在は木曜も営業しているようです。店主は元ミシマ
  社にいた人で、休業日には某有名書店でバイトもしているらしい。見
  学に行こうとは思っているのですが、うちの定休日と重なるのでまだ
  行けてません。  

 ○「恵文社バンビオ店」が2月11日に閉店してました。テナントビル側
  の都合だそうですが、詳しいことは知りません。これで恵文社は一乗
  寺と西大路の2店になりました。  
  
 ○「喜久屋書店漫画館京都店」も2月11日に閉店してました。 
  喜久屋書店は神戸や大阪には多店舗あるようですが、京都には1店も
  なくなりました。
  
 ○「文教堂JQストア京都店」は5月26日に閉店しました。元はブックスト
  ア談で、文教堂に吸収されてからは、「まんが館」、「ビーズ・ホビー
  店」とか、いろいろやっていたようですが、どんどん書店から離れてい
  く傾向でした。最後は文具・雑貨が主で、書店関係としては3階に「ア
  ニメガ京都店」がわずかに残っていたようです。  
  
 ○大野文省堂書店(中京区三条通大宮東入ル)が閉店されたようです。
  時期は不明ですが2017年6月以降のことでしょう。
  
 ○大垣書店北大路店が10月12日に閉店するそうです。ここは今年の春まで
  はずっと本店でしたが、四条烏丸西の新店を本店にして、ここは北大路
  店になってました。同店のツィートによれば1942年の開業だったそうで
  す。書店バブル以前の時代だと、この程度の規模(4階建百坪強)でも、
  京都書院、青木書店、葵書房、駸々堂、オーム社などと並んで京都市内
  を代表する書店でした。1990年代初めまでは小さな支店が2店あるだけ
  でしたが、1995年に元本店北向いの北大路タウンのビブレに出店して以
  降<大発展>したので、元本店は今となっては手狭になっていたのでしょ
  う。それにしても、いくら<大発展>したとはいえ、なぜ、北海道に支
  店を持つことになったのか(持たされたのか)は理解できませんが。


[#06] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など
  
 ○地方小出版流通センターのサイトによると、前号以降、
  あむすく、圓津喜屋、芸心社、白地社、街から舎.新樹社[(シンキ
  シャ。新樹社(シンジュシャ)とは別]、創言社、出版舎Mugen、
  丹精社などが廃業されたとのことです。  

  白地社は地元でもあり、以前から付き合いがあったのですが、4月ごろ
  廃業されたというのはまったく知りませんでした。1970年代の創業で、
  自費出版以外にも、なかなかちゃんとした詩集、文学書、思想書などを
  刊行していました。雑誌「而して」(※国文社の「磁場」の類似商品)も
  20号近く続いたはず。社長の気分が高揚して編集者を何人も抱え、ご大
  層な企画を連発した時期もありましたが、これは長続きせず、以降は自
  費出版を主にしてぼちぼちやっていたようでした。吉本隆明の「試行」
  の寄稿者、上村武男、浮海啓等の著書も何冊か出していましたが、この
  出版社の代表作は内堀弘著「ボン書店の幻 モダニズム出版社の光と影」
  でしょう。これは現在ちくま文庫になってます。
  
  福岡の創言社は瀧澤克己の著作を多く出版していて、1970年前後にはか
  なりよく売れた記憶がありますが、瀧澤本が次第に売れなくなって、以
  降はほとんど仕入れた記憶がありません。
   
 ○青蛙房が昨年末か今年初ごろに廃業されたらしい。岡本綺堂の孫で2代
  目社長だった岡本修一氏が昨年9月にお亡くなりになり、その後経営を
  引き継ぐ方がおられなかったようです。日販サイトによれば2018年5月
  に某書の新装版を出したのが最後のようです。2019年3月発行の「日販
  取引出版社名簿」にも掲載されていません。うちの店ではずっと以前か
  ら同社の自由価格本を多く扱っていますが、再販本は近年はほとんど仕
  入れた記憶がありません。


[#06] etc.…

 ○ついに消費税が10%になってしまいました。藤井聡京大教授の説によれ
  ば、消費税がなければ、GDPは今よりも増えていたし、国の借金もうんと
  少なかったはずだということです。そもそも日本は輸出よりも内需のほ
  うがはるかに大きいのに、輸出企業ばかり優遇して、国内の消費には罰
  税を課すというのは間違っています。その上、インボイスの導入を見送っ
  たにもかかわらず、軽減税率とか5%還元とか煩雑なことを強制しまし
  たが、ちょっとした企業でも、電算ソフトの修正や値札やカタログの書
  き換え等に無駄な費用がかかって迷惑この上ないようです(うちの店は
  レジと電卓の設定変更のみで損害なし)。しかし、新聞社が完全に骨抜
  きになっているので、マスコミ報道はまったく役に立ちません。新聞社
  が財務省に大きな借りを作ってまで、軽減税率に固執したのはまことに
  みっともないことでしたが、これは発行部数の数割に達する「押紙」の
  架空売上に対する消費税負担
に耐えられないからだそうです。
  
  新聞協会は10月7日に軽減税率適用への見解を表明しましたが、これが
  あいかわらず手前勝手なバカ丸出しのもので、“「知識に課税しない」
  という考えが定着する欧州各国”とか書いてますが、そんなに欧米が
  ありがたいのなら、あちらの国々のように、再販制度はいらないし、新
  聞と放送の兼業も禁止にするべきでしょう。書籍や雑誌が軽減税率の適
  用を受けずにすんだのだけが、ごくささやかな救いでした。
  
  どうでもいいとは思いましたが、希望されるお客も少しはあるだろうと
  いうことで、うちの店も5%還元の申し込みをし、無事に認められまし
  た。うちの場合は店頭でのクレジットカード利用のみに適用されます。
  この申し込み手続きがとてつもなく面倒なものでしたが、その大部分を
  日販本社のクレジット係の方が代行してくれたので、たいへん助かりま
  した。日販を統括窓口にしてクレジット契約している書店は1000店以上
  あると思われますが、一円も儲からない業務を代行させられたその手間
  と経費は莫大だったことでしょう。うちの場合、日販が代行してくれた
  とは言え、それでも住民票や納税証明書などを入手し、それを書留で日
  販に送る等、手間や経費がごく少しかかりました。そして、いまのとこ
  ろとくにクレジット利用が増えているようにはありません。それどころ
  か売上そのものが落ち込んでいますが、10%になってから正味5日しか営
  業していないので、これはまだなんとも言えません。

 ○短冊廃止の版元は増える一方でまったく珍しくもなくなってきました。
  筑摩書房の9月10日付けの案内によれば、同社が売上短冊の集計を委託
  していた業者がこの業務から撤退するからとのことです。筑摩書房とは
  別の某大出版社の社長に先日聞いたところでは、この社では短冊の集計
  だけで年に2000万円かかり、短冊の印刷費、挟み込み費等を合わせると
  総額はかなりの金額となっていたそうです。経費を削減したいのはわか
  るけれども、本気でコストダウンを計るなら、新刊配本時に各取次に納
  品する現物見本と新聞社等への宣伝用献本に、すべて「見本」とか「サ
  ンプル」という朱印を小口に押印したらよいのではないかと提案してお
  きました。いちど書協で提案してみようとおっしゃってましたがどうな
  るでしょう。
  大昔から中古レコード屋には見本盤のシールを貼った国内盤LPやCD
  があり、輸入CDには盤面中央にsampleと印字されたものもありました。
  本の場合も小口に見本というスタンプを押せば、古本屋はともかくとし
  て、新刊書店に流れたり版元に返品されてくるリスクは無くなるでしょ
  う。Amazonではごく初期の頃から、見本品やサンプル品の表示のあるも
  のをマーケットプレイスに出品することを禁じています。取次への見本
  は各10冊も必要な場合もあるようですが、これらの一部が書店に流れた
  り、返品されたりするだけで、出版社は二重に損をします。いままでは
  さほど気にはしていなかったか、力関係で文句が言いにくかったのでしょ
  う。二昔以上前のことですが、大阪に出たばかりの新刊がすぐに並ぶと
  いう評判の古書店があったそうです。これは近所の新聞社の書評担当者
  の小遣い稼ぎだという噂を聞いたことがありますが、後に潰れた地元の
  取次店による換金だった可能性もあったようです。
    
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ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜130号)」はHPにて公開中です。
     
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