<< 特別寄稿:北海道名物シャケバイに
ヤラセロウ大元帥が出会った >>

NTRC特撮軍団長・ヤラセロウ大元帥
こと 吉川敏彦

 北海道標津郡標津町。根室海峡をへだててほんの数Kmのところに国後島を望む漁業の町である。

 私がこの地に足を踏み入れたのは、去る8月31日のことである。会社を退職し、ローンの支払いを踏み倒してはみたものの、これ以上の不義理はなるまいと、バイト先を探すことにしたのである。ただ、多くの水産加工業者は、かなり早い時期からアルバイターを確保しており、私の場合、ギリギリセーフで今のバイト先にありつけた。

 「マ印神内商店株式会社」ここで私は1ヶ月間、シャケと格闘することになったのである。簡単な手続きの後、すぐ寮へ案内され寮母さんと対面。この日は、1日身の回りの用意に当てる。翌日からは、朝6時起き(間もなく5時半)の日々となるのである。

 現場で最初に当てがわれた仕事は、ホタテ貝の貝柱と卵巣の取り外しだった。貝の中身はヌルヌルとしており、以外にすべる。このホタテの仕事はほんの数日で終了。後はシャケ・シャケ・シャケの毎日である。

 まず、シャケを満載した巨大なタンクを載せたフォークリフトが、タンクの中身を「お立ち台」と呼ばれるステンレス製のステージの上にぶちまける。ステージの上には、数名のバイターが待ちかまえており、シャケの大群を均等に拡げていく。それをパートのおばちゃん連中が開腹し、筋子を取り出し、粒をほぐしてイクラに加工するわけだ。

 このおばちゃん連中、実に口が悪い。しかし、腹に一物を持っているわけではない。実に気さくな人々である。

 腹を切り裂かれたシャケは、ベルトコンベアで隣のフロアーに送られ、新巻き鮭・箱詰め・二枚おろし等にされる。その過程で、工場内は、水と氷と血しぶきが満ちあふれる。機械にかけられ切り落とされたシャケの頭が、あっという間に山をなす。小心者のSディレクターが見たら、恐らくブッ倒れることだろう。

 血で染まり、海水を浴び、塩をかきまわし、シャケをかつぐ・・・。おかげで私は、筋肉痛とハダ荒れに悩まされている。

 そして、たまの土曜日ともなれば、お定まりのドンチャン騒ぎである。他人にたかったり、たかられたりして、週に一度の夜更かしをする。日曜日は、天気が良ければ思い思いのルートでツーリングをし、夜は皆で向かいの温泉に行くこともある。

 とまあ、こんな調子で、日々バイトに精を出している今日このごろの私である。まだ日数が少ないため、そんなにたいした報告ができないが、何かの参考にしていただければ幸いである。




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