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2002年7月 | |||
シュトックハウゼン全集 第3巻 電子音楽1952-1960 エチュード 習作T、習作U 少年の歌 コンタクテ |
カールハインツ・ シュトックハウゼン |
Stockhausen Verlag Stockhausen B (輸入盤) | |
思えば最初に現代音楽なるものを耳にしたのは、大学時代に受けた「音楽概論」という講義でのこと。ボリュームいっぱいに教室に響き渡る「少年の歌」は、とても刺激的であった。そんな思い出もあってのせいか、ある意味非常に思い入れの強い一枚がこれ。ヘッドフォンで聴いていると、不思議な感覚に襲われること請け合い。 |
マルクス・プレイズ・シュトックハウゼン アリエス (シリウスより) 友情を込めて 停止 (「光」の「木曜日」より) ピエタ (「光」の「火曜日」より) |
マルクス・シュトックハウゼン(tp) ニエク・デ・グルート(cb) アンネッテ・メリウェザー(S) |
EMI CLASSICS 7243 5 56645 2 58 (輸入盤) 録音:1993-97年 | |
マルクスは、カールハインツの息子であり、カールハインツの作品にもしばしば登場する非常に上手いトランペット吹き(専門はジャズ)。このCDは、マルクスが父親の70歳の誕生日に捧げたもので、トランペットが絡むカールハインツの作品を収めた好企画といえる。なかでも、「シリウス」からの抜粋であるアリエスは、「分かりやすい」名曲といえる。超絶技巧で電子音響とデュエットしてしまうマルクスのトランペットは、惚れ惚れするほどに素晴らしい。 |
シュトックハウゼン作品集 ツィクルス ピアノ曲X ピアノ曲\ コンタクテ(ピアノ、打楽器、電子音響のための) |
ジョニー・アクセルソン(perc) フレドリック・ウレン(p) |
CAPRICE CAP 21642 (輸入盤) 録音:2000年 | |
またまた、シュトックハウゼン。打楽器とピアノがメインにすえられたCD。「ピアノ、打楽器、電子音響のためのコンタクテ」では、ピアノと打楽器の音が電子音響によって覆い隠されてしまうような録音が普通なのだが(作曲者もそれを希望)、このCDは打楽器とピアノの音の方が大きく録られている。そんなわけで多少風変わりの演奏ともいえるが、録音が新しいだけに、耳を澄ませばきめ細やかな電子音響もよく聞こえてくる。2つのピアノ曲なんかは、残響の解け合う様が実に美しい。ぜひとも良いヘッドフォンで聴きましょう。 |
2002年8月 | |||
武満徹ピアノ作品全集1 リタニ 遮られない休息 ピアノ・ディスタンス フォー・アウェイ 閉じた眼 雨の樹 素描 閉じた眼U 雨の樹 素描U |
野平一郎(p) | ミュージック・スケイプ MSCD 0001(国内盤) 録音:1999年 | |
武満のピアノ曲なら、暗闇のなかにピアノの音だけがくっきりと立ち現れてくるような演奏(録音)で聴きたいと思っていたが、この野平による演奏は、そんな希望を十二分に叶えてくれるものだった。曇りのないシャープな音で奏でられた野平のCDを聴くと、今まで聴き馴染んできた他の奏者によるCDが、薄明のなかで演奏されたもののように感じられてしまう。 |
シューベルト 歌曲集「冬の旅」D911 ハンス・ツェンダーによる編曲版 |
クリストフ・プレガルディエン(T) シルヴァイン・カンブルラン指揮 クラングフォーラム・ウィーン |
KAIROS 0012002 KAI (輸入盤) 録音:1999年 | |
作曲家でもあるツェンダーが、「冬の旅」を「テノールと小オーケストラ」用に編曲したもの(普通はピアノ伴奏)。ときおり刺激的な音響が聞かれるものの(第1曲「おやすみ」のシュプレッヒシュティンメ的なところなど)、総じておとなしめの編曲といえようか。とはいえピアノ伴奏版よりも想像力をかき立ててくれることは確かなので、この編曲版を聴いた後ではピアノ伴奏による通常の演奏が退屈に思えてしまう。その意味ではやはり、さすがの編曲である。プレガルディエンもいい声だ。 |
エマール・アット・カーネギーホール ベルク:ピアノ・ソナタop.1 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番op.57 「熱情」 リスト:波の上を歩くパウラの聖フランソワ ドビュッシー:水の反映、金色の魚 リゲティ:開放伝、ワルシャワの秋、魔法使い の弟子 メシアン:「みどり児イエスにそそぐ20の眼差 し」より、第11曲 ドビュッシー:「エチュード第1集」より、第6曲 |
ピエール= ロラン・エマール(p) |
TELDEC CLASSICS 0927-43088-2(輸入盤) 録音:2001年 | |
京都でメシアンのコンサート・シリーズ(1998年)が催されたとき、エマールがメシアンのピアノ独奏曲を演奏するコンサートがあった(メシアン・マチネー。野平一郎も参加してた!)。ところが、仕事の都合でエマールの演奏には間に合わなかった。2000年夏のザルツブルクでも、旅程の都合でエマールのコンサートを聴けなかった。そんな、エマールのライブを聴き損ね続けた挙げ句に飛びついて買ったのが、このライブ録音。よく回る指、明瞭な音、すっきりした響き。いろんなCDがリリースされるようになったとはいえ、やはりライブで聴いてみたい。 |
2002年9月 | |||
リゲティ・プロジェクトU ロンターノ アトモスフェール アパリシオン サンフランシスコ・ポリフォニー ルーマニア協奏曲 |
ジョナサン・ノット指揮 ベルリンpo. |
TELDEC CLASSICS 8573-88261-2(輸入盤) 録音:2001年 | |
アトモスフェールが面白い。この曲の弦楽器は、第1ヴァイオリン14、第2ヴァイオリン14、ヴィオラ10、チェロ10、コントラバス8の計56本で(むろん管楽器等もある)、その1つ1つの弦楽器にそれぞれ楽譜1段が割り当てられている。つまり、弦楽器だけで56段(!)、1つ1つがほとんど別のことをやっているのである(これをミクロポリフォニーというらしい)。この録音では、その細かな違いがよく聴き取れて実に面白かった。ただし、もう少し金管を強く響かせて音色を整えた方がより美しく聞こえそうな部分もある。そう思えて仕方がないという人には、アバド&ウィーンpo.盤もお薦めしておこう。アバド盤はミクロポリフォニーを聴くには向かないが、金管の響きが輝きに満ちており実に美しい(2001年宇宙の旅のサイケな映像にはアバド盤が向いていると思う)。とはいえロット盤の虫が蠢くようなミクロポリフォニーを聴いてしまうと、アバド盤の方がもっともっと物足りなく思えてくるだろうから、アバド盤を経験した後にロット盤の金管を頭で補正しながら聴く、というのが最もお薦めの方法である。・・・難しい? |
2002年10月 | |||
ドイツの音楽1950-2000 実用音楽ボックス・セットより 「トマス・マンの映像への音楽」 ヴェルナー・アイスブレナー ブッデンフローク家の人々 ロルフ・ヴィルヘルム トニオ・クレーゲル オイゲン・トーマス ブッデンフローク家の人々 ユルゲン・クニーペア 魔の山 ロルフ・ヴィルヘルム ファウスト博士 他3曲 |
多数 | BMG CLASSICS 74321 73524 2 (輸入盤) 録音:1957-92年 | |
当HPの「読書の部屋」でトマス・マンの「ファウスト博士」を紹介したが、そのときレーベル・キューンがどのような曲を作ったのか是非とも聴いてみたい、と書いた。その後たまたま、この「ドイツの音楽」シリーズを購入したところ、そのなかに映画版「ファウスト博士」の音楽が収録されていることに気が付いた(このシリ−ズ、ドイツ語の解説しかないので困る)。小説を書く際にトマス・マンは、シェーンベルクによる12音技法の音楽を念頭においていたようである。ところが、ここに収録されている曲は、皆、ベルクっぽいところはあるけれど、どこかしらドイツ風ドビュッシーといった感じの曲ばかり。正直、「おや?」と思ったのであるが、小説にもどこかロマン派的な要素が見え隠れしているようにも思えるので、案外とこのような曲の方が本質を突いているのかも知れないな、と思うようになった。となると、マンによる小説の設定に無理がある、ということになるのだろうか? ロマン派的な小説に12音技法を持ち込む、という矛盾・・・? |
ヴィトルド・ルトスワフスキ作品集 ピアノとオーケストラのための協奏曲 ヴァイオリンとオーケストラのための パルティータ チェーン2 |
クリスティアン・ツィメルマン(p) アンネ=ゾフィー・ムター(vn) ヴィトルド・ルトスワフスキ指揮 BBC交響楽団 |
ドイツ・グラモフォン 471 588-2(輸入盤) 録音:1989年、88年 | |
絶対音楽然としているルトスワフスキの作品は、どの曲を取ってもそれぞれにしっかりした個性があるし、どの曲を聴いてもいかにも「職人の仕事」といった感じがして、好感がもてる。そう「現代音楽」しているわけでもなく、親しみやすい曲も案外と多い(個人的にはガチガチゲンダイオンガクも好き)。こういった作曲家はなかなかいないと思うのだけど、どうでしょう? ここに収録されているピアノ協奏曲(1988年初演)は、そんなルトスワフスキの特徴をよく現している曲である。とりわけこのCDでは、ツィメルマンのピアノが実に素晴らしい。澄んだ音、硬質の響き、切れのよい打鍵・・・などなど、嫌が応でも面白い曲だと思わせる演奏になっている。ピアノの絡む近現代の作品は、その打楽器的な奏法の切れ味が悪いとつまらない演奏になることが多いのだけど、そんな心配は、ツィメルマンには無縁のようだ。なお、このピアノ協奏曲の副題は、”クリスティアン・ツィメルマンのために”。 |
2002年11月 | |||
メシアン 峡谷から星達へ・・・ ソロ・ピアノ、ホルン、ザイロリンバ、グ ロッケン・シュピール、オーケストラの ための |
チョン・ミュンフン指揮 フランス国立放送so. ロジェ・ムラーロ(p) ジャン=ジャック・ジャスタフレ(hrn) |
ドイツ・グラモフォン 417 617-2(輸入盤) 録音:2001年 | |
メシアンのグランド・キャニオン旅行(1972年)の経験にもとづいて作曲された曲。1974年11月に初演されている。ただしもともとは、アメリカ建国200周年に合わせて委嘱された曲らしい。メシアンの管弦楽曲は、どれもこれも似たり寄ったりに聞こえてきて、なかなか聴き通すことのできないものが多い(スタイルが確立しているというか何というか・・・)。にもかかわらずCDを買ってしまうのは、ひとえにブレーズだとかミュンフンだとか、お気に入りの指揮者が録音してしまうからである。というわけで、曲についてはあまり期待せずに聴き始めたこのCD(全12楽章)、幸運にも二枚目に入るとがぜん面白くなってきて、楽しく聴き通すことができた。最終楽章は、ジョージ・クラム(アメリカの作曲家)の「夏の夜のための音楽(マクロコスモスV)」の第5楽章「星ずく夜の音楽」の雰囲気にとても似ていて、少々驚いてしまったが・・・。ちなみに、クラムの初演は1974年3月。どちらも打楽器とピアノが活躍する曲だから、似てくるのだろうねえ。 |
2003年1月 | |||
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ作品集 交響曲第7番 アリオーシ |
シルヴァイン・カンブルラン指揮 南西ドイツ放送so. クリスティアーネ・エルツェ(S) クリスティアン・オスターターク(vn) |
ヘンスラー・クラシック CD 93.047(輸入盤) 録音:2001年 | |
カンブルランは、1999年のシーズンから南西ドイツso.の常任指揮者になった人(ギーレンの後任です)。1976年にはブレーズに招かれて、アンサンブル・アンテルコンタンポランの客演指揮者になったりもしている、いわゆるその道の人。このCDは、そのカンブルランが振ったヘンツェを収めたもの。交響曲第7番(1984年初演)は、これまでラトル&バーミンガムso.盤でしか聴くことが出来なかった。が、このカンブルラン盤を聴いて初めて、この曲の良さを感じ取ることが出来たようだ。ヘンツェの曲は、張りつめた緊張感、神経質なまでの繊細さ、カタルシス的な力強さの3要素全てが備わっていないと良い演奏にならないように思えるが、このカンブルランの演奏は、それらの点について申し分のないものに仕上がっている。このことは、カップリングされたタッソーの詩による「アリオーシ」(1964年初演)にも当てはまる。ヴィブラートを抑えたエルツェの冷ややかな声が繊細なヴァイオリンと絡み合う妖しげな曲で、「若き恋人達へのエレジー」を思い起こさせる。 |
メシアン 世の終わりのための四重奏曲 | マリーヴォンヌ・ル・ディーズ(vn) アラン・ダミアン(cl) ピエール・シュトラウホ(vc) ピエール=ロラン・エマール(p) |
ACCORD 472 340-2(輸入盤) 録音:1986年 | |
このメシアンの唯一の室内楽曲、実はエマールのピアノで聴きたいとずっと思っていた。ところが、CDはずっと廃盤で、その願いは叶わずじまい。それがようやく再発されたのである! 全曲の中でもとりわけ聴きたかった部分は、ヴァイオリンとピアノのデュエットである第8曲の、そのラスト1分半ほどのピアノの響き。5曲目(チェロとピアノのデュエット)でもそうなのだが、ここでのピアノはひたすら和音を繰り返すだけ。その和音をどのような音色と強弱でエマールが弾いてくれるのか、それが聴きたかったのである。そのエマール、期待していたとおり、時にはくぐもらせながら、時には輝かせながら弾き進め、ラストはとびきりのピアニッシモ、とびきりの艶やかな音色で弾き切ってくれた。この曲の演奏で大切なことは、多彩な音色を用いながら深い陰影を描き出すことではないかと思うが、エマールの演奏は、その点で実に素晴らしいものといえる。とはいえピアノの音しか耳に入らなくなるのは、悪い癖か。 |