Case File 19 帰路
10月7日、私の心とは裏腹に、絶好のツーリング日和である。
14年間愛用している「KUSHITANI」の冬物ジャケットの下は、うっすらと汗ばむほどなのだが、山道にはいると、やはり寒い。
R241沿いの某レストランで、やや遅めの昼食。
表を見れば、未だに居残っているライダー達が、傍目も振らずに走っている。
日没が早いのコーヒーブレイクどころではないのだろう。
私も夕方に足寄町へ入り、「大阪屋食堂」に宿を取る。
宿泊客は、私の他にもう一人だけ。
客足が落ちたので、今年のライダーハウスとしての営業を、そろそろ終えようとしていたと、御主人が話していた。
私のお目当ての「エゾ鹿定食」が品切れだったので、今夜は「ジンギスカン定食」にする。
翌日、「仮面ライダークウガ」を見た後発進、「道の駅足寄湖」からエゾ鹿肉のパックを発送し、富良野の「宝来」に移動する。
その道すがら、小雨と侮りレインコートを着なかったのが悪かったのか、少し風邪気味になったので、連泊して養生する。
10月10日、札幌入り。
実家に土産を発送し、市内の旅人宿「NADA」に投宿。
外国からの客も多い宿である。
私と同室になったのは、アメリカ人とシンガポール人だった。
「旅人宿」とは、旅行者として北海道にやってきた人が、ついつい移住してそのまま宿泊業を開業した、というパターンの宿が多く、経営者のカラーやこだわりが魅力となっている
。私は札幌で泊まったら、必ずドンチャン騒ぎをしていたが、この日は初めて静かな夜を過ごした。
ワイン片手に読書にふける等、かつて無かったことである。
10月11日、「おじゃる丸」を見終わってから発進、小樽へ向かう。
天気がいいので、積丹半島へ足をのばそうかと思ったが、小樽駅前で空はドンヨリと暗くなる。
こんな空模様の時に景勝地に行っても仕方ないと思い、市内をうろうろして時間をつぶし、最後の宿「小樽グランドホテルクラシック」にチェックインする。
ここは、市内の歴史的建築物にも指定されており、一度泊まってみたかったところである。
荷物を降ろすなり雨が降り始めたが、ホテルの御厚意により、「VULLGAIYAR」をホールへ移動させてもらうことができ、雨ざらしにせずに済んだ。
夕食はホテルの向かいのレストランで食べたがこれは失敗。
なお、寝酒は余市ワインの"Zweigeltrebe-Blush"である。
さて、小樽市では、アメリカの原子力空母キティホークの入港を10月13日に控えており、賛成・反対それぞれの立場から様々な意見が上がり、板挟みになった小樽市長は、出張と称して東京へ逃げ出す有様である。
沖縄のアメリカ海兵隊員による少女暴行事件をきっかけに、「沖縄の痛みを分かち合おう」等と、今さらながらの声があがり、昨年は別海町で海兵隊の実弾演習が実施されている。
また、小樽市は3年前にも米軍空母インディペンデンスが入港し、大勢の見物人が訪れ、少なからぬ金を落としていったことがある。
今回もマスコミをにぎわしていたのは、感情的とさえ言える反戦論と、見物人や米軍兵士の買い物を当て込む地元商店街役員のそろばん勘定である。
評論家の受け売りのようで恐縮だが、日本も独立国たらんと欲するならば、どこの国にも頼らず、独自の防衛体制を持つことは必要であろう。
「日米安保反対」と叫ぶのは簡単だが、仮に日米安保条約が撤廃されたとして、その後日本をどうやって守るのか?
聞こえて来るのは、「非武装中立」だの「話し合い」だのと、甘美な響きの言葉だけである。
人間は神様ではない。
何をするにも、「力」の裏付けを必要とする存在なのだ。
クリントンとて、米軍の戦力無くして、中東和平の仲介などするものか。
私は決して、「安保無き日本」に、過剰な幻想を抱かない。
世界に冠たる平和ボケ民族の日本人にとって、「平和を守るためのリスク」は、考えることさえ避けて通りたいテーマ、パンドラの箱である。
さて、10月13日、船は定刻より30分早く舞鶴へ入港した。
例年なら、多少の肌寒さを感じるはずなのに、今年は異常に蒸し暑い。
地球は確実に狂っているのだろうか?
シャケバイはいつまでできるのだろうか?
私も来年は37歳。
いつの間にかいい年齢になった。
帰る道すがら、一つの決断が固まりつつあった。
総括その2
今次ギガ計画は、「原点回帰」がテーマだった。
そこで、私の趣味でポイントを選び、アルバム3冊分の写真を撮影したのだが、どうもカタログ写真のような物ばかりになった。
「生々しさ」が足りないのだ。
- 私の決断
- その1.往路は青森まで陸走する。
- その2.「ねぶた祭り」は皆勤を目指す。(少なくとも2日は出る)
- その3.「北海道の離島」に上陸する。
- その4.「出稼ぎ」はしない。
- その5.次回「ギガ計画」を持って、最終計画とする。
第十二次ギガ計画発動まで、残すところ8ヶ月。
「ザジレス・ゾ、ザギバス・ゲゲル!!」((C)仮面ライダークウガ)
The Data Of Project Giga millennium
実施期間:西暦2000年7月23日〜10月13日
全走行距離:4615q